年次カンファレンス2016 基調講演
U 理論に見るアクションラーニングの可能性~オーセンティックワークス株式会社中土井 僚~
2016 年度年 次カンファレンスは、オーセンティックワークス株式会社 中土井僚氏と日本アクションラーニング協会代表の清宮よる U 理論 ×アクションラーニング対談からスタートしました。問題の解決策を立案・実施していく過程で生じる実際の行動とそのリフレクションを通じ、個人・組織の学習する力を養成するチーム学習法であるアクションラーニング(AL)と、イノベーションを実現するプロセスを、原理として明示している理論である U 理論。
組織変革の手法という共通項はあるものの、一見異なるように見えるこの二つの流儀にはいったいどのような関係性があるのでしょうか。
U 理論とは「イノベーションを実現するプロセスを、原理として明示している理論」で、過去の延長線上にないものを生み出すことを指す「イノベーション」を、個人だけでなく、組織や社会でも使える新しい解決策を生み出すためのプロセスを言語化したものです。
U 理論の解説ではよく4 つのレベルと 7 つのステップが並べて描かれた図が用いられます。
この図は今この瞬間の「意識の状態」と、時系列で新しいものが生まれてくる「プロセス」という 2 つの視点を1つのモデル図で表したものです。
4つのレベルは意識状態を示しており、①過去の枠組みから反応的に物事を処理する「ダウンローディング」、②先入観を排除し、客観的に状況を捉えようとする「シーイング」、③相手の気持ちを理解しその視点から物事を感じ取る「センシング」、④インスピレーションが湧き、未来を共創造する「プレゼンシング」からなります。
通常、会議や議論の場などでは詰問や尋問が続くレベル 1 の段階や、意見の応酬が繰り返されるレベル 2 の段階に留まってしまいがちなのですが、ALではレベル 1 からレベル 4 までの変容がスムーズに行われていると言うのです。
具体的に言うと、AL では提示者が抱える問題の本質を提示者が再定義し、それに対して参加者が合意できるか問う場面があります。
ここで合意に至らない時、提示者はなぜ合意に至らなかったのかを内省するのですが、それによって提示者は自分の持つ枠組みを意識し、問題解決のためにそれを外すことを試みます。そしてそれに成功すると、一気に問題が解決される、チームに一体感が生まれる、意識変容・行動変容が起こるといった効果が現れます。
この事象は、U 理論の意識変容のプロセス、つまり、内省し自分の枠組みを転換することでレベル 2 からレベル 3 へ、意識した枠組みを手放すことでレベル 3 からレベル4 へ移行したのちイノベーションが生まれるという流れに一致します。
つまり、AL によって起こるチーム学習の流れが、U 理論のイノベーションを実現するプロセスによって説明出来るのです。
さらに中土井氏は内省力と質問力の重要性にも触れ、「内省力、そして質問力がない限り組織力は上がらない」とした上で、「内省力がないということは自分自身の振り返りが出来ていないということであり、同じ失敗を無自覚に繰り返してしまう。
そしてその主体が組織の場合は集団でそれを起こしてしまうことを意味し、それは組織力の低下に繋がる。そして、内省力を高めるには質問力が必要となる。つまり、内省力は質問力によって高まり、質問力は内省力によって高まるという相互依存の関係にある。内省力と質問力の必要性が理解されることで組織力を高めることが出来るということを理解して欲しい」と述べました。
中土井氏の講演に対し参加者から「AL の良い補完説明になった」「U 理論と AL の共通項が理解できた」「ALの本質が改めて理解できた」などの声が寄せられ、満足度の高さを伺い知ることができました。