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日本アクションラーニング協会情報

【組織を活性化させる「遊び」】神谷俊氏 Learning Base Season2 #4

2021.11.4 Learning Base Season2 #4
組織を活性化させる「遊び」
Guest: 神谷俊(株式会社エスノグラファー 代表取締役)
神谷俊(かみや しゅん)

2016年株式会社エスノグラファー創業。
企業や地域をフィールドに活動。
定量調査では見出されない人間社会のあり様を紐とき、多数の組織開発・製品開発プロジェクトに貢献してきた。
2020年4月からは、リモート環境における「職場」の在り方を研究する“Virtual Workplace Lab.(バーチャルワークプレイスラボ)”を設立。
2021年7月に、「遊ばせる技術」~チームの成果をワンランク上げる仕組み~を刊行。
学術的な知見を基盤にしつつ、「分断・分散」を前提に機能する組織社会の在り方を発展的に構想する。
経営学修士。

◆所属組織
株式会社エスノグラファー 代表取締役
Virtual Workplace Lab. 代表
株式会社ビジネスリサーチラボ コンサルティングフェロー

◆人事顧問・アドバイザー
面白法人カヤック/インターステラテクノロジズ株式会社/Groove X 株式会社
高崎商科大学/有馬高原病院

神谷氏は、人事アドバイザー・顧問の立場で、面白法人カヤックやロケットを手掛けるインターステラテクノロジズ(株)、ロボティクスを扱うGroove X(株)といったユニークな企業から、病院・大学といった伝統的な組織まで多様な場に身を置いてきた。
多角的な視点を持つ彼が今世の中に感じるのは、企業が従業員の管理を強めてしまっているという危機感だという。
そうした問題意識から、もっと組織の中に遊びを取り入れることが大事だと考え、昨年「遊ばせる技術(日本経済新聞出版)」を出版した。
今回はこの著書をもとに、現在抱いている問題意識や、遊びとは何か、組織内での遊びの作り方について提言いただいた。

1on1とテクノロジーが管理を強める

今は、一人一人がそれぞれの価値観や考え方でキャリアを伸ばしていく社会です。
多くの企業がジョブ型を取り入れるなど、企業は個人の自律を謳っているように見えます。
しかし蓋を開けてみると、テクノロジーの導入で企業が管理を強めてしまっているのではないかというのが最近の私の問題意識です。
誰が何をやってどこまでの成果を上げるのか、テクノロジーで厳密に測定され、受け身の姿勢を強めてしまっていると感じます。
新しい発見や学習はイレギュラーなところから生まれてくるのに、そこに足を踏み込めない状況が着々と作り上げられていて、そうした中で日本のGDPは上がるのかなと疑問を持ちます。
もっと遊びを取り入れたらいいのに、という意味合いを込めて「遊ばせる技術」という本を出版させていただきました。

著書でも紹介していますが、実際にどんな管理・マネジメントがなされているのか、キムラさんという方の例を挙げてみます。
まず上司とは毎週1on1を行って、現場の業務内容を確認しタスクを整理します。
タスクの優先順位を考え、翌週のTODOや目標を一緒に決めます。
時間が余った時にやることまでを全てきっちりと決めてやることになっています。
毎日仕事終わりに進捗を入力すると、システムで自動計算がされ、進捗が全然進んでいないね、明日の業務量はこれくらいにした方がいい、ということがリマインドされます。
こうした厳格な管理体勢に、キムラさんはまるで新入社員のような管理のされ方だと辛さを語っています。

問題なのは、上司はそんなキムラさんの状態を評価してしまっているという点です。
部下は僕がいちいち言わなくても自分の取り組みを粛々と進めていて、自律していると思っているのです。
でも実際にはテクノロジーに操られているかのようになっている。
テクノロジーを入れて働くことの実態はこれでいいのか、と不安に思うのです。

高い自律性を生み出す「遊び」

経営学では、不確実性が高い環境、つまり何をやったら成果が上がるのか、どういうことが求められているのかが見えにくい時代ほど、現場に全面的に権限委譲するのがセオリーです。
成果目標だけを共有して、やり方や働き方は現場に任せていくということです。
でも先ほどの事例を見てみると、セオリーに逆行したマネジメントが生まれてきています。
実際、上司はそんなに管理しているつもりはないと思いますが、テクノロジーによって実質的にはガチガチに管理されてしまっているわけです。

テクノロジーを導入すると管理がエスカレーションしやすいのは、経営学の歴史からも分かり切った話です。
アメリカの第二次産業革命期に、フォードの活躍で自動車生産が一気に拡大した時代にも同じようなことが起こっていましたし、マクドナルドのようなファストフードが画期的なサプライチェーンを導入して展開していった時代も同じです。
革新的なテクノロジーが仕事の文脈に絡んでくると、人間を軽んじる要素が出てきてしまうのです。
「訓練された無能状態」「個人成長の無視」「革新の阻害」などと批判されます。
こうしたことを人間はまた繰り返そうとしているのではないでしょうか。
テクノロジーによって管理を強めるのであれば、バランスを取るためにそれと対立する情緒的・人間的な側面を取り入れる必要があると思います。

もちろん、管理することでパフォーマンスが上がるならそれでいいではないかという意見もありますし、私も一理あるとは思います。
ただ、あまりにも管理が強過ぎてしまって仕事に駆り立てられているような状態では、パフォーマンスは上がっても一時的です。
また義務感や責任感に突き動かされて仕事をし続けると、緊張感、罪悪感でストレスを感じてしまい、健康リスクも出てきて、新しいことを学ぶ姿勢も失われ、クリエイティビティが下がってくると言われています。

内発的動機付けモチベーション研究の権威であるDeciによれば、自律には低いレベルと高いレベルがあるとされています。
低レベルの自律とは、ルールや規則、責任感やプライドに突き動かされて行動するものです。
リマインドやアラートが飛んでくるからやる、上司と成果目標を定めたから役割を全うするという、やりたくない気持ちがありながらもやる段階です。
一方高いレベルの自律とは、言われなくても面白いから、楽しいから自然とやってしまうという段階です。
ワークエンゲージメントやフローとも言われ、私は遊びによる自律と言っています。
遊びの要素や感覚を持ちながら仕事をしている時は、パフォーマンスが高まると言われています。

「遊び」は、創造性とモチベーションを上げる

遊びには、実は学術的な定義はありません。
このセミナーを勉強だと思っている人もいれば、遊びだと思って参加している人もいるように、その人の置かれた状況や心理状態によって初めて定義付けられるからです。
遊びというものを理解していくためには、人はなぜ遊ぶのかという遊びの本質について理解を深めることと、人はどうやって遊んでいるのかという遊びのメカニズムを理解することの、2つのアプローチがあります。

まず、なぜ人は遊ぶのでしょうか。
例えば赤ん坊はガラガラの音が鳴っただけで笑ったりしますが、そのうち早く、強く振ってみたり、最終的には放り投げたりと、徐々に動きが過激になり、それで楽しんでいます。
子どもがブランコに乗るときも、最初は座って普通に漕いでいますが、そのうち角度を付けたり、立ち乗りしたり、後ろ向きに乗ってみたりとリスクを取りに行きますよね。
どうしてリスクを冒してまで人は遊ぶのでしょうか。

ホイジンガという人は、人間はもともと本能的に遊ぶ動物、ホモ・ルーデンスだと言っています。
遊びを求める本能が何を人間に命令しているかというと、より新しいこと、難しいこと、大変なことに挑戦をしてみろということです。
その方が能力を出し切ることができ、自分の能力を理解でき、成長できるからです。
エリスという研究者は最適覚醒水準という考えを提唱していて、人間は自分が持っている能力ぎりぎりのラインでパフォーマンスを発揮できるようなものに関して、面白みを感じるとしています。
自分にとってどうにもならないような挑戦レベルのものや危険なものに対しては、恐怖や不安を感じてポテンシャルは下がってしまいますし、反対に能力レベルにはるかに劣るものに関しては飽き、つまらなさ、退屈さを感じてパフォーマンスを出せなくなってしまうのです。

同じような話を、チクセントミハイというフローモデルの研究者も言っています。
芸術家やダンサー、スポーツ選手などは、やはり挑戦と能力が高いレベルでバランスを取っている時、最も集中して力を発揮するフロー状態に入れると言います。
フロー状態とは、ロッククライマーであれば登っていく崖のルートが浮き出て見えたり、サッカー選手であれば鳥の目でピッチ全体を見渡しているかのような感覚になったりする状態です。
フロー状態に入れるのは、自分の能力に見合った挑戦、難しさ、大変さがある時なのです。

仕事に遊びの要素を呼び込むことができれば、クリエイティビティや学習意欲が上がると言われています。
頼まれてもいないようなことをどんどん勉強し出すと、パフォーマンスは上がり、職務満足感をおぼえ、離職意識は下がり、自分の役割でなくても組織やチームに貢献するようになっていきます。
つまり自分の遊び場を大切にするような動きを取るのです。
ですから、遊びというものはポジティブな文脈で捉えるべきで、仕事や学業といった人間の社会活動を維持発展させるためには必要な振れ幅だということです。

どのように人は「遊ぶ」のか

私には今4歳の娘がいて、夕方に公園に行くと砂場で朝食を作り始めたりします。
現実的な時間軸としては夕方ですが、彼女の頭の中では朝なんですね。
そして砂場にいながら、彼女の頭の中でそこはキッチンになっています。
落ち葉のお皿があって、その上に砂を乗せて料理と呼んでいます。
人はどうやってその遊びの世界に入り込んでいくのでしょうか。

様々な文献をひっくるめてみると、遊びにはまず現実性という前提があります。
遊んでいる人たちは現実のことを全く意識してないわけではなく、頭の片隅では意識しているわけです。
そして本能的に物足りなさを感じたり、ストレスが溜まってきたりすると、刺激を求め出します。
もっとわくわくすること、楽しいことをやっていくうちに、隔離と逃避というフェーズがあります。
意識が現実からちょっと逃れる、境界線を跨ぐ瞬間があるのです。
ディズニーランドは、現実から隔離されたデザインがなされているからこそ楽しめるのと同じです。

次に必要になるのは世界観です。
ボードゲームやRPGのような世界観を持つことによって、遊びの世界に入っていくことができます。
鬼ごっこでも、鬼とそうでない人に分かれたりしますが、こうした役割認識も含めて世界観と言えます。
そしてその中で自分自身が主人公になることで、自由に動き回り、その世界を操っているという感覚が生まれ、遊びの世界からフィードバックが返ってきます。
面白いとどんどんはまっていき、その行為をリピートするようになります。心理的な満足が得られたところで遊びが終わって、現実世界に帰ってくるという、こうしたメカニズムです。

職場は、最高の「遊び場」

仕事における遊びも、全く一緒です。
仕事だという感覚はありつつも、これを試してみたらどうなるかなとわくわくしてきて、チームの文脈からちょっと離れてロボットの一機能を作り出してみたりするわけです。
そうしてできた機能は非常にスペックが高いものだったりします。
僕が人事顧問をさせていただいている会社でも、趣味で作った機能が大受けするケースがたくさんあります。
重要なのは、隔離・逃避というフェーズです。
職場で隔離や逃避をすると「まじめにやれ」と怒られてしまうので、そうでない環境をどのように作り出せるかが大事なのです。

こうした環境が作り出せないと、現実社会を意識し過ぎて遊びが苦痛になってしまいます。
例えば上司に半強制的に連れていかれたゴルフや、社内合宿で行ったキャンプ、顧客先の担当者といった山登りなど、中には楽しめる人もいるかもしれませんが、体裁だけが遊びというケースが出てきてしまうわけです。
会社の研修でも、一時期流行ったプレイフルラーニングでは、学習効果を上げるためにレゴブロックを使って研修をしますが、研修でやらされている感から離れられないと楽しめない。
だから学習意欲が上がってこないのです。
遊びは大事だよという話をすると、じゃあ遊ぼうぜと上司の方が号令を出して社員の方にやらせたりしますが、やらされ感満載の遊びは遊びではないので気を付けてください。
子供たちは遊びの効果を意識して遊んでいるわけではなく、自ずと遊んでしまうわけです。

仕事の環境は、実は最高の遊び場だと思うのです。
いろんな設備が整っていますし、新しい刺激を生むために必要なものはかなり揃っています。遊び仲間もたくさんいます。
ただ、業績や生産性を意識するビジネスの価値観、文脈との相性はかなり悪いのも事実です。
遊びがいつどれぐらいのパフォーマンスにつながるのかと問われてしまうと、何も言えなくなり、遊びが殺されてしまうところはあります。
なので今・ここと適切に距離を取った遊び場を作っていかなければいけません。
もしかするとそれぞれの休憩時間だったり、サークル活動だったり、非公式な文脈で密かに遊びが生まれるのかもしれません。

日本で遊びというと、真面目に集団活動をしている中一人だけ好き勝手しているというように、ネガティブな文脈で使われやすいですよね。
これには歴史的な背景もあって、日本は島国なので外からの侵略が少なかったそうです。
だからこそ緊張や不安に晒される機会が少なく、ストレスを解消する文化が育たず、遊びの文化が醸成されなかったと考えられています。
また、古墳時代の頃は遊びが神と交信する神聖な行為とされていて、不真面目な感じが出てきづらかったとも言われます。文化としても集団としても遊び下手なところがある中で、どう遊びの要素を取り入れていくのかが問われています。

個人(ミクロ)に対する「遊び」を生む4つのポイント

遊びを作るためにはミクロ・メゾ・マクロの3つの視点で仕掛けていく必要がありますが、今日はミクロとマクロの観点について紹介します。
ミクロなポイントは、大きく4つです。
1つはオーナーシップ
自分は従業員でこの仕事は会社の仕事なんだという感覚では、遊びは作られません。
自分が主人公だという感覚をどうやって育てるのかは最も大事なポイントです。
その時に重要なのが2つ目のインプット&ジョブ・クラフティングです。
インプットは知識・情報収集、ジョブ・クラフティングは仕事の内容や一緒に働く人を変えたり、目の前の仕事は何のためにやるのかという意味付けを行ったりすることです。
つまり与えられた仕事を面白いと思えるように解釈をしていくことです。
3つ目はアクション&ラーニング、行動してみて、分かったことを自分の中で概念化し蓄積していくことです。
最後は成果、何らか前に進んでいるという実感を得ていくことです。
最重要なのはオーナーシップですが、そればかりを意識するよりは、インプット&ジョブ・クラフティングとアクション&ラーニングを進めていくと、オーナーシップが自然と後から生まれてきます。

遊びを推奨するということは、個人が好きに動ける拡散のエネルギーを強めるということです。
でもそれだけでは組織が崩壊してしまうため、組織にとって有益な価値を見定め、遊びの成果を収穫していくような機能が必要です。
個人の遊びと組織の価値は相反するケースがあるので、そこをミドル層がうまく調整しなければいけません。
言葉を置き換えたり、間接的に促したり方向付けたりしながら、本人たちの遊びの世界を壊さないような関わり方をすることが、組織に遊びを取り入れるためには大事なのです。

清宮普美代代表 コメント

「職場は最高の遊び場」というのは私が常々思っていることです。
だからこそ、ひとの学びの場、成長の場になりうると思っているのですが、昨今の組織の状況をきいていると、どうも真逆なことが起こっています。
リモートワークで、社会的接触がへっているなかで、1on1を強制的におこなうことで、上司も部下もうれしくないコミュニケーション(まさに、やらされている感)が生まれていたり。
そんななかでは、新しいもの「イノベーション(創造性)」は、生み出されませんよね。
今回、神谷さんはミクロ(個人)のための、「遊び」トリガーとして
①オーナーシップ
②インプット&ジョブ・クラフティング
③アクション&ラーニング
④成果
を上げていますが、まさに、これは「学習」のためのトリガー。
アクションラーニングの一連の流れでおこなっていることです。
神谷さんもいっているように、アクション&ラーニングのプロセスを実行して、ちょっと違う視点からインプットをうけたり、アプローチしたりすることで、オーナーシップが生み出されたりするので、この話は、ある意味アクションラーニングプロセスの紐解きだな、とも思いました。

逆説的にいうと、アクションラーニングでは、問題解決に真剣にむきあうことで、適切なストレッチが生まれ、ある種の「遊び」感覚が助長されます。
だから、「学習が楽しくなる」ということの説明にもなるかな。
神谷さん、素敵な紐解きをありがとうございました。

清宮 普美代(せいみや ふみよ)

日本アクションラーニング協会 代表理事
ODネットワークジャパン 理事
株式会社ラーニングデザインセンター 代表取締役
ジョージワシントン大学大学院人材開発学修士(MAinHRD)取得。
マスターアクションラーニングコーチ

東京女子大学文理学部心理学科卒業後、(株)毎日コミュニケーションズにて事業企画や人事調査等に携わる。数々の新規プロジェクトに従事後、渡米。米国の首都ワシントンDCに位置するジョージワシントン大学大学院マイケル・J・マーコード教授の指導の下、日本組織へのアクションラーニング(AL)導入についての調査や研究を重ねる。外資系金融機関の人事責任者を経て、(株)ラーニングデザインセンターを設立。2006年にNPO法人日本アクションラーニング協会を設立し、国内唯一となるALコーチ養成講座を開始。600名強(2019年1月現在)のALコーチを国内に輩出している。また、主に管理職研修、リーダーシップ開発研修として国内大手企業に導入を行い企業内人材育成を支援。アクションラーニングの理解促進、普及活動を展開中。