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日本アクションラーニング協会情報

限界なき「学習」とは何か? ~学習する組織と、しない組織 実践からみえるもの~

Leaning Base 01(前編)OSをアップデートせよ!

OS21×アクションラーニング

 

 

21世紀学び研究所 代表の熊平美香さんと、NPO法人日本アクションラーニング協会代表、株式会社ラーニングデザインセンター 代表取締役 清宮 普美代とのLearning Base第一回目のダイヤローグセッションが行われました。

Leaning Baseとは、時代の変化のなかで、我々がいま必要としている「学習」とは何か?をいろいろな観点から見出す企画です。日本アクションラーニング協会とその事務局ラーニングデザインセンターが設立以来、展開してきたアクションラーニングとは何か?を、「今」という時代背景のなかで、問いかける企画です。

日本を学習する組織、国にしたい—そんな思いで20年近く、人材開発・組織開発の実践を通じて社会に関わってきた二人だからこその想いと知己を語りあったエッセンスです。

(この対談は、特に二人のコメントを分けずにひとつのストーリィにします。、前編は「OSをアップデートせよ!」後編は「双子の経済と教育」です。)

21世紀に生きる私たちは、いままでとは異なった時代背景のはか、私たちのOS(オペレーションシステム)をアップデートする必用があります。ある意味、学び方を変える必要があるのです。

 

本当の学びを知らずに大人になる私たち ブルームの分類法

ブルームが提示した、認知理解の段階は、記憶→理解→応用→分析→評価→創造というピラミッドになっていますで。従来型の学校教育のテストのために暗記しているような「学び」では、認知理解の段階の最初の「記憶」「理解」でとどまっていることがほとんどで、その先の自分で「応用」し、「分析」「評価」「創造」にいたる機会設定はされていませんでした。私たちは、ほとんど「学び」を学ぶことなく大人になっています。かわいそうな例といえるかもしれませんが、リーダーシップを本を読んで「記憶」「理解」したからといって、リーダーシップは学べないということです。自分で学びを応用し、それを加工し、新しいものを生み出す学びは、今社会でもっとも必要とされている学びなのですが…

 

 

100点をとってはいけない時代 21世紀に生きるヒトのOS(オペレーションシステム)

デザイン思考、システム思考、スクラム、デザインスプリント、アジャイル、リーンスタートアップと多種多彩な思考法やツールがうみだされています。しかし、その新しいアプリケーションを機能させる新しいOSが今、必要とされているのです。古いOSに新しいアプリをいれてもうまく動きません。現代は100点満点をとれない時代です。逆に100点をとってはいけない、20点をとる勇気こそが必要なのです。ともかく動く、考えて試してみる。逆に100点をとってしまうということは、その段階で正解があるということで、私たちの新しい基本構造としてはだめなのです。こんなことを考えると、現代のヒトを動かすオペレーションシステムは、従来のものからアップデートする必用があります。

 

21世紀の学び方 画一性から多様性へ

新しい時代の学び方のエッセンスの鍵は、画一性から多様性へ。学び手が主体的、能動的に学ぶことが鍵になります。そして、指導者は指示・命令をするのではなく、学びの機会と環境をつくる存在です。また、指導者そのものが、主体的に学ぶ存在である必要があります。学びには、自己が主体的に動けるスペースが必要なので、画一的なものより、それぞれの多様性が担保できる自由度が必要です。これは、我々のあたりまえを見直す時代になったともいえます。いままでは既知の学びを学ぶ方法でしたが、これからは未知の世界を学んでいく。つまり答えは「ある」のではなく、自ら答えを「つくっていく」時代であるといえるのです。

 

自律型組織と自律した個人

従来型の組織は、指示命令型とも考えられます。そこには、内発的な個人からの「私の目標」がなく、組織目標からのみ、生まれた「私の目標」しかありません。いま、時代の変化に対応し、創造(イノベーション)を生み出す組織であるためには、一人ひとりが主体的にビジョンや戦略を自分事化する必要があります。そのためには、新しいOSが入って「自分が何を大切にしているのか」「どんな自分でありたいのか」「何を実現したいのか」が個人のなかにあって、自律型組織=学習する組織になるといえるのです。

 

 

日本の失われた30年とリフレクション

日本の失われた30年といわれることの本質は、私たちがリフレクションをきちんと機能させることができなかったためではないかと思っています。リフレクション、振り返りこそが、未来をつくることにつながると強く思います。新しい時代の速さと複雑さの要請にこたえるために、我々は自分の考えを深く、スピーディーに構築する必要があります。そのために、我々の能力は開発される必要がある、実際オランダの事例では、4歳児からリフレクションがおこなわれていることにインパクトをうけました。2017年には、日本でも、ようやく、経済産業省の「人生100年時代の社会人基礎力」にリフレクションという文言が採用されました。

参考:リフレクション(内省)が人生100年時代キャリアの鍵

https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/jinzairyoku/jinzaizou_wg/pdf/004_02_02.pdf

■清宮 追加コメント:社会人基礎力は、OECD(経済協力開発機構)が提示したこれからの社会に生きる人のコアスキルが基礎になっていました。社会と個人がうまく機能し、Well-Beingであるための力と言い換えてもいいと思います。今(2020年)は、文科省もこのOECDが提示している基礎力(ラーニングモデル)を掲げていますが、最初に導入したのは、経済産業省でした。2017年版の基礎力に「リフレクション」という文言がはいったのは、ワーキンググループで熊平さんからの提案が通った結果だと思います

 

リフレクションと対話が鍵

このOSをアップデートするのに重要な2つのことが、リフレクションと対話です。リフレクションとは、自己を客観的かつ批判的に振り返る行為です。リフレクションをおこなうことで、物事に対してこれまで通りのやり方やモノの見方を、そのまま適応するものではなく、そのままの形で受け入れるということでなく、クリティカルに、経験から学び、考え行動することが可能になるものです。また、対話は自己を内省し、評価・判断を保留にして、他者に共感する聞き方と話し方を身につけることで、自分の枠を超えることができるようになります。この二つがないと、学びが平坦なものになってしまい、この力が学びの土台を作っているといえるのです。日本社会の失われた20年、30年といわれるものは、この土台づくりが我々ができなかったことによるのではないだろうか。バブル時代、我々はうまくいってるこことに対して、リフレクションがたりず、うまくいっている理由になることまで手放してしまっていたのかもしれないです。日本文化の暗黙知というと美しいけど、認知していないのであれば、それは「知」とはいえないでしょう。

 

OSをアップデートする方法 認知の4点セット

さらに、この二つを深く、確実にやってほしいと思い「認知の4点セット」をつくりました。認知の4点セットは、「意見」「経験」「感情」「価値観」のことで、自己の思考、感情、価値観を客観的にとらえるフレームワークです。リフレクションが大切といってもなかなか難しいこともありますが、このフレームワークを使うと自分で気づくことが容易になります。通常私たちは物事に対して「意見」をもちます。その意見の背後には、その意見をもつにいたった過去の「経験」があります。また、その経験の記憶には感情が紐づいています。私たちの意見の前提には、判断に使用した価値観や尺度が存在しています。

 

 

リフレクションスキルの向上は、①大切にしている価値観を知る ②目的やビジョンを見つける ③経験から学ぶ の3つで強化することが可能です。

 

リフレクションスキルの向上 ①大切にしている価値観を知る

リフレクションができないということは、自分を知ることができないということにもなります。自分を変えていくためには、自分を知ることができることがはずせないことです。逆に言えば、自分を知らないまま、わからないまま変わっていくことが一番危険なことです。意思のない、「そうせねばならい」変化を受け入れ、価値観を変えることは、思考・感情停止をするということです。激しい、大きい変化がある時には、自分の考えを深く、スピーディにおこなう必要があるのです。例えば、働き方改革で「時短だ」といっている背景に、なぜそうなのかというWhyを常に考え、価値観から考える習慣が必要だと思います。動機の源を知ること、これがないと、学習する組織のなかで言及されている「パーソナルマスタリー」とか「クリエイティブテンション」といった状況にならないのです。

 

リフレクションスキルの向上 ②目的やビジョンをみつける

動機の源につながる目的を持った時、人は主体的になり能力は最大化します。学びの目的は、現状とビジョン(在りたい姿)のギャップを自ら変えていきたいと思えること。それが、クリエイティブテンションを生み出すのだと思います。そのような状況になって初めて、学びは活性化するので、自分の価値観を知り、そこから生まれてくるビジョンを見出すことが重要です。そのためには動機の源から湧き上がるものを大切にする、そしてそのためは、自分自身の動機の源を知ることが非常に重要で、それを見出すのは自分の過去の体験とその認知を振り返ることです。

 

■クリエイティブテンションとは

ビジョン(在りたい姿)と現状のキャップをうめようとする強い内発的動機、クリエイティブテンションが高鳴ることによって高い創造性が発揮される。

 

リフレクションスキルの向上 ③経験から学ぶ

多くの人が、単に出来事や、他人、環境を振り返るだけで、自らの変容を生み出すことができないでいます。経験から学ぶということは、自分の行動を振り返り、またその前提にある自分の思考を振り返ることです。認知の4点セットをつかって、自分の内面を振り返ることが重要です。自己の行動を決めているのは、自己の内面であり、それを客観視できることが、自分の行動の質を変えることになるのです。リフレクションをおこなうことで、自分の持論が経験を通じてアップデートしていくことで、学びが鮮明になりますし、ダブルループ学習というか、自分の認知が変わりやすくなります。経験は膨大な情報でそもそもの振り返りの段階で、何をひろっているかで個性がはいっています。私はなぜそれをひろうのか、自分の価値観もふくめて、経験の意味付けもみえてくるのです。これは多くの場合、複数の人とおこなう環境のほうがよくて、自分では見えないものが他の人に見えてくるということもあります。

 

■清宮 追加コメント

質問会議(アクションラーニングの実践手法)のセットだと、他者の認知をみることで、自分の認知も見れるので、この経験から学ぶのサイクルに対しては、非常に親和性があるといえます。実際、経験から学ぶこと、リフレクションの力を実践的につける方法です。リフレクションが体感できる実践のフォームということでもあります。

 

OSをアップデートするのに必要なもう一つのスキルは対話スキルです。対話スキルの向上には ①自己内省と共感を実践する ②評価判断を保留にする ③自分の経験に当てはめて聴かない の3つのポイントがあります。

 

対話のスキル向上 ①自己内省と共感を実践する

対話に関しても、認知の4点セットを活用します。対話には、自分の考えを客観しする自己内省と、相手の意見を聴くのではなく、その背景にある相手の経験、感情、価値観に焦点をあてる共感の聞き方が必要です。対話は自己内省があって初めて、機能するものでもあり、また相手の世界をのぞくためにも、認知の4点セットを使ってきくと自己内省と共感の両方がおこりやすくなります。

 

 

対話のスキル向上 ②価値判断を保留にする

対話を行う際には、評価判断を保留にすることが、一番難しくて、そして一番重要なことです。私は、こういう背景で、こう思うんだな、じゃあ相手はどう思うんだろう、という感じで、いったん自分の意見を手放すためには、自己内省がないと難しいのです。「これしかない」という価値判断のもとに聞くということだと、相手から学ぶことができません。この保留にできるということが非常に重要なスキルなのです。「手放す」ことが難しいと思う場合でも、自分の思考を客観化をするということができれば、いいのだと思います。この力がないと多様性から学ぶことができなくなります。

 

対話のスキル向上 ③自分の経験にあてはめて聴かない

人の話を聞くときに、理解しようとして、自分の体験に基づいて解釈することは危険なことだといえます。他者の意見は、あなたの経験に当てはめて聴かないことです。いま、多くの企業で実施されている、1on1は、このスキルがないと大変危険なことといえます。上司は時間をつかって、部下の意見を聴いていますが、その背景まで含めてきかなければ聞いていることにはなりません。逆に背景まで聞けるようになると、部下を理解できます。このスキルがない上司との1on1は、時間の無駄といえるでしょう。スキルの開発がなく、お互いにイマジネーションで聞いていて、聞いても理解できないけど、努力しなくては、と見当はずれな時間の使い方をしているのは実に残念でストレスフルな状況だとしかいえません。

 

■清宮追加コメント

1オン1のスキル開発においても、頭でわかるだけでなく実践力をつけることが重要だと思います。対話のスキル向上も実践的に学ぶ、体験的に対話を理解することが重要です。例えば、質問会議では、自分の意見をもちつつ、相手を理解する質問が奨励されたり、その効果を体感することが、対話力向上の役にたちます。

 

OSのアップデート

まず、個人のOSがアップデートされることで、その次にチーム・組織のアップデートがされます。自立型個人を増やすことが、自律型組織につながり、それが学習する組織をつくることにつながるのです。いわゆる昨今いわれている、進化型組織やティール組織というフォームも、この個人のアップデートがあり、組織がアップデートされた姿といえるかもしれません。いま、ビジネスモデルの変化があります、ある意味アップデートされたビジネスモデルをもつ組織は、アップデートされた組織構造をもち、またアップデートされた個人が存在すると言い換えることもできます。変化の激しい時代に生きる私たちは、組織も個人も学習力を最大化するOSのアップデートが必要です。個も組織もWell-Beingであるためにはこのような力が必要なのです。変化の激しい時代、自ら思考し行動すること。逆に、なんでも鵜呑みにしてしまう行動様式は、well-Being(幸せ)になれないと思います。

 

学習する組織とOS21

OS21は、学習する組織を実現するためのベースとなる力です。「学習する組織」とは、起こりうる最良の未来を実現するために、能力と気づく(学ぶ)力を高めつづけることができる組織です。ひとつの事例として、アメリカのNPOティーチフォーアメリカをあげます。この組織の設立者、ウエンディ・コップは、アイビーリーグを卒業した優秀な学生を2年間学校に派遣する事業を開始しました。ところが、優秀な人材を採用しても、成果を出す先生と、うまく機能できない先生がいることに気づき、その違いを見つけるために、観察とリフレクションを繰り返したそうです。

その結果をまとめたのがTeaching as Leadership というガイドラインです。それは、以下の6つのフレームワークからなります。

【6つのフレームワーク】

  • 大きな目標をたてる
  • 生徒と家族を本気で取り組ませる
  • 目的をもって行動する
  • 効果的に行動する
  • 効果を追求し続ける
  • 弛まぬ努力をする

 

ここでは、その内容もさることながら、個人学習をチーム学習に転嫁し、それを組織学習としてサイクルを回し続けているそのシステムが、学習する組織そのものだといえます。また、日本で立ち上げから支援している Teach for Japan から、スピンオフした子供たちへの学習支援をしているLearning for Allもまた、行動とリフレクションを個人と組織で回し続ける学習する組織になっています。これらの例からもわかるように、学習する組織になるためには、私たちのOSをより学習力をあげるものにアップデートする必用があるのです。

 

 

 

スピーカープロフィール

熊平 美香(くまひら みか)

  • 一般財団法人クマヒラセキュリティ財団 代表理事
  • 一般社団法人21世紀学び研究所 代表理事
  • 株式会社エイテッククマヒラ 代表取締役
  • 昭和女子大学ダイバーシティ推進機構キャリアカレッジ 学院長
  • 経済産業省未来の教室とEdTech研究会委員
  • ハーバードビジネススクール・グローバルアドバイザリーボード メンバー
  • アショカジャパン アドバイザー
  • Learning for All 理事

ハーバード大学経営大学院でMBAを取得後、金融機関金庫設備の熊平製作所・取締役経営企画室長などを務めたのち、日本マクドナルド創業者・藤田田に弟子入りし、新規事業立ち上げや人材教育の事業に携わる。 独立し、株式会社エイテッククマヒラを設立。GEの「学習する組織」のリーダー養成プログラム開発者と協働し、学習する組織論に基づくリーダーシップ、チームビルディング、組織開発を軸にコンサルティング活動を開始。

昭和女子大学ダイバーシティ推進機構キャリアカレッジでは、会員企業40社の女性活躍推進、働き方改革の支援を行う。クマヒラセキュリティ財団 代表理事、Learning for All 理事、未来教育会議代表なども務め、教育改革の促進、社会起業家の育成、教育格差是正など幅広い分野で活動。2015年、株式会社ライフルと共働し21世紀学び研究所を設立し、企業と共にニッポンの「学ぶ力」を育てる取り組みを開始。同研究所では、経済産業省が2018年に改定した社会人基礎力の中に、リフレクションを盛り込む提案を行った。

文部科学省国立大学法人評価委員会委員、経済産業省未来の教室とEdTech研究会委員、放送大学学園評価委員会委員、青山ビジネススクール評議委員会委員、ハーバード・ビジネススクール・グローバルアドバイザリーボード メンバー等を務める。

 

清宮 普美代(せいみや ふみよ)

  • 日本アクションラーニング協会 代表
  • WIAL公認マスターALコーチ
  • 株式会社ラーニングデザインセンター代表
  • 株式会社YBT 代表
  • ODネットワークジャパン 理事

東京女子大学文理学部心理学科卒業後、株式会社毎日コミュニケーションズ入社(現:株式会社マイナビ)。Web就職情報などの新規事業の立ち上げや新雑誌創刊と社内システム構築など数々のプロジェクトに責任者として携わる。15年の勤務を経て、渡米。ジョージワシントン大学大学院にて、経営課題を共有化し解決しながら、リーダーと自律型チームを育成する開発手法「アクションラーニング」と出会い、研究を進め、人材開発修士号を取得。
2001年に帰国後、外資系金融機関にて人事責任者、社長室長を経て、2003 年4月に株式会社ラーニングデザインセンターを設立。2007年には国内唯一のアクションラーニング(AL) コーチ認定機関、NPO法人日本アクションラーニング協会を設立。代表を務める。2013 年1 月現在まで、約450 名のALコーチを輩出している。企業導入としては50社を超える導入実績がある。
現在は、AL コーチ、シニアAL コーチの育成や企業導入に対するコンサルティング、講師、講演など多数で活躍。2010年1月、全世界で9人しかいない、日本人としては初めての世界アクションラーニング機構(WIAL) 認定マスターアクションラーニングコーチに就任。翻訳著書に『実践アクションラーニング入門』(2004年 ダイヤモンド社) マイケルJ・マーコード著。著書に『質問会議』(2008年 PHP出版)『チーム脳のつくり方』(2009年 WAVE出版)『対話流』(2009年 三省堂)『20代で身につけたい質問力』(2011年 中経出版)などがある。