リフレクションとは:何かを学んだり知識を得るための思考【書籍『対話流』切り抜き】
清宮 普美代 (著), 北川 達夫 (著)
“正解”のない変革の時代。対話的思考で学び合う力こそ、ビジネスと教育の現場を貫く「生きる力」。
対話的発想を根幹に据えて、ビジネスと教育の現場を結ぶ「学習・コミュニケーション環境」を創出する。
目次
思考の枠組みを問うための鍵
前回は、自分のフレークワーク(思考の枠組み)を問うための鍵として、「クリティカル・シンキング」を取り上げました。
クリティカル・シンキングとは、相手の意見をそのまま受け入れるのではなく、かつ自分と相手を同等に評価の対象とする思考です。
今回は、もう一つの鍵である「リフレクション」について紹介します。
第二の鍵「リフレクション」
突然ですが、皆さんは「リフレクション」とは何かと聞かれたら、上手く説明できるでしょうか?
普段から意識的にされている方もいるかもしれませんが、「そもそもリフレクションってなんだっけ・・・・・・?」と一旦立ち止まる方もいるでしょう。
リフレクションとは、ある体験やできごとを経験したときに、その体験やできごとがどういうバックグラウンドで何を意味しているかということを振り返り、学びや知識として概念化していくプロセスを指します。
つまり、ただ体験するだけではなく、そこから何かを学んだり知識を得るための思考がリフレクションです。
重要なのは、リフレクションは日本語で言うところの「反省」にとどまる概念ではないということです。
次の項で詳しく説明しますが、リフレクションの思考は私たち個人にとどまらず、チーム全体の変化や成長ととても密接に絡んでくるのです。
リフレクションの重要性
私たちが何か生産活動をするときに、リフレクションは非常に重要です。
リフレクションをすることがないと、行動は単なる行動、体験は単なる体験で終わってしまいます。そのため、例えば失敗した経験に対してリフレクションを行わなければ、その失敗が知識や学びとして概念化されず、結果として同じ失敗を何度も繰り返してしまうことになります。
また、たとえ成功した体験であっても、リフレクションは大切です。
暗黙的にうまくいっている部分を、どう形式化して、デザインして、展開していくかということが、今のビジネスでは重要になってきています。そのため、そこでもリフレクションの力は必要とされることになります。
このように、リフレクションをいかに自分たちの活動に入れられるかということが、生産性の高いチームや組織をつくっていくことに、大きく関係するのです。
組織における効果
ここまで「チーム」のリフレクションに焦点を当ててきましたが、おや?と思った方はいるでしょうか。リフレクションは個人で行うものだと思っていた方は、首を捻ったかもしれません。
リフレクションはもちろん一人でもできますが、より良いリフレクションを生み出すためには、一人で何かをやるのではなく、複数人で相互作用が起きるような場を設計することが重要です。
とくに知識や経験を重ねて思考の枠組みが固くなった人の中には、他人から教えられることに納得がいかない、という人もいます。
しかし、そのような人たちでも、他の人がリフレクションする姿を見ることによって、自分自身の思考の枠組みを問うことができ、自然とリフレクションしやすくなります。
これは、人が人と協働する場である職場において、大変重要な作用です。
さらに、このように誰かと一緒に考えるようになると、「貢献感」や「達成感」のようなものが出てきて、とても高揚するときがあります。このとき、私たちはチームのみんなで一緒に考えていることに、幸せを感じています。
つまり、リフレクションはチームの学習や成長だけではなく、メンバー同士のつながりにも良い影響を及ぼすのです。
リフレクティブな人が多い組織は幸せになる
ここまで、クリティカル・シンキングとリフレクションという二つの思考を紹介しました。
これらの思考は、自分の正しさや自分のフレームワーク(思考の枠組み)に対して自ら問いかける力を伸ばしてくれる、重要な鍵となります。
そして、このようにクリティカル・シンキングとリフレクションによって育まれる「自ら問いかける力」は、組織全体に生産的なコミュニケーションをもたらします。
「自ら問いかける力」がある人は、自然と他者に対して「なぜそう思うのですか?」と問いかけることができます。
そのような疑問や質問が自然と出てくる職場では、どちらが正しいか、という論争のようなコミュニケーションではなく、お互いに歩み寄りながらの生産的なコミュニケーションが可能になります。
そのような対話の場ができると、誰か地位のある人から「正解」を与えられるのではなく、自分が本当にやりたいことを納得したかたちでできるようになります。
すなわち、自分で考えて仕事ができるようになるのです。
リフレクティブな人が多い組織は幸せになる、という言葉が示しているのは、まさにこの部分です。
人の話をちゃんと聞き、受け止め、それをより俯瞰しながら問いかけやフィードバックを投げかける。そのような人が多い組織であればあるほど、チームで協働して問題を解決できるだけではなく、メンバー全員が楽しく学んでいける組織になるのです。
さて、次回からはいよいよ対話における具体的なスキルの話に入ります
まずは「合意形成」というプロセスに焦点を当てて、必要となる思考やスキルについて見ていきましょう。
日本アクションラーニング協会 代表理事
大学卒業後、毎日コミュニケーションズ(現:マイナビ)にて事業企画や人事調査等に携わる。数々の新規プロジェクトに従事後、渡米。米国の首都ワシントンDCに位置するジョージワシントン大学大学院マイケル・J・マーコード教授の指導の下、日本組織へのアクションラーニング(AL)導入についての調査や研究を重ねる。外資系金融機関の人事責任者を経て、(株)ラーニングデザインセンターを設立。2006年にNPO法人日本アクションラーニング協会を設立し、国内唯一となるALコーチ養成講座を開始。600名強(2019年1月現在)のALコーチを国内に輩出している。また、主に管理職研修、リーダーシップ開発研修として国内大手企業に導入を行い企業内人材育成を支援。アクションラーニングの理解促進、普及活動を展開中
株式会社ラーニングデザインセンター
東京女子大学文理学部心理学科卒
ジョージワシントン大学大学院人材開発学修士(MAinHRD)取得。
マスターアクションラーニングコーチ(MALC)