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日本アクションラーニング協会情報

年次カンファレンス2017 基調講演

脳科学が提示する アクションラーニングの可能性

マイケル・J・マーコード教授

今年のプログラムでは、はじめに基調講演として、国際アクションラーニング機構(WIAL)代表のマイケル J マー コード教授が登壇し、脳神経科学とア クションラーニング(AL)との関係について講演しました。
近年、ビジネスの世界において、『脳神経科学』への関心が高まっています。
その背景としては、医学や科学技術の 進歩により、脳の仕組みや脳を鍛える 方法が分かってきたこと、脳神経科学を活かした人材開発によって、成果を上げる企業が現れたことなどが挙げられます。
脳神経科学とは、脳と神経系の科学であり、生物学や生化学、心理 学および医学の領域に関わる分野で、神経回路がどのように形成され、それらがどのように反射、多感覚統合、協 調運動、感情反応、記憶、学習といった機能を形作っているかを研究しています。
脳の進化は、生命維持の機能を果たす「爬虫類脳/脳幹」、本能的 には感情や情動を支配する「大脳辺縁系」、人類特有であり、先を見据えての 計画的行動や感情を抑制することを可能にした「大脳新皮質」と発達してきました。
「大脳新皮質」を構成する一部分である前頭葉は、思考や運動、創造を司っており、意欲を高める、実行力、 集中する、意思決定をするなどの働きがありますが、働きが弱くなると、我慢できなくなる、集中力が落ちる、コミュ ニケーションが取れなくなるなどの弊害が出てきます。
今日、社会は複雑化しています。それに伴って私たちの脳は、 身体的な脅威や痛みと同様に社会的な脅威に対しても、防御反応システムを 活性化させるようになっています。
脅威への反応がアクティブになると、新皮質 よりも辺縁系が優位になり、前頭葉の 前側の領域である前頭前野皮質は最適な働きが出来なくなります。
その結果、 記憶や創造性、学習、問題解決力が損なわれ、効率性や生産性は低下してしまいます。
では、脳が感じる脅威を最小化するにはどうすればよいでしょうか。
その答えとして提唱されているのが、SCARF モデルです。SCARFモデルとは、脳が 認識する潜在的な脅威や機会の5つの要素、すなわち「Status(ステータス)」「Centainty(確実性)」「Autonomy (自律性)」「Relatedness(関係性)」 「Fairness(平等性)」をまとめたもので、これらの要素が損なわれないようにコミュニケーションを行なうことが重要とされています。

ALは、全メンバーに問題解決のための平等な機会を与える、誰もが誰にでも質問出来るという「階級 のフラット化」、問題提示者とグループ メンバー、コーチの役割が明確である、 セッション間のアクションが明確であることによる「曖昧さの減少」、問題をチームで共有し解決策を実施する、質問によって問題の根本を特定し解決法を策定するという「自律的な解決策の思案」、 互いの質問を通じ、互いを尊重し評価する感覚を育む「質問による関係性の構築」、階級や専門知識、経験に関係なく全メンバーに規範を適用する、全 ての人が等しく質問に答える機会を持つことによる「平等性の支援」によって SCARFモデルが提唱する5つの要素 を満たすことが出来ます。
また、SCARFが満たされることで、 報酬系の働きが活性化されます。
報酬系は、ヒトや動物の脳において、欲求が満たされた、あるいは満たされることが分かったときに活性化し,その個体に快の感覚を与える神経系のことで、学習や環境への適応において重要 な役割を果たしています。
報酬系を活性化させるものとして有効なものに5 P’s、すなわち「Protection(保護)」 「Participation(関与)」「Prediction (予見)」「Purpose(目的)」「Pleasure (喜び)」があります。
ALは、誰もが 支援的で生産的な学習環境の中で平等に扱われる、コーチがグループの全員を守る責任を負い、必要に応じて介 入することで感じる、安全と安心=保護、誰もが貢献・参加し、行動にコ ミットメントすること、互いに質問し回 答し合うことが推奨されるという、メン バーの一員として参加、歓迎される必 要=「関与」、スクリプトによる役割と 期待の明確化、グループが学び成功することを可能にすることによる、予測とそれに伴う生存可能性の向上=「予見」、問題解決に自身が必要とされること、自身の考えや質問、行動が問題 解決に貢献することで感じられる自身 の意味と尊重されているという感覚= 「目的」、問題を解決し、成功へ導く計画案を達成すること、自身に価値があると感じられる質問を受けることで感じる楽しさ=「喜び」によって、報酬系 を刺激し、その結果、学習や問題解 決能力を促進させることも可能にしているのです。
リーダーシップ開発として長年親しまれてきたALですが、脳神経外科の原則を理解し、適用することで、更なる パワーも持つ可能性を感じられる講演内容に、参加者は興味深く聞き入っていました。

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