問題解決とチーム学習の組織開発手法であるアクションラーニングを活用した、経営幹部養成や管理職研修プログラムを提供しています。

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【レポート】教師のための「アクションラーニングの魅力に触れる体験会」

「問題解決とチーム育成を同時に行う」というコンセプトを持つアクションラーニングは、体験学習を促進するプロセスを体系的に学ぶことであり、課題解決と学習のバランスを取る関わり方を学ぶことでもあります。
昨今、学校教育の現場で探究学習の重要性が叫ばれていますが、アクションラーニングは、新学習指導要領で謳われている「主体的、対話的で深い学び」の実践手法の1つであり、探究学習に必要なエッセンスが入っているとも言えます。

現在、アクションラーニングを学んだ教員の方々によって、「チーム学校」の具体的な手立てとして、また若年層研修や指導力向上などでの活用が広がりつつあります。アクションラーニングの教育現場でのさらなる拡大と可能性を追い求めて、2022年2月6日に「教育×AL 教師のための質問会議体験会 第2弾」が実施されました。

今回はイベント内で赤塚直子さんに発表いただいた、教育現場でのアクションラーニング実践事例をご紹介します。

※その他の教育現場での活用事例については、こちらをご覧ください。
https://www.jial.or.jp/education/

赤塚 直子(あかつか なおこ)

千葉県の小学校教諭。現在は教頭として勤務。
県教育委員会指導主事、市教育委員会指導主事も歴任。
千葉県長期研修生として、東京学芸大学で国語科指導を研究。

アクションラーニングとの出会い

赤塚: みなさん、おはようございます。本日はお集まりいただきありがとうございます。私自身、教育はとても大事なものだと日々感じており、何か自分にできることはないかなと思い、ここまできました。

早稲田大学の日向野幹也教授が開講された、「21世紀型リーダーシップ開発」という講座を受講したのがきっかけで、アクションラーニングに出会いました。そこで提唱されていた「権限なきリーダーシップ」に共感し、これを教員の世界に入れていけば、学校教育が、そして子どもたちや先生方が、もっと豊かに生きられるのではないかと思いました。

新学習指導要領のもと、子どもたちには主体的、対話的で深い学びをして欲しいのですが、教員自身に学びや気づきがないと、子どもたちを育てることができないのではないかと思っています。
また、学校の組織改革を推進する必要があると言われていますが、現場では継続的に取り組む意識が薄れています。いつでも、どこでも、誰でも学校の組織改革活動に取り組めるような状態にしておくことが、今後必要になってきていて、そのことから教員自身が学び方を学ぶ必要があると感じています。

赤塚さん実施の体験会の概要

赤塚: 教員を対象に、5日間のアクションラーニングの魅力に触れる体験会を開きました。体験会には、異なる学校から初任者、5年目、学年主任、教務主任、教頭で、役割も年齢も経験も様々な人たちが集まりました。

プログラムの構成は、次の画像のようになっています。

実は5回目を終えてから今日のイベントを迎えたかったのですが、体調不良やその他事情でみなさんが集まることができず、結果的に3・4回目は2回ずつ行ったため、当初の予定よりずれ込んでいます。

体験会を実施するにあたり、様々な工夫をしました。お忙しい先生方の負担にならないように日時を調整したり、参加者間のラポール形成を積極的に促したりしました。また1回目のオリエンテーションで「5回目が終了した後の私は?」というゴール設定をし、毎回そのゴールを念頭においていただきながら進めています。

今回の体験会は、アクションラーニングを実際の現場で使えるようになることを目的としていません。アクションラーニングを通して、先生方が今まで無意識でやっていたことを意識化していただいたり、それによって自信をつけていただく、また色んな立場の方々との交流を通して多様な視点を獲得していただくことをゴールに置いています。
何よりこの会に参加いただくことで、先生方が元気になる、笑顔になるだろうと思ったので、「この会に参加すると元気になりますよ!」と、知り合いにお声がけしていきました。

画像は、体験会の様子です。年齢も役職も職場も違う仲間が集まって、新たな考え方や視点に触れる機会になりました。自らその視点に気づき、学び成長している先生方の姿を見ることができました。

参加者に伝えた「質問の大切さ」と、体験会の効果

赤塚: 参加いただいた皆さんには、まず「質問の大切さ」についてお話ししました。

質問することは、「相手に興味がある」というメッセージであり、「話を聞いている」というメッセージでもあります。

掘り下げる質問は、より良い人間関係の土台になります。力を与える質問は、勇気づけのメッセージです。

あなたのことが好きですよとダイレクトに伝えなくても、質問をすることでラポールを形成でき、話を聞くと相手の考え方を理解でき、それがより良い人間関係につながります。そしてそれが、学校組織の中で円滑にまわせる秘訣になる、というお話をしました。

各回の実施後は、アンケートも取りました。結果を一部ご紹介しますと、参加者7名中、7名とも「考えるようになった」の項目にチェックをつけてくれました。無意識で行っていることを意識化することが、成長促進に繋がったのかなと思います。
また「元気が出た」「楽しくなった」という回答もいただき、主催者としては安心しました。

同時に記述式アンケートも取りました。「チーム内で質問を繰り返すことでチームワークが高まっていると感じた」との声や、ある教頭からは「相手に自然に話してもらえるような質問をすることで、相手とのラポールが築けると学んだ」とコメントもいただきました。

実際に回を重ねるごとに、参加者のみなさんの気づきが増えていったと感じます。セッション中やアンケートで使われている言葉にも変化が見られました。

アンケート以外でも、アクションラーニングの教員への有効性を強く感じています。自校の1年目と5年目の教員も体験会に参加いただいてから、少しずつ変化が見られるようになりました。例えば、週に1回出している学級だよりの内容が2人とも変わってきています。子どもたちに問いかけたり、保護者への寄り添いの表現があったり、視点の変化が見られました。今後の可能性を大いに感じています。

実際の参加者の声

赤塚: 本日、その体験会に参加していただいた数名の教員の方にお越しいただきました。まずは金子さん。体験会に参加してみた感想や気づきをシェアしていただけますか?

金子: 金子と申します。全ての回には参加できませんでしたが、赤塚さん主催の質問会議に、何度か参加させていただいています。
もともと緊張しがちな性格で、参加前はとても緊張していましたが、1回目から話しやすい雰囲気で、すぐに緊張がほぐれたのを覚えています。
アクションラーニングのセッションでメンバーとして質問をするとき、内容を考えるのに時間がかかってしまったところは反省点ですが、赤塚さんからは「あまり考えずに質問をしていくと、徐々に研ぎ澄まされていくよ」とアドバイスをいただきました。これからはトライアンドエラーで、どんどん研ぎ澄まされていく感覚を体験したいと思います。
加えて、問題提示者を体験できたことも、良かった点の1つです。問題を否定されることなく聞いていただけることで癒されましたし、自分に関心を持ってもらっていると伝わってきて、暖かい気持ちになりました。さらに視点も広がり、良い経験になりました。

赤塚: 金子さんありがとうございました。参加者の小松さんにもお話を聞いてみましょう。

小松: 小松と申します。現在、教務主任をしています。
最初は、アクションラーニングがどういうものなのかが分からず、少し不安を感じていました。体験会の中で、同じ教務主任の方の悩みに取り組んだセッションがあり、すごく深いところまで考えたり、気付きを得たことが大きな収穫でした。普段は1人で仕事をすることが多く、他の方の悩みや考えを聞く機会が少ないのですが、この体験会に参加して色んな気づきを得ることができ、アクションラーニングが有効であると実感できました。ありがとうございました。

赤塚: もう一人、お話を伺いたいと思います。浅井さん、よろしくお願いします。

浅井: 参加者自身が自分で考えるようになったと実感しています。若手の先生に相談されたとき、それまではアドバイスをすることが多かったんです。ですが、アクションラーニングの体験会に参加してから、気づかせる質問をするようになりました。そうすると若い先生も、こうすればいいんだなって言葉を発するようになってきました。質問の仕方次第で、自分で解決することに導けるんだなと気づきました。

赤塚: お話いただいた皆さん、体験会で色んな気づきや学びを得られたとのことで嬉しいです。ありがとうございました。体験会の5回目は、参加者をコーチにしてセッションを行う予定です。プレーヤーから一段階視点が変わるので、さらなる学びや気づきを得ていただけると思います。

実施後の学びと今後の課題

赤塚: また体験会を開催して、私自身も様々な学びがありました。
まず、セッションの最初に提示するグループ規範に、「平等と尊重を大切にする」という項目を盛り込みました。この「平等と尊重」について、色々と考えることがありました。
教員の世界は、年齢や経験年数、役職や性別にとらわれることが多く、セッション中も「すみません、少しおこがましいのですが」「申し訳ありませんが」という枕詞が多用されていました。また振り返りの場面では、「私はあなたのことが嫌いではないけれど、あなたのやっていることに対して伝えたいことがあります」と言いづらく、批判的な振り返りを避ける傾向がありました。平等と尊重とはどんなものか、私たち教員も考え直す必要があると思います。

2つ目の学びは、仲間を広げることが難しいということです。体験会の開催にあたり、多くの教員仲間に声をかけました。その中で、私と1対1で話すとすごく盛り上がり、体験会に興味を持っていただけるものの、体験会に参加する時間を確保できないという方も多かったんです。参加したい気持ちはあるけれど学びの時間の優先順位が低く、参加に至らないケースも多く、仲間を広げる難しさを痛感しました。
教員の自主的な「アンラーニング」の視点をどう育てていくかが、課題だと感じました。

今後、教育の現場を変えていくためには、仲間を増やすことが重要だと思っています。ですので、ぜひFacebookでお友達申請をいただいて、縦横の繋がりを作りながらできることを一緒に探していきたいなと思いますし、こちらの日本アクションラーニング協会の教育×ALのグループにも入っていただきたいと思います。先生方のポテンシャルは実はすごいんです。ぜひこれからも一緒に学んでいけたらと思います。本日は貴重な時間をいただき、ありがとうございました。

赤塚さんとのQ&A

Q. 参加者に負担にならないような工夫をされたとおっしゃっていましたが、それについて具体的に教えていただけますか?

赤塚: 1つは体験会の1,2回目に、アクションラーニングのセッションをやらないことです。初回から質問会議をやると、初めてのことに抵抗を感じる方も多いと思ったので、小さなステップを踏みました。
初回は20分程度のオリエンテーションを実施するとアナウンスし、20分だとハードルが低かったのか、みなさんに参加いただけました。そこで「質問って面白い」「次回も参加してみようかな」と思えるきっかけだけ作り、すぐに2回目を設定しました。2回目もセッションではなく、質問ワークを実施したんです。オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを混ぜながら質問をしあうワークを行い、参加者に「質問って楽しい」と感じていただいて、次はいよいよ90分コースです、といった感じで、小さなステップを踏むことで、みなさんを巻き込みました。

Q. 参加者同士のラポール形成で、何か工夫されたことはありますか?体験会以外の場で集まるなど、何かあったのでしょうか?

赤塚: ご時世的に対面で会うことは難しかったので、体験会の中で徐々に関係性を作れるような工夫をしました。まずは早めに、横のラポールを作りたいと思ったので、2回目のアイスブレイクでホワイトミラーをやったんです。ホワイトミラーは、お会いしたことがない方とペアを作り、お互いに自己紹介だけして、声や雰囲気から「あなたはこういう人に見えます」と伝えるワークです。自分の知らない自分を知ることに有効で、ラポールを築きやすいんです。
そこで知らない人たちと話しても楽しいんだという経験をしていただいてから、いよいよ3回目でアクションラーニングセッションを実施しました。その時点では、お互いに仲間だという意識が芽生えてきていたので、スムーズに進行できたと思います。横の安心安全をどう担保するのかというのは重要ですし、それを大事にして場をつくりました。

Q. 質問会議を通して、実際の教室で活かせるアイディアは何か出ましたか?

赤塚: アンケートの中では、教師の意見を伝えるのではなく、子どもたちに問いかけられるようになったと答えられた方もいました。小松さんも実践されたんですよね?

小松: はい。私は家庭科の授業を持っていますが、授業に集中できなかったり、ちょっとしたことで機嫌が悪くなってしまう子もいて、頭ごなしに言っても全然効果がないんです。でもアクションラーニングをやってみてから、私の意見を言うのではなくて、とにかく子どもたちに問いかけたり、考えさせるようにしてみたんです。すると児童の反応にも変化があり、効果を感じられた場面がありました。

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