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日本アクションラーニング協会情報

質問のコツを学べる「質問会議」を実践してみましょう【書籍『対話流』切り抜き】

この記事は、書籍:対話流をもとに記事を再構築した切り抜き記事です。

清宮 普美代 (著), 北川 達夫 (著)

“正解”のない変革の時代。対話的思考で学び合う力こそ、ビジネスと教育の現場を貫く「生きる力」。
対話的発想を根幹に据えて、ビジネスと教育の現場を結ぶ「学習・コミュニケーション環境」を創出する。

「質問会議」とは?

前回の記事の最後で触れましたが、「質問会議」とは通常の会議体とは異なり、質問とその回答のみで行う会議です。

「質問会議」には、大きく三つの仕掛けがあります。

・発言を質問の形にする
・会議自体を振り返る時間を、その会議の中で設定する
・会議を問題の共有から始める

これらの仕掛けがなぜ重要なのか、一つずつ見ていきましょう。

質問型コミュニケーションのメリット

一つ目の仕掛けは「発言を質問の形にする」ということです。
質問会議においては、自分の意見を言ったり、意見に対して反論してはいけません。
その代わりに、「なぜそう思うのか?」「なぜそう言えるのか?」など、「なぜ?(Why?)」を問う質問を投げかけます。

問題意識の共有のためには質問が不可欠

ではなぜ、意見ではなく質問なのでしょうか?
それは、問題意識の共有のためには質問が不可欠だからです。

人やモノ、情報のやりとりが世界レベルで行われるこの時代。私たちは、様々なバックグラウンドや特性を持つ人と過ごしています。そのような状況で、当事者同士の価値観が異なっているのはむしろ当然のことです。
そこで本当に問題にすべきなのは、それぞれが価値にどのような優先順位をつけているかということです。

お互いが当事者意識を持って歩み寄りのポイント見つける

例えば、会社の利益を優先したい人、チームのコミュニケーションを優先したい人、はたまたメンバーそれぞれの成長を考えたい人。
一人一人の価値観が異なれば、ただ意見を言い合う議論を行っても、みんなが自分の言いたいことを言うだけで、相手の意見とぶつかってしまう・・・・・・というような状況に陥りかねません。

このような状況を避けるためにも、まずは質問によって対立点を全て明らかにし、お互いが当事者意識を持って課題を捉え直した上で、歩み寄りのポイントを見つけていくことが、問題解決のための道となるのです。

質問にもコツがある

質問する際に重要となるのが、あえて答えを持たずに質問をし合うことです。

実は、特に上司やリーダーの質問というのは、彼ら自身の中にすでに答えがあって、それをあえて部下やメンバーに問うようなものが多いです。しかし、そういう質問は「問い」ではなく、問いに見せかけた「意見」でしかありません。
そのような質問を投げかけられても、質問されたほうは「答え」を当てるために反応するだけで、自分の頭の中で何かを考えたり、創造的な思考が生まれるということはありません。

あえて答えを手放して質問を投げかけることが、質問のコツ

質問会議は、質問によって会議のメンバーが一緒に考え、同時にメンバーのモチベーションを高めていくためのものでもあります。
そのためにも、あえて答えを手放して質問を投げかけることが、質問のコツです。

俯瞰する時間を設ける

会議自体を振り返る時間をその会議の中で設定する

さて、「質問会議」の特徴に戻りましょう。
二つ目の特徴は、「会議自体を振り返る時間をその会議の中で設定する」ということです。
これは、自分たちの会議を俯瞰して観たり、メンバーの関係性を維持・促進していったりするための時間です。

通常、会議の振り返りは会議が終わった後に行われることが多いのではないでしょうか。
しかし、あえて会議の途中に振り返りの時間を設定することで、「自分たちは、問題の本質に向かって議論を進めているだろうか?」と、ふと冷静に自分たちの会議を見つめ直すことができます。
そのため、この時間がより思考の深化を促すことに繋がります。

「真の問題は何か」を考える

「会議を問題の共有から始める」

三つ目の特徴は、「会議を問題の共有から始める」ということです。
これはすなわち、「解決策」の話し合いから入るのではなく、全員で「真の問題は何か」を考えることから始める、ということです。

「問題」は、話し合いのなかで自然と変わっていくものです。
最初は「商品が売れないこと」が問題だと思っていたけれど、話し合いを進めるうちに、実は商品が売れないことではなく、社内の体制が整っていないことが課題だった・・・・・・ということが起きてもいいわけです。
そのため、質問によって、みんなで問題を再定義するところから始めることが重要になります。

指示命令する人の意見に従うのではなくいろいろな角度から考える

「解決策は何か」から問うのではなく「問題」そのものを話し合うことに対し、それは遠回りなのではないか、と思った方もいるかもしれません。
しかし、社会が急激に変化し、また色々な情報が入手できる環境では、それぞれが自分の意見を持っています。そのため、最初に問題を示されて「解決策は何か」と問われると、みんなが違った答えを頭に浮かべます。すると、上司が「これが正しい」と思っていても、他の人はそう思っていないという状況が常に発生します。

だからこそ、指示命令する人の意見に従うのではなく、みんなでいろいろな角度から考えることから始める、対話型のコミュニケーションが重要になるのです。

「聴く」と「訊く」

ここまで、質問会議の三つの仕掛けを見てきました。
これら三つの仕掛けに共通して大切なことは、相手の言い分を「聴く」ことと、相手と自分の言い分が対立しそうな点について「訊く」ことです。

質問によって分析していく

互いに異なる答えを持った状態で、いきなり解決策を話し合っても、それは意見のぶつかり合いにしかなりません。
そのため、問題を当事者それぞれが提示して、みんなでその問題を定義し、質問によって分析していくことが、真の問題解決に繋がるのです。

「質問会議」という手法が答えてくれる

もちろん、それは簡単ではありません。納得できないところがあれば「なぜそう言えるのか?」と追及する。ただし、あくまで質問でなければならず、詰問になってもいけません。「それは絶対におかしい。こちらの考えでは・・・・・・」と論戦を挑んでいるようでは、また答えの出ない論争に逆戻りするだけです。

違う考えを持った複数の人が、いかにそれぞれの考えていることを融合していけるか。それぞれの違いをいかに組織のなかで新しいものに昇華していくか。その問いに「質問会議」という手法は上手く答えてくれるのです。

「いやいや、そんなに質問ばかり出ていては、統制が取れなくなるのでは?」と思われた方もいるかもしれません。

次回は手法としての「質問会議」から少し離れ、みんなで相談しながら問題解決を目指す「共同学習」というスタイルに焦点を当てます。

清宮 普美代(せいみや ふみよ)
日本アクションラーニング協会 代表理事

大学卒業後、毎日コミュニケーションズ(現:マイナビ)にて事業企画や人事調査等に携わる。数々の新規プロジェクトに従事後、渡米。米国の首都ワシントンDCに位置するジョージワシントン大学大学院マイケル・J・マーコード教授の指導の下、日本組織へのアクションラーニング(AL)導入についての調査や研究を重ねる。外資系金融機関の人事責任者を経て、(株)ラーニングデザインセンターを設立。2006年にNPO法人日本アクションラーニング協会を設立し、国内唯一となるALコーチ養成講座を開始。600名強(2019年1月現在)のALコーチを国内に輩出している。また、主に管理職研修、リーダーシップ開発研修として国内大手企業に導入を行い企業内人材育成を支援。アクションラーニングの理解促進、普及活動を展開中
株式会社ラーニングデザインセンター
東京女子大学文理学部心理学科卒
ジョージワシントン大学大学院人材開発学修士(MAinHRD)取得。
マスターアクションラーニングコーチ(MALC)

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