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アクションラーニングとは
アクションラーニングは、グループで現実の問題に対処し、その解決策を立案・実施していく過程で生じる、実際の行動とそのリフレクション(振り返り)を通じて、個人、そしてグループ・組織の学習する力を養成するチーム学習法です。
- 定義
- 注目されるアクションラーニング
- 学習と21世紀型リーダーシップ
- アクションラーニングの効用
- アクションラーニングの歴史的背景
- アクションラーニングアプローチ
- アクションラーニングコーチ
(=学習コーチ)の役割 - アクションラーニングの6つの構成要素
- 他の手法との違い
- 世界的に認められた基準
- 2004年開始の600名以上の
ALCによる信頼性 - 15年以上の渡る豊富な導入事例
- 組織開発実践者としてのALCの活動
定義
アクションラーニングは、グループで現実の問題に対処し、その解決策を立案・実施していく過程で生じる、実際の行動とそのリフレクション(振り返り)を通じて、個人、そしてグループ・組織の学習する力を養成するチーム学習法です。 アクションラーニングという言葉は2つの意味でもちいられます。第一には、アクションラーニングとは、このようなチーム学習のプロセスであり、第二にはそれらのプロセスが生じる場を生み出すプログラムとしてです。
アクションラーニングとは?
- プロセス
- 小グループで現実の問題に取り組む中で、行動を起こし、内省することで学習していくプロセスである。
- プログラム
- 個人、チーム、リーダー、そして組織が学習し、それぞれの場で変革を起こすダイナミックな機会を生み出すプログラムである。
注目されるアクションラーニング
いまや欧米のビジネススクールでは、アクションラーニングはケーススタディと同様、またはそれに変わって主流な手法となっています。組織の現実の問題を取り上げながら、その解決策に対処していく。この動きは従来型のケーススタディでは得られない、変化する時代における問題解決力を養う効果的なやり方であるということが証明されているからです。
また多くのグローバル企業では、自社のコーポレートユニバシティ(企業内大学)のプログラムにアクションラーニング手法をとりいれています。そして、それらのプログラムは、組織自体の文化やあり方を変容させるものとして位置づけられています。
アクションラーニングによって、リーダーを開発するという試みは、いまや定番といっていいような広がりを見せています。この手法は、従来の研修では不可能であった、ソフトスキル、いわゆるEQ(情緒能力)の開発をも可能にしています。アクションラーニングに存在する「アクションラーニングコーチ(学習コーチ)」は、まさに21世紀型のリーダーの資質、チームの力を引き出す存在を体現するものとなっています。そして、多くの企業、経営者がまた、アクションラーニングプログラムがもたらす、重要な課題の創造的解決に多大な魅力を感じ、事実その現実の果実を手にしているといっていいでしょう。しかし、アクションラーニングは"単なる問題解決手法"とは、本質的に異なった哲学(フィロソフィー)をもったものです。その手法のもつ本来的意味を理解しないと、その果実の本来の豊穣さを手にすることはできないものといえます。
アクションラーニングが注目される背景を整理すると以下のようになります。
- 組織が抱える問題の複雑化
- パフォーマンスの高いチームの速成
- 変化と学習を受け入れる組織文化の育成
- 環境変化に対応する組織の開発
- 新しい形のリーダシップ育成に対するニーズ
個人・チーム・組織による継続的学習の必要性
学習と21世紀型リーダーシップ
学習=ラーニングというコンセプトは、ある意味非常に今日的なものであるといえます。学習とは、知識の獲得・蓄積・創造を意味し、変化の激しい現代においては、今ある能力・スキルより、新しいスキルを獲得できる力=学習する力をもつことのほうが重要です。現代において働くということ、すなわちそれは、学習することと同じであり、「学習は新しい形の労働」(Zuboff, 1988, In the Age of the Smart Machine)となったといえます。
21世紀型リーダーシップ、すなわち現代のリーダーは、自分の周りの人材の可能性を引き出し、学習を促進する存在です。リーダーに求められる役割は変化し、そのような人間性をも含めた育成を、できるだけ短時間でおこないたいという組織ニーズは強まっています。
分野 | 20世紀型の対処方法 | 21世紀型の対処方法 |
---|---|---|
リーダーシップのとり方 | 断固たる決断力で組織を引っ張る | 組織が行動する際の助言者となる |
組織づくり | 役割と責任を分担した効果的なヒエラルキーをつくる | 信頼関係で結ばれたコミュニティーを築く |
コミュニケーション方法 | 問題を確定させ、求めている答えを人々に明確に示す | 根本的な部分を明確にしたうえで、常に問いかけ続ける |
人材活用 | 有能な人材をみつけ適所に配置する | 相互に高めあえる、豊かな人的ネットワークを構築する |
指導法 | 解決法を示す | 核となる質問や、論点を提示し、問題を見極められるように仕向ける |
アクションラーニングの効用
アクションラーニングの効果は3つのベクトルでしかも同時におこります。第一のベクトルは、問題解決、第二は個人の内的変容と能力開発、そして最後の効果はチーム学習が構築されること、そしてそのことによる、個人学習と組織学習の架け橋として働くことです。このベクトルの効果があるので、アクションラーニングは「学習する組織のDNA」であると表現されるのです。
アクションラーニングの効用
1粒で3度おいしい → 問題解決と個人の能力開発、組織開発を同時にできる
- 複雑な問題の創造的解決案
- 個人の学習能力の向上
- リーダーの創造 (新しいタイプのリーダーシップ)
- レベルの高いチームの即効構築
- 変化に対応する組織文化、組織をつくる
- 学習する組織の基盤となる
アクションラーニングの歴史的背景
アクションラーニングは、新しい手法ではありません。
1930年代にイギリスの物理学者であるレグ・レバンス(「アクションラーニングの父」)がオリジナルタイプを考案してから、幾多の研究者、実践者がその効果を認め、精錬してきた手法といえます。 特に近年その効用が、時代のニーズにより合致し世界的に展開されているといえます。
- ケンブリッジ大学の物理学者であったレグ・レバンスが1930年代から開発し、雛形を作成
- イギリス、ヨーロッパ各地で主にミドルマネージャーの能力開発の手法として用いられる。(1960-70年代)
- 1980年代に米国でもリーダーシップ開発手法として注目を集め、現在多くの企業で利用されている
- 2000年代からWIAL(世界アクションラーニング機構)がアクションラーニングコーチの育成を始め、企業にとどまらず、NPO、政府機関、大学等への展開が世界各地で行われている
アクションラーニングアプローチ
- アクションラーニングのアプローチは、現実の問題(緊急かつ重要なもの)を取り上げ、チームでその問題解決に対処することですが、そのプロセスにおいては、個人のそしてチームのリフレクションを重視します。このアプローチのなかで、参加者は、経験学習の循環プロセスを体験することになります。また、チームでの話し合いは、基本的に「質問」をベースとしたものになります。アクションラーニングコーチ(学習コーチ)は多様なチームチームメンバーとともに、チームとしての振り返りを促し、問題解決より学習に焦点をあてた介入をおこなうことになります。また、問題の提示者は、必ず、セッションにおいて、次回までに行う行動計画を策定し、チームメンバーの同意をえます。次回のセッションは、行動の報告から始まることになります。
アクションラーニングコーチ(=学習コーチ)の役割
アクションラーニングコーチ(学習コーチ)は、アクションラーニングセッションを成功に導くためには特に重要です。この存在がないと、ほとんどにおいて問題解決手法と変わらなくなってしまい、「学習」=新しいことを学ぶ力を意識的につけるという効果を得ることは難しいといえます。それゆえ、多くのプログラムにおいて、学習コーチは必ず設定され、その効果をあげていることが報告されています。また、この学習コーチのスキルは、チームリーダとしてのスキルでもあり、企業によっては、アクションラーニングと同時に、アクションラーニングコーチを自社のなかで育成するためのプログラムを走らせています。
アクションラーニングコーチの3つの役割
- アクションラーニングの擁護者
- プログラム導入の促進者
- セッション管理者(時間管理)
学習に焦点をあてる存在
- リフレクションを促す質問をする
- チームプロセスに目を向ける質問をする
- 自由と柔軟性のある斬新な質問を奨励する
- チームプロセスに注視し、チームに流れる感情に留意。共有と行動を促進する。
アクションラーニングの6つの構成要素
アクションラーニングには、基本となる6つの構成要素があり、これらの要素がうまくかみあっていないと、その効果は半減されます。プログラム設計時においては、特にこの6つの構成要素をうまく組み込んで企画することが重要になります。
6つの構成要素
- 問題(プロジェクト、課題)
- チーム・グループ----4~8人 多様なメンバー
- 質問とリフレクションのプロセス
- 行動(問題解決に向けての行動)
- 学習へのコミットメント
- アクションラーニングコーチ(学習コーチ)
他の手法との違い
アクションラーニングは、他の多くの手法と類似点がありますが、それはまた多くの点で異なっています。第一に、アクションラーニングは単なる問題解決手法ではありません。学習に焦点を当てることは単なる問題解決以上の結果をもたらします。そしてまた、多くの研究例は、生み出される問題解決案が従来の手法のものと比べより創造的で本質的であるとしています。
他の手法との違い
- 他の問題解決手法との違い
問題解決策の質:創造性、本質性の高いソリューションを提示 - アクションラーニングコーチの存在
問題解決と同時に、学習そのもの(リフレクションをおこす存在としての)に対する理解を深めることにより学ぶことを学べる - 現場での展開
オフサイトミーティングとは異なり、現実の職場での展開が可能 - チーム学習の雛形を実践できる(多様な視点からのものを見る)
OJTのような個人学習ではない
パーソナルコーチングとは異なり、多対多の創発が生まれる - 新時代のリーダーシップ開発
従来の教室での研修、ケーススタディと異なり、ソフトスキル(人間性)の開発が可能
過去のケースとしての正解(知識)よりも、未来の解答を導く力と、その場をつくる力の開発
世界的に認められた基準
WIAL(世界アクションラーニング機構)の提携機関日本アクションラーニング協会は、ICF(国際コーチ連盟)が必要とするCCE(Continuing Coach Education コーチの継続教育)付与プログラムを実施しています。
- WIAL(World Institute for Action Learning:世界アク ションラーニング機構)の日本における提携機関であ る日本アクションラーニング協会では、世界基準のリ ソースを活用した講座の実施がおこなわれています
- アクションラーニング基礎講座(PSD)ではコア・コンピテンシー:13.25単位 リソース・ディベロップメント:2.75単位
- アクションラーニングコーチ養成講座(ALC)では、コア・コンピテンシー:37.25単位リソース・ディベロップメント:2.75単位が付与されます。
2004年開始の600名以上のアクションラーニングコーチによる信頼性
- ALC(アクションラーニングコーチ)は、組織の内外を問わず必要とされています。
- WIALのアクションラーニングを導入に際しては、熟練のプロフェッショナルALコーチが多数存在し、その信頼性は非常に高いものがあります。
- 組織開発、人材開発の外部エキスパートだけでなく、内部組織開発実践者の多くも、ALコーチとなっています。
- 彼らは、人材開発、組織開発のプログラムにおいてアクションラーニングを効果的に活用しており、またそのコミュニティが相互に研さんする機会提供をしています(アクティブステイタス会員 参照)
- 日本での展開は、世界的にみても、認定ALコーチの数が多い国のひとつです。
15年以上の渡る豊富な導入事例
- 日本におけるアクションラーニングは、多様な業種、多様な目的をもつプログラムがすでに展開されている。リソースセンターでもある、日本アクションラーニング協会では、多様な実績と事例をもとに、それぞれの組織にあったプログラム展開のサポートをおこなっています。
- 近年では、企業のみならず、教育機関や、研究などへの協力や、教育現場での展開も広がっています。
組織開発実践者としてのALCの活動
アクションラーニングは、組織の基盤であるチームに働き掛ける組織開発と考えられます。アクションラーニングコーチは、チームに対する学習促進者であり、信頼の基盤をつくることのできるリーダーともいえます。そのノウハウは、体系だった能力開発の上でなされ、21世紀型リーダーにとっては必須の力です。