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Learning Base 2022 #18 私たちは「才能」とどう向き合うべきか?

Learning Base 2022
私たちは「才能」とどう向き合うべきか?
Guest: 中村勇気氏
中村勇気

才能トレーナー。1985年鳥取県出身。two edge、LLC founder。
1,000人以上の才能コーチングを通して、これまでにない哲学とロジックを培い、才能について全く新しいエッジな視点を提供する「才能」のパーソナルトレーナー。個人・組織が必ず持っている“勝ちパターン”を見つけ、エッジの立った人材・組織に変わるための習慣、仕組みづくりをコンサルティング、コーチング、研修、コミュニティー運営、メディア発信などを通して行なっている。個人と組織の才能づくりがライフワーク。
主な著書:『「才能がない」という言い訳は、もう、あなたの辞書から無くなります。』(2021, エッセンシャル出版)

「自分自身を使いこなそう」をコンセプトに、才能を活かし使いこなす個人・組織開発コンサルティング事業を展開されている、two edge、LLC創設者の中村勇気さん。2021年には『才能がない」という言い訳は、もう、あなたの辞書から無くなります。』を上梓されました。
彼は今までの才能に関する認識を捉えなおし、アップデートする必要があると言います。今回のLearning Baseでは、そもそも「才能」とは何か、「才能」を活用するポイントは何か、そしてアクションラーニングとの関係性について語っていただきました。

才能の都市伝説

皆さんは「才能」という言葉を聞いて、何を想起するでしょうか?メジャーリーガーの大谷翔平選手やフィギュアスケーターの羽生結弦選手のように、一般人とは桁外れの能力の持ち主を思い浮かべるかもしれません。また「あなたに才能はありますか?」と質問されたら、滅相もないとばかりに否定する方がほとんどではないでしょうか。
私たちが「才能」という単語に、この反応してしまうのは、「才能の都市伝説」が広がっているからだと考えます。代表的な都市伝説を3つ挙げてみます。

才能の都市伝説①:「才能、それすなわちすげぇもの」

テレビや新聞等のメディアでは、「才能」という言葉は、金メダリストや成功者など、既に秀でている何かのメタファーとして使われることがほとんどです。この意味では、「才能を持つ人」は、一般人(すなわち「才能を持たない人」)とはかけ離れた存在として語られます。

才能の都市伝説②:「才能 or 努力」

才能と努力、どちらが大切か?私たちはしばしば、このように問いかけます。「彼には才能があったため、努力をせずとも成功できた」などと、才能が努力不要のためのプレミアムチケットのように思われがちです。

しかし私は、これらの「才能の都市伝説」が、勘違いや思い込みであると言いたいのです。

そもそも「才能」とは何か?

「才能(Talent)」という言葉が誇大化される背景として、1970年代に流行った「天才」や「ギフテッド」に関する研究があります。この研究で、天才か否かは、遺伝子に大きく左右されると言われたことで、大切なのは生まれつきの才能を「持っているかどうか」であると語られるようになりました。

しかし1990年代からは、天才の文脈に限定されない、才能そのものに関する研究が始まりました。そして研究は、2000年代に急成長を遂げます。
『ストレングスファインダー』の著者でもある、Buckingham and Cliftonによると、「才能とは自然に繰り返される思考、感情、行動のパターンのこと」と定義されます。簡単な言葉にすると、才能とは「単なる癖」です。この言い換えだと、才能が少し身近なものになりますよね。

したがって、才能を持っているだけでは、価値を発揮するには不十分でしょう。才能(=単なる癖)は、誰もが持っているものだからです。大切なのは、自分が持っている才能を見つけたうえで、その才能に合った努力を重ね、才能を使いこなすことなのです。

ちなみに、才能と近い言葉として、「強み」が挙げられますが、強みは「ある活動において常に完璧に近いパフォーマンスを発揮すること」と定義できます。つまり強みは、才能を上手く使えているときに発揮されるものなのです。
逆に「弱み」は、自分の持っている才能を悪く使ったり、暴走させてしまったことで生まれる結果を指します。なので、例えば私は共感性が低いのですが、それは弱みではなく「特性」です。また、ストレングスファインダーで下位に位置するものは、弱みではなく「課題」です。弱みについて、このあたりを間違えて解釈している方は多いのではないでしょうか。

才能×内発的動機=ユーダイモニア

才能を語るにあたって、「内発的動機」の話は避けて通れません。内発的動機の本質は「楽しさ(Play)」であり、最も強力な動機づけと言われます。
内発的動機と才能の関係を登山で例えるなら、内発的動機は「どの山を登りたいか」で、才能は「どう登るか」です。内発的動機がないままに才能が使える場合、登りたくない山でも、才能を使って簡単に登れることが続き、次第に何のために登っているか分からなくなります(企業で働く方はこのパターンに陥りがちです)。逆に内発的動機はあるが才能を使えない場合は、すごく登りたい山を上手く登れないので、だんだんその山を嫌いになって、他の山を探したりします。つまり才能と内発的動機の2つを、しっかり合致させることが大事なのです。

古代ギリシャで「完全な人間生活を送ること、または価値ある人間の潜在能力を実現すること」を指して、アリストテレスが提唱した「ユーダイモニア」という概念があります。ユーダイモニアは、Well Beingや幸福の1つの形です。
アリストテレスによると、自分が本当に価値があると思っていること(内発的動機)に対して、自分の卓越性(なぜか自然とやってしまう行動のパターン=才能)を使っていくことで、ユーダイモニアに到達できるそうです。

また2014年ごろの研究では、才能を使うと心的資本が豊かになると明らかになりました。

※ HEROと呼ばれる4因子を高めることで、心的資本は豊かになり、パフォーマンスが向上すると言われる。
 ①Hope(希望)
 ②Efficacy(自己効力感)
 ③Resilience(再起力)
 ④Optimistic(楽観性)

この研究では、既にできている部分を高めようとする「強みアプローチ」の学生と、できない部分を埋めようとする「欠乏アプローチ」の学生を観察しました。その結果、強みアプローチでテストに臨んだ学生の方が、欠乏アプローチの学生より、HEROの全ての因子で向上が見られました。Resilience(再起力)に関しては、欠乏アプローチの学生は低下すらしていました。
したがって、自分の才能がどこにあるかを自覚し、その才能を強みアプローチで高めていくことで、心が豊かになりパフォーマンスも向上し、ユーダイモニアに近づくことができると言えるでしょう。

才能を造り、使いこなすためのマインドセット

現代において、才能や強みを「見つける」ことは、ストレングスファインダーなどのツールによって、比較的簡単にできるようになりました。しかし、それだけでは意味はありません。

才能には「見つける」→「認知する」→「使う」→「成長させる」→「環境に適応させる」→「しなやかにする」という段階があると、私は考えています。つまり才能を見つけてから先の道のりの方がずっと長いのです。才能を見つけるだけで終わるのは、非常にもったいないと感じています。
才能探しの旅より、才能造りの旅に早く出た方がいいというのが、私からの提案です。

才能を使いこなす上で、キーとなるのは「グロースマインドセット(Growth Mindset)」です。

才能の捉え方は、マインドセットによって変わってきます。フィックストマインドセットでは、才能を持つかどうかに着目するため、今ある才能を守ろうとします。しかし、グロースマインドセットでは、才能は開発できるものと捉えるため、今ある才能をどう使い、成長させるかに着目します。どちらの方がよりパフォーマンスを発揮できるか、心的資本を豊かにできるかは、明白でしょう。

また逆に、才能を「持っているかどうか」と考えてしまうと、次第にフィックストマインドセットになっていきます。例えば「私は企画の才能を持っている」と自己認識した段階で、「才能を持っている私」を守ろうとしますよね。そうすると企画で失敗したときに、過大な挫折感を覚え心的資本が低下したり、企画以外の何かに挑戦できなくなってしまいます。いわば「自分らしさの檻」に閉じ込められるわけです。

子どもの教育についても、同じことが言えます。何かができたときに「才能があるね」と声を掛けるとフィックストマインドセットが育ってしまいますが、グロースマインドセットを育てるためには、「才能をどう使えたか」をフィードバックすべきでしょう。

才能を認識し合うことで、多様性が生まれる

アクションラーニングでは、ちょっとした改善レベルの気づきで終わり、ブレイクスルーが起きないセッションがありますよね。ここではシングルループ学習に終始しています。いつものパターンでいつも通りに取り組んでいるため、自分らしさの檻に閉じこもっているわけです。
しかし、お互いの才能や強みは何かを理解していると、ダブルループ学習に繋がりやすくなります。というのも、メンバーの才能や強みを理解していることは、チームの多様性を認識することと同じだからです。多様性のあるチームは、前提から問うため、思い込みが外れて(アンラーンが起きて)新しい気付きに繋がったりします。

なので、才能や強みを知り合えば、性別や国籍、年齢といった属性に関わらず、どんなメンバーでも多様性のあるチームになれるんです。その意味でも、ダブルループ学習を回さなければ立ち行かない現代では、才能を見つけ、使いこなす発想が大切になるのではないかと思います。

中村さんの著書『「才能がない」という言い訳は、もう、あなたの辞書から無くなります。』(2021, エッセンシャル出版)のご購入はこちらから!

まとめ

清宮普美代代表 コメント

アクションラーニングに携わって約20年が経ちますが、今ほどダブルループ的なアンラーンニング(学習棄却)で、自分のフレームを変えていく思考力や学習力が、求められている時代はないと思います。アクションラーニングのセッションは、実践的に、そして自然に、私たちに「本当にそうなのか?」というようなクリティカル思考をうみだしますから。そう考えると、あきらかに20年前より現代の方が、アクションラーニングの威力は増しています。

このダブルループ学習の基礎となっているのが、多様性への認識です。この認識は、中村さんがおっしゃるように、自分の才能や強みを自覚し、使いこなし伸ばしていく感覚から多様性への感性も高まるな~、と今までの体験から思い当たりました。
ALコーチでもある中村さんが、アクションラーニングのセッション(=質問会議)をチームでおこなう才能開発と合わせたら面白いプログラムができそうと言っていたので、実際に開発したい気が満載です。

清宮 普美代(せいみや ふみよ)

日本アクションラーニング協会 代表理事
ODネットワークジャパン 理事
株式会社ラーニングデザインセンター 代表取締役
ジョージワシントン大学大学院人材開発学修士(MAinHRD)取得。
マスターアクションラーニングコーチ

東京女子大学文理学部心理学科卒業後、(株)毎日コミュニケーションズにて事業企画や人事調査等に携わる。数々の新規プロジェクトに従事後、渡米。米国の首都ワシントンDCに位置するジョージワシントン大学大学院マイケル・J・マーコード教授の指導の下、日本組織へのアクションラーニング(AL)導入についての調査や研究を重ねる。外資系金融機関の人事責任者を経て、(株)ラーニングデザインセンターを設立。2006年にNPO法人日本アクションラーニング協会を設立し、国内唯一となるALコーチ養成講座を開始。600名強(2019年1月現在)のALコーチを国内に輩出している。また、主に管理職研修、リーダーシップ開発研修として国内大手企業に導入を行い企業内人材育成を支援。アクションラーニングの理解促進、普及活動を展開中。