問題解決とチーム学習の組織開発手法であるアクションラーニングを活用した、経営幹部養成や管理職研修プログラムを提供しています。

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日本アクションラーニング協会情報

学生のリーダーシップ開発に活用されるアクションラーニング(早稲田大学日向野教授へインタビュー)

アクションラーニングとは、「グループで現実の問題に対処し、その解決策を立案・実施していく過程で生じる、実際の行動とそのリフレクション(振り返り)を通じて、個人、そしてグループ・組織の学習する力を養成するチーム学習法」を指します。

21世紀の新時代に求められる「問題解決能力」、「リーダーシップ」といったソフトスキルを養成するものとして、その注目の高まりをアクションラーニング協会を運営している私たちとしても感じています。
しかし、教育の現場においてアクションラーニングを取り入れている例はまだ多くありません。

そこで、本日は、国内におけるアクションラーニングの大学教育への導入の第一人者であり、早稲田大学グローバルエデュケーションセンターで、実際にアクションラーニングを通じて、学生のリーダーシップ開発を行っている日向野教授に、大学の授業としてアクションラーニングの取り入れることの意義と効果について伺いました。

下記インタビュー内容

インタビュアー(以下、--)
本日はよろしくお願いします。日向野先生は、大学の授業でアクションラーニングを導入していただいておりますが、まず先生の研究内容をご説明いただいても宜しいでしょうか?

日向野教授(以下、敬称略)
主にリーダーシップ開発の研究をしています。日本で、一昔前のリーダーシップ開発というと、企業などが課長になる人材に、リーダーの心得のようなことを研修で学習させることが主で、若手を対象としたリーダーシップ開発というものはあまり考えられてきませんでした。若い人に行う場合も、すでに偉くなった人の体験談を話す、みたいなものが大半で、若い人にとって偉くなった人の体験談は距離が遠くて現実味がなかったというのが実情だったと思います。

ところが海外での考え方は違いました。90年代からアメリカでは、偉くなる前(若手)からリーダーシップが必要であり、そのような人材を育成する必要がある、という考えが広まり始めました。この若手のリーダーシップとは、相手に対して、上司と部下のような立場的優位性がないフラットな状況でも発揮できる、という点がポイントです。私はこのアイデアをリーダーシップ開発の授業の中に取り入れ、立教大学で初めて導入し、2006年からリーダーシップ開発のカリキュラムを始めて既に12年になります。

アクションラーニングとの出会い

--もともとリーダーシップ開発が研究分野であったとのことですが、アクションラーニング
はどのようにして知っていただいたのでしょうか?

日向野:2006年から始めたリーダーシップ開発プログラムですが、前例がないため、常に手探りの状態で、ベストなカリキュラムを模索していました。2008年ごろに教員たちが手当たり次第にリーダーシップに関する研修プログラムを受けてみたのですが、そこでアクションラーニングと出会いました

アクションラーニングを導入しようと思った理由

--日向野先生は、アクションラーニングのどこに注目し、導入しようと思ったのでしょうか?

日向野:そもそも私はリーダーシップに関して3つの要素を提唱しています。それは、①(チーム内での)目標の共有、②率先垂範、③同僚支援、です。旧来のリーダーシップでは、目標を示して率先垂範することを重視しますが、③で提唱した、チームの他のメンバーもリーダーシップを発揮できるように支援する、「同僚支援」の概念が欠けていました。

旧来のように、一人のリーダーがビジョンを示し、他の人を引っ張っていくだけ、という形には無理があり、必ずついてこられない人やチームの目標が共有できていない人が出てきます。

しかし、アクションラーニングでは、ディスカッションにおいて、意見を主張するのでなく、質問と回答に徹する「質問会議®」の手法がとられます。意見の主張ではない「質問」の発言のしやすさから、少数の人間が流れを左右することがリーダーシップではなく、全員が目標を共有し、他のメンバーを支援し、また支援されることこそがリーダーシップであることを実感できます。フィードバックのしやすさも質問会議の利点です。このように、アクションラーニングは、私が提唱してきた「同僚支援」の要素を多く含んでおり、リーダーシップ開発に有効であると考え、導入に至りました。

行っているカリキュラムの内容

--アクションラーニングを授業にどのように取り入れていらっしゃいますか?

日向野:
授業を前半8週間、後半も8週間の2クォーター制に分け、前半ではアクションラーニングという理論を学ぶ前に、まず学生それぞれの方法でグループ単位のプロジェクトを実施し、コンペをします。コンペのテーマは実際の企業の方から提供していただき、産学連携のビジネスコンテストのような形です。

というのも、理論は頭で理解したからといってすぐに実践できるわけではないからです。教員が陥りがちな癖として、まず理論を教えて、すぐそれを実践してみろというものがありますが、すぐに理論を実際の行動に反映できる人は多くありません。むしろ、人間は自分の従来のメソッドがうまくいかず、困ったときほど理論を受け入れやすいのです。

アクションラーニングを教える前に行動させることで、学生たちは思い思いのリーダーシップを発揮しようとします。中には優位に立とうとしたり、乱暴なことをしたりする者も出てきます。そして誰もついてこなかったり、チームがばらばらになったりするような失敗を経験します。前半はそれで終わります。後半の授業でようやく、アクションラーニングを導入し、話し合いは質問から入るよう授業を進めます。そうすると、自己主張による前半での失敗から一転、アクションラーニングによる質問中心の進め方を体験する中で、多くの人を話し合いに巻き込むことができることが身に染みて分かるわけです。

学生の動機とは

--日向野先生の授業ですが、学生はどのような動機で先生の授業を履修しようと思うのでしょうか。

日向野:
年間で300人ほどの学生を担当しますが、高校時代に部長を務めたり、生徒会長をやっていて、さらにリーダーシップを身につけたいと考えている学生や、今の学生生活の中でリーダーシップに悩んでいる学生もきますね。あとはただなんとなくリーダーシップという言葉に興味がある子でしょうか。授業の評判は上々で、授業が終わってからも私の授業に関わりたいと言ってくれる学生もいます。そういう子にはTAとして、授業のサポートをしてもらっています。

--従来の講義型の授業と大きく異なる日向野先生の授業ですが、学生はどのような反応を示すのでしょうか?

日向野:
様々ですが、授業の形式が珍しいので、最初はみんな驚きますね。呑み込みの早い子は最初の学期で変わり始めるのですが、中には変わることに抵抗がある学生もいます。

--変わることに抵抗がある、とはどういったことでしょうか。

日向野:
リーダーでは、支援するだけでなく、支援を受け入れることも重要なのですが、支援されることは負けを認めることと感じ、なかなか受け入れられない学生もいるようです。そういう子は、例えば、「今の話わからなかったから教えて」と他人に支援を求めることが苦手だったりするわけです。

しかし、現代のリーダーシップでは、一人のリーダーが周りを引っ張るのでなく、他人を支援し、また他人に支援を求めることで、周りを巻き込んだリーダーシップを発揮することが重要です。最初は支援を求めることが苦手な学生も、次第に支援されることは貸しを作っているわけではなく、わからないことは周りに聞けるのが現代的なリーダーであると理解し始めます。

--2クォーター受講した学生たちにはどんな変化が見られますか?

日向野:
自分のリーダーシップに自信がある生徒も多いですから、最初は相手をやり込めてでも自我を通そうとします。次第に、それだけではチームが一つにまとまらないことを知り、そこからはすごく柔軟性のある対応ができるようになる。また、一度失敗したからこそアクションラーニングを本質から理解できていると思います。
おかげさまで授業の評判も良くて、受講し終えてからも、授業を手伝いたいと言ってくれる生徒が大勢います。

就職活動への効果は?

--企業からの注目度も高い先生のリーダーシップ開発論ですが、就職活動での評価はいかがでしょうか。

日向野:
最近では企業の人事部が若手にリーダーシップを求め始めています。10年前だったら「若手にリーダーシップなんかいらない」という態度の企業が多かったのですが、今では、リーダーシップのある若手の、現場での問題解決能力に期待が高まり、企業も歓迎するようになってきています。

取り入れを検討している方に一言

--注目度が高まっているアクションラーニングですが、これから導入を考えている方へ一言お願いします。

日向野:
アクションラーニングは、より質の高いPBL(project based leaning)を行いたい教育関係者にもオススメします。PBLにアクションラーニングを盛り込むとチームでの業務遂行・問題解決能力を鍛えるとともに、問題解決のプロセスにおいていかに円滑なチーム運営を行うかを学ぶことができます。
従来のPBLですと、問題解決を学ぶためのツールとしてのコミュニケーションという位置付けですが、アクションラーニングを盛り込むことでコミュニケーションの手法そのものを学ぶことができます。

本日は、国内におけるアクションラーニングの大学教育への導入のパイオニアである日向野先生にお話を伺いました。アクションラーニングは、教育現場・ビジネスシーンなどシチュエーションによって少しずつ形を変え、様々な現場で活用できるメソッドです。
アクションラーニングを、導入してみたいという方は是非ご相談ください。

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