「アクションラーニング Critical Reflection School」
「アクションラーニング(AL)の源流」 シリーズの第 3 回が開催され、デロイト・トーマツ合同会社でリーダー育成 やグローバル人材育成、企業内大学 の構築に関わっている小林美恵子氏が登壇。AL の4つのスクールの中から、 Critical Reflection School(CRS) の概要を紹介しました。
アメリカ・コロンビア大学の教育大学院 (Teachers College)成 人博士 課 程 において AL を体験したという小林氏。 Victoria Marsickという組織学習を専門とした教授から基 本的な考え方を学びました。
それは、大人は今までの 経験、教育、価値観、文化、生活などで、 物事に対する判断の基準になる「Frame of Reference」が形成され、それに 基づき行動するということです。物事を見る「自分のレンズ」といってもいいかもしれませんが、経験などは人それぞれ異なるため、自分のレンズで他人には見えても自分では見えないものもあるのです。
行動が変わるには、判断基準およびその判断の前提に対して疑問視する (Critical Reflection) 必要があります。 自分はこうだと思っていたものが他人はそうではないという気付きと物事の見方を変えることを促すのが、AL の 4つの学派 のうちの CRS だと小林氏は話しました。
CRS の AL のプロセスで、小林氏は 2つの方法を実践しました。一つは質問のみによるもので、数名のチームを組んで、問題提示者がチームに課題を説明し、それに対してチームメンバーが思いつく質問を紙に書きだし、それを順番に問題提示者に共有します。問題提示者 は質問には回答せず、チームからの質問 が出つくすまでこれを繰り返します。「問題提示者は出てきた質問に対して自分の中で回答しながら、自分が考えていた 問題とその前提について再度見つめなお し、課題の根本を探り、次のアクション をチームに共有します」と小林氏。
もう 一つの方法は、通常、質問の方法の後でやりますが、問題提示者が、再定義 された課題をチームに共有し、チームメ ンバーのみで問題提示者の問題の前提 について議論します。問題提示者は議 論の内容を離れたところで聞き、自分の 問題の前提を再度検証した後、次のア クションをチームに伝えるというものです。「コーチは各個人がアクションを実践 している途中で介入し、セッション自体 はチームのみで進めるというモデルを大 学院では体験しました」とのことでした。 実際の CRS のALを体験するセッショ ンでは、6 〜 7 名ずつ 3つのチームに 分かれ、各チームで一人が問題提示者 になり、メンバーが質問を次々に読み上げていきました。対話形式のマーコード モデルでは質問に回答しますが、CRS で は質問だけが続けられました。
最初は 慣れない様子でしたが、3 名の問題提 示者は問題を再定義し、チームを変えて 次の方法に進みました。ここでは提示者 が再定義した問題をメンバーに共有した 後、席を外れ、メンバーだけでその問題 について話し合いました。「そもそもなぜ ××しないんでしょうかね。何かこだわり があるような気がしますが」など、忌憚 なく話している様子を問題提示者が苦笑しながら後ろでメモを取っていました。
問題提示者の 3 名とも、問題の前提が 覆され、問題に対する見方が変わり、 気づきがあったと話していました。 新鮮な体験となったCRSのALを終えて、参加者からはさまざまな感想が出ました。マーコードモデルと比較したものでは、CRS のほうが、問題提示者が曖昧にしていることをあぶり出しやすいと思った」「考えが柔軟でない人に対して、 マーコードモデルなら不同意があるが、 CRS はそれがないため、人によっては時 間がかかりそうだ」などの声が上がりました。「2つめの方法では、コントロール役のAL コーチ役がいないと大変」「CRS のほうが人間力が問われるような気がする」など、参加者それぞれにとって新鮮 な体験につながったようです。
小林氏は、 「参加者の方々は、AL を経験しているの で質問が鋭くスムーズに進んでいました。 マーコードモデルはチームメンバーとの対 話やフィードバックに基づき、次の行動 が決定されるため、チームで個人の行動 をサポートするものですが、CRS はメンバーとの対話はなく、あくまでも個人が メンバーからの質問に基づき解決に導く であろう行動を決定します。CRS は個人 が主体となる点では、欧米向きかもしれません」と話して締めくくりました。