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日本アクションラーニング協会情報

年次カンファレンス2015年 気付きを生み出す対話の技法

学習する組織を実現する際に重要となるのが「対話(ダイアログ)」です。
北欧のフィンランドは、この「対話」が 公教育にも取り入れられている、いわば 対話の先進国。ここで外交官を務めた経験を持ち、現在はグローバルスタンダー ドの言語教育に携わっている北川達夫 氏を講師に招いて、対話の定義や昨今の国際コミュニケーションの変化、また「わかりあえない相手」との問題を解決するための対話技法について学びました。
まず、対話とは一体何か?という問いに対して北川氏は、「相手と『わかりあえない』ことを前提として考えるコミュニケーション」だと定義します。
「わかりあえない」を前提にするというのは、つまりクリティカルに考えることで、それはコミュニケーションの成立そのものを疑うことを意味します。そして対話には、ほんとうに自分の話を聞いて理解していると思われる相手を選別して対話を試みる「選別的対話論」と、自分が相手の話を聞いたうえで歩み寄って対話を試みる「主体的対話論」の2種類があるとしました。
ここで具体例として「わかりあえる」ことを前提とした会話が紹介されました。母と息子が晩ごはんの献立をめぐって 短い言葉を交わしますが、北川氏は、 言葉の長さはコンテクストではなく人間 関係で決まると言い、それが親密になるほど短くなるとします。こうした会話の中には、第三者が見てわかる「一般的共有」と、本人にしかわからない「個別的共有」 があり、これを識別することが大切とのこと。
対話 では、「この識別によって “ 疎外される聴衆 ” は誰かを意識する ようにして下さい」と北川氏は話します。 次に、話題は対話の技法へと移りました。対話を行う際には、あらゆる発想 にはそれなりの理由と正しさがあること を念頭に置く「文化相対主義的発想」 が重要だと北川氏。世の中には色々な 考え方があるため、お互いに聴(訊)き合うことや、自他の文化の違いを知ることの価値を強調します。
「組織における文化には、たとえば権力格差を重視するかどうか、集団主義か個人主義か、不確実性を回避したがるかどうかという、3つの傾向があります。こういった傾向の強弱 は国によって異なり、そのまま問題解決 方法の違いにもなっているのです」と 北川氏。グローバル化によりこうした文化 特定型の理解は意味が無くなりつつあるそうですが、自分や相手の言動が絶対に正しい、あるいは間違っていると感じた時に、その発想の背景にある文化 に目を向けることは対話のカギになると話しました。
北川氏は、こうした自他の異質性を活用することで逆に問題解決を図るという「 協働的 問題解決」について、最後に紹介しました。
異質な複数案から1つを採用する選 択 的問題解決が難しい時には、全く別の案を生み出す協働的問 題解決の思考力が求められます。これは OECD が求めている能力で、教育の世界でも話題になっています。その 例として北川氏は、自身がフィンランドから 帰国する時に飼い猫の処遇をめぐって現地の同僚と話し合った経験を紹介しました。全体のまとめでは、北川氏は対話を 行う際の「姿 勢の重 要性 」について 言 及し、「相手がどんなことを行って きても、文化相対主義的発想や主張の背景などを探求する姿勢が重要。 ただし、どうしても許せない違いは保留することも必要です」と話して講演を終えました。問 題 解 決 方 法について 考えるワークなどを交えながら行われた講座は、北川氏の流れるようなトー クの面白さもあいまって、時間があっと いう間に過ぎていきました。参加者も、今後ますます社会で求められる対話力の強化について、多くのことを学んだようでした。