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アクション(行動)
アクションラーニングの基礎となる6つの構成要素のひとつである。アクションラーニングプロセスにおいて、行動は経過点であり、行動の結果をチームにフィードバックすることから新たなサイクルがはじまる。人は、行動したときに一番学ぶ。そして、アクションラーニングにおけるチームプロセスは、行動を一際後押しするものとなる。
アクションラーニングのチャンピオン
組織でアクションラーニングを行う場合、必ずアクションラーニング活動を擁護してくれる人物=チャンピオンが必要である。多くの場合、この擁護者はトップマネジメントである。グループ活動を行う際、情報や特別なサポートが必要となる場合がある。このような時に精神的、実務的にサポートすることが求められる。もちろんアクションラーニングについてよく理解している必要があるが、チームセッションに出席する必要はない。
アクティブリスニング
チームセッションにおいて各メンバーに求められるスキルの1つ。コミュニケーションは2方向のプロセスであり、もしも相手の発した言葉を理解していなければコミュニケーションは成立しない。大抵はメッセージの送り手である話者の責任に焦点を当てがちで、聞き手の責任を忘れがちである。しかし効果的なコミュニケーションとするために、聞き手が心がけるスキルがある。例えば、(1) ボディランゲージに注目する、(2) 言い直し、言い換えをする、(3) 暗示しているものを考慮する、(4) 会話の流れに注意を払う、(5) 言葉の背後にある感情を受け止める。このようなスキルを行うことで、チームセッションが効率的に運営できる。
インディヴィデュアルラーニング(個人学習)
アクションラーニングは個人学習、チーム学習、組織学習すべてを促進する。 特に、チーム学習の雛形といわれているアクションラーニングであるが、それを支える個人学習における効果も高い。アクションラーニングプログラムで開発される主な個人能力は、質問力、傾聴力、共感力、思考力、フレーム打破力等が挙げられる。
エンパワーメント
ALコーチにとって重要な知識、能力の一つは、「エンパワーメント」の意味を理解し、実践できることである。そのためには、まず、チーム、そしてチームメンバーの潜在的な能力を信頼することから始まる。チームが問題を解決していくなかで、チームが、メンバーたち自身が、必ず問題解決にいたる潜在能力を持ち、それによって彼らが抱える問題を解決できることを信じること。そして、ALコーチには、チームメンバーたちが本来の力を発揮し、創造的な解決ができるように力づけていくための努力が求められる。
オープンな質問
アクションラーニングのチームセッション(チーム討議)ではチームメンバーによる質問、ALコーチによる質問がセッション運営上、鍵となる。質問の目的は問題解決プロセスを促すことと問題を解決するメンバーの関係をより良くし、チームで問題を解決していく過程でのチーム構築を可能にしていくことの二つといえる。その目的のために活用される質問形式は多様だが、効果的な質問形式の一つとして、「オープンな質問」が奨励されている。質問を受けた相手やチームが、どのように答えるかをかなり自由に決められる質問である。誘導的、尋問的な質問形式ではなく、アクションラーニングにおいてとても大切に考えられている質問、つまりメンバーやチームが、問題やチームの状況についてより深く、内省的に考えることができる質問となりやすいのがこのオープンな質問形式といえる。
オープンマインド
アクションラーニングに参加するすべてのメンバーに求められる態度および資質であり、アクションラーニングを通じて養われる。広い視野に立ち、方向性を認識し、多様な可能性に対して、真にオープンであることが非常に大切である。何に対しても率直に耳を傾ける態度は、答えを出すことより、質問することに焦点を当てるために必要である。
ALキーワード か
学習
アクションラーニング手法において学習(ラーニング)はもっとも重要なポイントである。アクションラーニングが他の問題解決手法と異なるのは問題解決の結果だけでなく、それ以上にその問題解決プロセスの中での「学習プロセス」に焦点をあてている点が非常に特徴的といえる。そしてその学習は単純に知識を覚える、スキルを体得するといったものだけでなく、チームによって創られる対話の場でのたくさんの問いかけと問題の本質を探る探求プロセスを大切にしている。問いかけによって、自分、チーム、組織の価値観や信念をも問い直す振り返りによって生み出される新たな考えや行動、そして既存の考えや行動を修正していくプロセスを学習という。この学習プロセスこそが変化の激しいビジネス環境に自律的に対応できる個人、チーム、組織を生み出していくのである。
基本のルール
アクションラーニング(マーコードモデル)におけるセッションには基本のルールがある。(1)質問中心:自分からは語らない。できるだけ意見の形で発言するのではなく、問いかけの形をとる。(2)リフレクションの時間をとる。リフレクションの時間をとるために、ALコーチはいつでもセッションに介入できる。この基本のルールは2つというとてもシンプルなものであるが、アクションラーニングセッションやプログラムを効果的に運営する上で、とても重要なルールであり、アクションラーニングの核となる部分といえる。というのは、個人、チーム、組織に変革をもたらすには、問いかけとリフレクション(振り返り)こそが、変革に結びついていく唯一のステップであり、問いかけとリフレクションなくして個人、チーム、組織に変化は訪れないからである。そこでALコーチはできるだけ問いかけが生じるような場を作り、リフレクションの時間を持つという通常のビジネスシーンではなかなか実行できないことを促進し、エンパワメントしていくことを最大の役割のひとつとしている。
経験の意義
アクションラーニングセッションにおいて、各メンバーの仕事上での経験、そしてチームが問題解決をする中での問題解決プロセス(経験)を振り返ることは非常に重要である。「経験」をどう振り返るかに学習の質がかかってくる。 アクションラーニングの最大の特徴は、単に個人だけで経験を振り返る(リフレクション)ことだけでなく、各個人の経験の振り返りをメンバーどうしてやりとりすることによって、問題解決という目的のために、チームで新しい知を創造していくプロセスが生み出されることにある。このプロセスが、研修の場、あるいは実際の職場で実践されることによって、チーム学習、組織学習につながっていくわけだが、適切に経験を個人、チーム、組織が振り返る(リフレクション)ことができるようになるために、その支援者としてのアクションラーニングコーチの役割が重要になる。
行動計画
アクションラーニング(マーコードモデル)におけるセッションでは必ず行動計画をたてることをとても重視している。これはアクションラーニングのチーム活動における最重要事項「行動を起こすことと行動から学ぶこと」を実践するためでもある。セッションで再定義された問題に対する解決目標をチームで同意した後、解決目標に一歩でも近づくために行動計画をたてるが、行動計画を問題提示者のみで考えるのではなく、チームで一緒に考え、場合によっては問題提示者以外にも行動計画を立てる人が自然な形で出てくるところがアクションラーニングのいいところである。行動計画にはSMART(スマート)であることが求められる。S(Specific:具体的であること)M(Measurable:結果がみえやすいこと)A(Achievable:達成可能であること)R(Realistic:現実的であること)T(Time-bound:時間の制約があること)。
ALキーワード さ
再定義(問題の再定義)
アクションラーニング(マーコードモデル)によるアクションラーニングのチームセッションでは、解決したいと考えている問題に関して疑問に思うことをチームメンバーが問いかけることで、問題の共有、理解を促し、問題をチーム全員で再構築していくことを問題の再定義(problem reframing)という。問題解決のためのチームセッションが1時間としたら、40分近く以上の時間をこの再定義プロセスのために費やす。なぜなら、問題の再定義さえメンバーで共有できていれば、その問題の解決のための行動案を生み出すことは非常に容易になる。そしてこの再定義プロセスではメンバーからのたくさんの質問とそれに伴うリフレクションが重要なポイントとなる。この質問とリフレクションのプロセスが充分に行われるためにはALコーチの存在が不可欠といえる。
質問
アクションラーニングのチームセッションにおいて、質問は核となる。アクションラーニングの父であるレバンスは「次に何をすべきか誰もわからないような混沌とした状況下において、新鮮な質問をする能力こそアクションラーニングの真髄である」と述べている。アクションラーニングでは、メンバーが課題に対する正しい答えをすぐ見つけようとするのではなく、新鮮で適切な質問をすることを重視している。チームセッションの中での質問による様々なやりとりによってふり返り(リフレクション)を導き、課題に対するメンバー各自の視点や前提が明らかにされ、共有されていくのである。その質問のやりとりによるプロセスを経て、課題に対する本当に全員が納得できる解決策や戦略に対するチームの合意が次第に形成されていく。したがって、アクションラーニングのチームセッションが成功する鍵は、質問の質と数にかかっているといえる。
スポンサー
アクションラーニングを用いた研修や組織開発プログラムを組織に導入する場合、必ずその組織の中にスポンサーが必要になってくる。これは日本語でいう意味のスポンサー(単に予算をつけてくれる)だけでなく、アクションラーニングの意義を理解し、組織のどのような問題解決にアクションラーニングを利用したらいいかを理解し、アクションラーニングプログラムがその組織内で認知され、受け入れられることを確信している人物といえる。そのプログラムが成功するか否かはこのスポンサーがアクションラーニングについて理解しているかにかかっているといっても過言ではない。
セッション
「セッション」とはアクションラーニングにおけるチームでの話し合いの場のことを指している。ひとつの課題について話し合う(問いかけ中心で行われます)ために約1時間から1時間半をかけて、課題についてのチームメンバーが考えていることを明らかにし、メンバー間で共有される本質的な問題を明確にしていく。最終的にはチームとしての課題解決のためのアクションプランをたて、セッション終了後に課題解決のための実行を促する。セッションは、アクションラーニングプログラムにとっての核であり、通常、2ヶ月から3ヶ月間に1~2時間程度のセッションを3~5回設定することが理想的である。セッションを省察的な場にするためにはALコーチの役割も欠くことのできない存在である。
組織学習
アクションラーニングは学習する組織を構築する(組織学習を生み出す)にあたって、非常に効果的な組織への介入手段となる。問題解決型学習プロセスが継続的かつ戦略的に組織の中に組み込まれていくためである。その組み込まれ方の特徴として、「チーム活動における学習」をもっとも重視している点にあります。通常の組織への介入手段は「個人学習」に焦点をあてたものが多いが、組織学習まで個人学習を拡大していくのは非常に時間や労力がかかる。よって学習する組織構築がなかなかうまくいかないという結果となる。しかしながら、アクションラーニングではチーム活動における学習すなわちチーム学習に焦点をあて、チーム学習プロセスを支援することで、より早く効果的に組織学習を生み出すことができるといえる。
ALキーワード た
多様性
アクションラーニングにおけるチームのメンバー選出基準の重要なポイントの一つとしてメンバーの多様性(職位、学歴、経験)がある。多様なメンバーからの質問は、問題の多角的な視点からの深堀を促し、問題の再構成を促していく。省察的で多角的な質問プロセスによって、上下関係のあるチームでも階層をフラットにすることができ、生産的なミーティングが可能となる。
チーム
アクションラーニングにおいては、チームが活動の単位である。チームで課題解決に取り組むことが活動プロセスの核であり、6~8人(できるだけ多様なバックグラウンドをもったメンバーが望ましい)のチームメンバーによる多くの問いかけとリフレクションにより、対話を深めていく。その結果、チームは課題を共有し、課題解決行動に当事者意識を持つようになる。チームでの課題解決プロセス、コミュニケーションプロセス、対話をじっくりと振り返ることで、チームとしての学習を生み出し、その学習を振り返ることでチームそのものが成長していくのである。
チーム学習
「最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か」を記したP・センゲは、学習する組織を構築するための5つのディスシプリンを提唱し、チーム学習をそのうちの一つとしてあげている。すなわち、チームメンバーが心から望む共有ビジョンを構築し、システム思考を導くためにはチ-ム学習が必要だと説明している。 アクションラーニングでは、チームセッションの中でメンバー本人の振り返り(リフレクション)と、他のメンバーからの自由で正直な問いかけやフィードバックを奨励している。そしてメンバーが挑戦すべき課題やそれまでの経験について議論し、共有し、議論したこと共有したことを蓄積するチームの活動の中で、チーム学習が推進されていく。アクションラーニングのチームセッションはチーム学習の雛形といえる。
突っ込んだ質問
アクションラーニングでは多様な観点からの質問が好ましいとされているため、特に決まった形の質問形式はない。しかしながら、チームが問題を理解し、再定義し、目標を共有し、解決のための行動計画案をたてる力となる。そんななかで、突っ込んだ質問はグループメンバーに問題をより深く、より広く考えさせる質問、たとえば「なぜこんなことが起きたのでしょうか?」を用いることで、もう一度問題の全体かつそのものをふり返るような質問は非常に重要である。ALコーチはこうした質問が出るように場作りを行っていく。
ディスカッションとALセッションの違い
アクションラーニング(マーコードモデル)におけるセッションは、ディスカッションとは異なる。最も違うポイントは通常のディスカッションでは発言している人が自分の考え方の基礎となる提や価値観、信念を正当化し、擁護しながら自分の発言を展開するが、ALセッションでは、発言(問いかけも含む)をしながら、自分の考え方の基礎となる前提や価値観に問いかけることが求められる。この違いのために、ALセッションではALコーチが問いかけを促進し、セッションの場についての振り返りの場を支援することで、ALセッションが互いに聴きあうことと学習することを重んじる特別なコミュニケーションを可能とする。そして、この特別なコミュニケーションが、業務で抱える現実の問題や課題の創造的探求を行い、解決策を生み出すことになるのである。
トリプルループ学習
マーコードモデルでは、メンバーはシングルループ学習、ダブルループ学習、そしてトリプルループ学習まで可能であるとしている。シングルループ学習は問題の直接的な原因や解決策を見出す学習で、習慣的な問題の捉え方から解決策を見出す学習である。また、ダブルループ学習は問題の根本的な原因を探り、解決策を生み出す学習で、問題意識そのものを問い直す学習といえる。シングルループ学習とダブルループ学習は学習論で比較的よく指摘されるが、トリプルループ学習というのはあまり言及されていない。というのはトリプルループ学習が問題の原因や解決策を生み出す文化や前提思考、価値観などを問い直す学習であり、簡単に生じる学習ではないからである。しかし、マーコードモデルでは、アクションラーニングの質問と振り返りのプロセスにより、トリプルループ学習を生み出すことが可能だとしている。トリプルループ学習は組織変革には必要な学習プロセスであることから、このメソッドは組織変革プログラムに適しているといえる。
ALキーワード な
なぜ?
アクションラーニングの小グループによる対話の中では、問いかけ(質問)とふり返りのプロセスが大変重要である。そこで、「なぜ~だと考えるのですか?」という問いかけは、より問題の本質や、問題をとりまく感情や関係性を問うため、省察的に考えることを促す非常に力のある質問になる。 しかし、この「なぜ」は一歩間違えると、チーム学習やチームの力を損なってしまう危険な問いかけでもある。例えば、「なぜ~しなかったのですか?」とたずねられると、非難されているような気持ちになってしまう場合もあり、詰問にも聞こえる。よって、アクションラーニングでは「なぜ」という問いかけは、チームの状況や問題提示者の状況、問題の状況などを考慮した上で使うことをすすめている。
認知学習
アクションラーニングは1940年代からの発展の中で、その時々の心理学や学習理論の影響を受けてきた。数々の学習理論の中で認知学習理論は特に影響を与えている。行動という外的プロセスだけでなく、人間の内的プロセスに焦点をあてている点である。内的プロセスの一つの例としては、人が経験をどのように捉え知識や技能となっていくのか、経験から自分自身の価値観の変化をどう導くのか、という過程をあげることができる。 このポイントは、マーコードモデルの中では、チームでの話し合いの中で、問題解決方法を学ぶのではなく、どのように問題を捉え、解釈し、解決のための行動を起こせばいいのかという問題解決からの学習法を習得することを大事にしている点である。また、問題解決方法にすぐ飛びつくのではなく、自分の問題の本質を探り、自分の問題意識そのものを問い直す点にあらわれている。認知学習はマーコードモデルでもっとも大切にしている振り返り(リフレクション)のベースを形成する考え方の一つである。
ALキーワード は
バーチャル・アクションラーニング・グループ
米国ではアクションラーニング理論をヴァーチャルで応用できないかという研究がなされている。通常のヴァーチャルチームは遠方のメンバーと仕事が同時にできるような利点もあるが、社会的なつながりやコミュニケーションが少なくなることもあり、課題解決の合意を得ることが難しかったり、メンバーの孤独感に対処することが難しい点があげられる。 そこで、アクションラーニング理論を取り入れ、ヴァーチャルチームの問題点を解消することが試みられている。具体的には実際のアクションラーニング(マーコードモデル)によるセッションのようにALコーチがヴァーチャルな場を作っていく役割を担う。例えば、フィードバックや各メンバーの役割を明確にしたり、学習に対する内省的な問いかけをインターネット上で行い、グループの学習や生産性を高めていく。(詳細は、実践アクションラーニング入門(ダイヤモンド社) の第三章グループを参照) また、eラーニングの効果的なプログラム形式であるブレンディッドラーニングの一つとして、インターネット上でのヴァーチャルな場と対面でのグループ討議の場を組み合わせたプログラムも展開しており、リフレクションの継続効果をあげている。
パートタイム方式
アクションラーニングを実際に研修プログラム、あるいは組織開発プログラムとして実施する場合、形式として二つのパターンがある。一つはパートタイム方式でもう一つがフルタイム方式である。 マーコードモデルは基本的にパートタイム方式とフルタイム方式の混合で行っている。パートタイム方式というのは、例えば、1ヶ月に一度、数時間単位で、チームが集合し、アクションラーニングのセッション(話し合いの場)を持つ。それに対してフルタイム方式は、3日間(あるいは1週間など日数は様々です)集中的に、職場から離れて終日、セッションを行ったり、研修トピック(リーダーシップ開発などのレクチャー、ワークショップなど)について様々な活動を行う。どちらも長所、短所があるが、研修内容、受講者の状況、職場環境などにあわせて柔軟にプログラムが企画、運営されることが大切である。
ファシリテーター
世界中のアクションラーニング研修のなかには、ALコーチの役割をファシリテーターと呼んでいる場合もある。しかしながら「行動から学ぶ」学習を強調したアクションラーニングにおいては、ファシリテーターとALコーチの役割を区別している。 もちろん2つの役割にはかなり重複していることもあるが、以下に述べる点において異なる。ファシリテ-ターの第一の役割はグループあるいはチームが効果的に機能しているかをチェックし、うまく機能していなければ介入を行う。時には、より効果的にチームが機能するために指示やアドバイスを与えため、メンバーはファシリテーターにかなり依存し、問題を解決するために導いてくれることを期待することになる。またチーム活動が生産的でないとしたら、ファシリテーターはそれを指摘し、直接的に改善する必要がある。それに対し、ALコーチはチームメンバーが自分たちで考え行動できるよう、質問を利用して学習させることに目的を置いているのである。
フォロ-アップ質問
アクションラーニングのセッションの中でALコーチは質問をするときにチームメンバーにより深く問題やチームの状況を考えてもらうことを期待している。そのために何をするのかというと、メンバーからの答えに際して、さらに深く問いかけていくフォローアップ質問を行うのである。例えば、「なぜ、そう思うのですか?」「例をあげてもらえますか?」「どうしてですか?」といったより深く考え、自分の経験をふり返り、さらに自分の価値観や信念なども問い直す質問である。 フォローアップ質問が適切に行われると短時間でチーム全体やメンバー個々の学習が深まり、結果として問題の全体像をとらえやすくなる。意義あるフォローアップ質問を行うためにはチーム一人ひとりが話していることを注意深く聴くことが大切である。とりわけチームの状況を改善したいときにフォローアップ質問を行うことは効果がある。自分たちの今ここでの状況を深く客観的にフォローアップ質問で問いかけ、振り返ることでチームに理想的な規範ができていくからである。
フルタイムプログラム
米国のリーダーシップ研修に導入されているアクションラーニングではこの形式を用いる場合が多い。フルタイムの場合は数日間にわたり1日8時間のセッションを持ち、1カ月後また同じように2、3日の全日プログラムを行う。この形式は、日常業務に煩わされることなく研修に集中できる点が利点であるが、セッションとセッションの間に十分な時間を取ることができないので、行動の結果によるリフレクションができない。
変革プログラム
組織変革、職場変革、意識変革プログラムなど、アクションラーニングを利用して変革を生み出すことを目的としたプログラムは昨今とても多いといえる。 なぜアクションラーニングは変革を呼び込むのか、それは行動をするから変革がおこるというよりも、学習するから変革がおこるといえるからである。学習(ラーニング)は、単に知識を得る、ノウハウを学ぶことというものではなく、自分自身の考え方、価値観を変えていくことで行動が変わり、意識も変わっていくことを促すからである。そしてそれが、一人で意識変革をするわけではなく、チーム全体でアクションラーニングプロセスに基づく意識変革を共有することで、大きな組織的変革の波となっていくのである。
「本質的課題」という言葉の危険性
マーコードモデルによるALセッションではALコーチが再定義の介入の際に、「本質的な課題は何ですか?」「本質的な課題は見えてきましたか?」と尋ねる場合がある。この言葉自体に問題はないが、気をつけないとメンバーが誤解をするときがある。それは、「問題の本質は一つだけである」と思ってしまうことである。ALセッションは、統合的アプローチであり、幅広い問題を検討することで、問題の再設定を重要視している。よって多様な観点からの質問によってあらゆる可能性を検討し、問題を再設定するのであって、本質的な問題を一つに決めるということではない。ここを誤解するとセッションの効果はなくなってしまうだろう。
ALキーワード ま
マーコード教授
WIALの代表であり、ジョージワシントン大学の恩師であるマーコード教授の素顔を紹介する。いつもカンファレンスではとても熱意にあふれたアグレッシブなスピーチをすることで有名な教授だが、素顔はとても優しく、気さくなお人柄である。 もともとは組織開発コンサルタントとして世界中で活躍。特に、専門はグローバルHRDで、米国の企業がグローバル化するにつれて文化的摩擦を世界各地で起こしていた(今も残念ながらありますが)ことから各国の文化を理解した人材開発プログラムの理論構築、実践に取りくんできた。そんな中、企業(組織)は学習し続けることが大切だと考え、学習する組織の研究、実践に乗り出すと同時に、アクションラーニングに魅せられた。そして、アクションラーニングを通じて学習する組織の構築に取り組み、現在では米国の第一人者である。
ミンツバーグ
経営学、特に組織戦略論で有名なカナダのミンツバーグ教授は、彼の著書「MBAが会社を滅ぼす-マネージャーの正しい育て方」(出版:日経BP社)で、アクションラーニングの詳細についてマネージャー育成の観点から紹介している。 そこではレバンスに始まったアクションラーニングが過去から現在にいたるまでマネージャー育成の現場でどのように使われているかが述べられている。彼は、アクションラーニングについて、現場の問題解決と学習(マネージャーの成長)を同時に行うことを目標としている考え方そのものは悪くはないが、企業では問題解決が最優先されるので学習がおろそかにされ、アクションラーニングによって両立することは困難であることを著書の中で指摘している。 マーコードモデルはその点で、現場の問題解決の中でできるだけ学習に焦点があてられるように、内省や省察(学習)を学習者に対して支援する工夫がなされており、ミンツバーグが懸念している部分に対応できている点が特徴といえる。
6つの構成要素
アクションラーニングの効果を最大限にするためには、6つの構成要素が備わっている必要がある。(1)問題・課題、(2)チーム/グループ、(3)問いかけと振り返り(リフレクション)のプロセス、(4)学習へのコミットメント、(5)行動、(6)ALコーチ、です。これらの要素は核になり、相互に影響し合う。どれか1つでも欠けていたり、何らかの理由で機能していなければ、アクションラーニング研修の効果は失われる。
メンバー
アクションラーニングによる効果の一つにチームの成長があげられる。チームとしての成長はメンバー一人ひとりの成長とメンバー相互の働きかけによってチーム全体が成長していくことを意味している。そのためにはメンバー各々のバックグラウンド(経験や持っている知識)の多様性を尊重し、それぞれの見方、ものの考え方がチームの話し合いの中や活動プロセスの中で受容され、チームの成果に活かされていく必要がある。しかしながらメンバーの多様性をいかす、「ダイバーシティの尊重」はチームが成長していく上でもっとも難しい過程といえる。
問題解決
アクションラーニングは問題解決型学習手法だと説明されている。アクションラーニングの問題解決の特徴は、実際に参加者が抱え、悩んでいる現実の問題を手法のなかで取り上げその解決を目的としている点である。なぜ現実の問題なのか? マーコードモデルのアクションラーニングでは、成人学習理論「現実生活の課題や問題によりうまく対処しうる学習の必要性を実感したときに、人々はなにかを学習しようとする」(マルカム・ノールズ、2002)という考えが援用されている。問題解決プロセスの中で最大限の学習を生み出すために、多様な工夫がなされているのである。
問題提示者
各メンバーがある一定期間、自分の抱える問題を解決するために問題提示者となる。シングル問題の場合は与えられた問題にかかわっているメンバーが問題提示者になり、チームメンバー全員がその問題に関係しているとすれば、全員が問題提示者となる。 さらに、ある事業部門全体にかかわっている問題だとしたら、その事業部を代表する事業部長が問題提示者となる場合もある(問題のスポンサー)。問題提示者は問題を解決したいと心から考えている必要があるし、チームメンバーのサポートを喜んで受け入れる必要がある。またメンバーからの質問に誠実に答えなければならない。各セッションの最後には、行動計画を必ず作成し、必ず行動することが求められる。
問題の再定義(1)
各チームセッションの最初に問題を再定義することは非常に重要なプロセスである。問題の再定義は問題提示者だけでなく、チームメンバー全員が問題の本質を理解し、納得して初めて再定義される。ALコーチは問題の再定義がうまくできるよう導くのみである。当初問題とみなされていたことが問いかけとリフレクションのプロセスを通して、問題再定義がされる。本来考えていた問題とは別の問題が問題であったり、より具体的な問題が見えたりすることも往々にしてある。問題の再定義は必ずどのチームセッションでも行われ、常に問題の本質は何か質問とリフレクションすることが求められる。
問題の再定義(2)
問題には必ず、その問題の詳細を理解し、それを解決することが重要であると考え、その問題を解決するために必要な情報、手段へのアクセスを持っている人物がいる。このような人物が「問題のスポンサー」となる。その人物はチームメンバーである場合もあるし、ない場合もある。問題のスポンサーはチームが問題を解決するために、行動を自由にとれるようサポートするべきである。チームメンバーでないとしたら、最初のセッションと最後のセッションのみというようにキーとなるセッションに参加し、メンバーからの質問を受ける。しかしながら、チームの解決策や行動の正誤判断を下さないようにすることが大切である。既出の「問題提示者」のなかで"事業部長が問題提示者となる場合もある(問題のスポンサー)"と述べたが、この場合事業部長は提示者であると同時に問題のスポンサーとなる。
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レグ・レバンス
アクションラーニングの父ともいえる存在。ケンブリッジ大学の物理学者であったレバンスは、1930年代からアクションラーニングの開発に取り組み始めた。彼が、最初にアクションラーニングの手法をビジネスの世界で試したのは、英国国立石炭連盟の教育トレーニング部門の初代ディレクターを任されていた時である。石炭産業のマネージャーたちが、様々な個別の業務課題を抱えていることを知り、会社の枠を取り払った小グループを作って、問題を解決するためにメンバー間でいろいろな角度からの質問をしてみることを薦めた。マネージャーたちは、各自が抱える問題解決に際し、専門家ではない人からの質問を受けることは、非常に意義があることを知った。結果的にこの活動は成果をあげ、このテクニックは石炭会社のマネジメントハンドブックにも書き加えられたという。このことを発端に、アクションラーニングの手法をビジネスで活用できるよう雛型を半世紀にわたって確立し、普及に努めた。
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ワークアウト
1988年10月に始まったゼネラルエレクトリック(GE)社のワークアウトは最も有名かつ成功したアクションラーニングプログラムの1つである。日本でもアクションラーニングというと、GEのワークアウトを思い起こす人が多い。GEのワークアウトの目的は、中間管理職とそれ以下のマネージャーに対して、相互信頼を築く、権限委譲を進める、不必要な仕事の除去、GEにとって新たなパラダイムの創造を目的とした。ジャック・ウェルチを始め、経営幹部がこの研修に計画段階から関与し、研修期間中も会社全体としてこの研修をサポートしていることを社員に伝える等、積極的に関与していたことも成功要因の1つであるといわれている。