本物の「チーム」を作る
清宮 普美代 (著)
指示・命令型リーダーの時代は終わった!メンバーの潜在能力を最大限引き出し、ブレークスルーを生む「チーム脳」!小さな仕事からビックプロジェクトまで、次々と成功を導くニュータイプ・メソッド。
チームは、人が集まればで自然に出来るものではありません。リーダーは、チームメンバーが質の高いコミュニケーションを行えるような状況の枠組みを作ることが必要です。公式なコミュニケーションである「会議」を活用して「チーム脳」を生み出す「場づくり」の具体的ノウハウを「質問会議®」という手法を通してご紹介します。「質問会議®」は、アクションラーニング*を日本の企業に合わせてフォーマット化した独自手法です。 *チームが現実の問題解決に対する行動とそのリフレクション(振り返り)を通じて、チームや個人の学ぶ力を養成するグループワークの手法
目次
1. チーム規範の定着
まず必要なのが、チームとしての「決まり」です。欠かせない項目は6つあります。
規範1…安全
チーム内で起こったこと、会議で話し合った ことによって、その後誰も不利益を受けることが ないようにします。守秘義務も含まれます。
例えば、チーム内で何か問題点を指摘した人が、 それにより排斥されたりすればメンバーが 安心感を感じることはできません。
リーダーは叱責、批判などメンバーの安全を脅かすような行為をしな いことが大前提です。率先してメンバーの安全を確保する必要があります。
規範2…コミットメント
チームで話し合ったことに対して、全員が他人事ではなく自分事として責任 を持つ、ということです。
自分事にするには、メンバーが本音を明らかにして、納得するまで対話する ことが必要です。そのために、リーダーはメンバーが対話に参加することを 促す必要があります。
発言しないメンバーがいれば「〇〇さんはどう思いますか?」、「△ △さ んは何か気になることはありませんか?」といった声掛けをしましょう。
規範3…共有とサポート
チームは常にWin-Winな関係であるべきです。互いの問題や痛みを共有しながら、 自分に貢献できることがあれば率先して実践するという文化が必要です。
リーダーは、メンバーが困っている時、そのほかのメンバーからサポートを 引き出すような関わりを心がける必要があります。「あなたならどんなサポートができますか?」といった問いかけも有効です。
規範4…平等
役割、ポジション、実績、学歴等の有無にかかわらず、メンバー全員が 対等な関係にあるということです。
リーダーは平等化を促進するために、まず全員が 平等に発言しているかどうかに着目しましょう。 質問型のコミュニケーションであれば、誰かが発言を 独占することができなくなります。
話されている内容だけでなく、どのように話されているか にも意識を向けましょう。 (例)威圧的でないか、誰かがおどおどしていないか等
規範5…傾聴と自分自身の振り返り
「自分自身のフレームワークに問いかける姿勢を保ちながら、人の話をよく 聴く」ということです。リーダーは率先してこの傾聴を行います。
傾聴を促すにも、「質問」が有効です。人は質問をしようと思うと相手の話 をよく聞くので、自然と傾聴が促されるのです。
リーダーは、自分の発言や態度がチームメンバーにどのような影響を与えた か自分を振り返りましょう。また、会議中に「振り返りの時間」を設定して、メン バーにも自分自身への振り返りを促すようにしてください。
「いま、チームはどんな状態ですか?」「〇〇さんは議論の方向性に違和感はありま せんか?」といった振り返りを誘発する質問を投げかけましょう。
規範6…糾弾しない
会議では、チームが抱える問題を解決するために話し合っていても往々にして「〇〇が悪いから問題が発生した」というコミュニケーションに傾きがちです。
リーダーは、原因・責任追及型ではなく、「どうしたら解決できるのか」という 問題解決型の思考に切り替えましょう。
チーム内に糾弾型のコミュニケーションが生じた場合、リーダーはすぐにストップします。 さらに「いま、何が起こっていますか?」と問いかけて、自分自身の振り返りを促します。
規範をメンバーに守ってもらうためには?
リーダーは、以下のことに注意をはらいましょう
話されている内容よりも
- チームの雰囲気
- 感情的な調和があるか?
→メンバーの口調、表情、しぐさなどのノンバーバル(非言語)部分に着目する
2. メンバーが「前のめりになる」テーマ設定
組織における会議には、進捗会議、企画会議など色々な目的に応じた会議があると
思いますが、チーム脳を生み出すためには、まずメンバーが前のめりになるような「テーマ設定」が必要です。テーマ設定のポイントを以下の通りです。
身近な問題をテーマにする
- 実際の業務に直結したチーム/チームメンバーにとって身近な問題設
- 解決すると実利的なメリットのある問題
解決策ではなく問題を提示する
- 解決策を問う問題設定にしない
×:売上アップに必要な販促ツールはどれがいいか?
〇:売上が上がらない
解決策を問題に設定すると「問題の本質」を共有しきらないうちに議論が進み、結論が本質的になりにくい 問題点そのものを掘り下げていくように、会議のステップを設計しましょう。 以下に簡単にステップを紹介します。リーダーはすべてのステップにおいて全員が「認識を共有できているか」確認しながら進めることがポイントです
チーム規範の確認
前出の6つのチーム規範をチーム内で確認する
問題の明確化
問題を提示し、メンバーでそれが何なのか共有する
チーム状況の確認
本質的な問題が何なのか、という視点で問題を明確化する
再定義された問題の確認と共有
チームとして会議が機能しているか確認する。チームの
雰囲気、メンバーの感情的調和などに意識を向ける
ゴール設定
ここまでのプロセスを踏まえ、「本質的な問題」を確認する
解決案・行動案の検討
「問題が解決された状態」は何なのかを共有する
行動計画の設定
問題解決に向けた具体的な行動案を検討する
行動計画の設定
行動計画を設定する
振り返り
話し合った内容だけでなく「プロセスがどうだったか」を振り返る
3. チームの「不協和音」に蓋をしない
リーダーは、会議のステップごとに確認を入れますが、その際に大切なのは、
あえて「不協和音」を表に出させることです。これが、チーム脳を生み出す場づくりとして、非常に重要なポイントになります。
本質的な問題について、メンバー間で不同意が生じているとします。これは「不協和」になりますが、言い換えれば「別の視点」がチーム内にあるということです。この視点がさらに問題を掘り下げてくれるのです。
リーダーがこの「不協和音」を扱う上で必要なポイントは以下の通りです。
- ①同意できないことを明示することはチームにとって良いことである、という価値観をチーム内で共有する
- ②メンバーのノンバーバルな表現に注意し、「本当に納得しているかどうか」を察知する
- ③不協和音を怖がらない(全員が同意する状況は反対に稀)
4.プロセスの「振り返り」を丁寧に行う
リーダーは、会議のファシリテーターであると同時に問題解決に向けた話し合い=対話を促進する必要があります。そのために欠かせないのが、「振り返り」です。
話し合いのプロセスを俯瞰し、リフレクションすることです。振り返りがないと、チームは同じ失敗を繰り返します。つまりチームとして学習できないことになります。
リーダーは、会議の中で必ず「振り返り」の時間を確保し、次のような質問を投げかけましょう。
振り返りのタイミング
- 開始10分後程度
- 規範が保たれていないとき
- 会議の最後
質問例
「どうしたらもっとうまくやれますか」
「より効果的なチームになるに䛿どうすれ䜀いいですか」
「チームとして今回学んだこと䛿何ですか」
「どんなリーダシップを発揮しましたか」
「私たち䛿うまくやっていますか」
「問題解決䛾プロセスについて学んだこと䛿ありますか」
「ど䛾質問がいい質問でしたか」
「どうしていい質問になった䛾ですか」