プレッシャーの強い現場で人をすり減らさない アドバンス講座
プレッシャーの強い現場で人をすり減らさないためのアクションラーニング
目次
― Connection / Healing / Purpose の視点から ―
2026年1月21日、日本アクションラーニング協会公認アドバンス講座として、「プレッシャーの強い現場で人をすり減らさないためのアクションラーニング」をテーマに、オンライン講座が開催されました。
本講座は、2025年12月に WIAL 創設者 マイケル・マーコード博士が世界同時ライブ配信で行った講演「Connection, Healing, and Purpose」 を受けて企画された、日本語によるフォローアップおよび実装編です。
82歳とは思えないエネルギーで語られたマーコード博士のメッセージは、成果や効率が強く求められる現代の職場において、アクションラーニング(AL)が人と人を再びつなぎ、傷つきを学びへと変え、働く意味を取り戻す力を持つことを、強く印象づけるものでした。
本アドバンス講座では、そのメッセージを単なる「良い話」で終わらせるのではなく、日本の企業・学校・医療・行政といった現場で、ALコーチとして何ができるのかという問いに引き寄せながら、参加者が一体となって、2時間にわたって深く掘り下げていきました。

「プレッシャーの強い現場」とは何が起きているのか
講座の前半では、マーコード博士の講演内容を振り返りながら、「プレッシャーの強い現場」で起きている状態を、次の3つの視点で整理しました。
- Chaos(混乱) 孤立が進み、全体像が見えず、人々がバラバラに動いている状態
- Harm(消耗・傷つき) 業務や人間関係が、人のエネルギーや意欲を削っていく状態
- Pressure(過剰なプレッシャー) 成果への圧力が、仕事の意味や目的を見失わせている状態
これらは個人の弱さの問題ではなく、組織の構造や文化の問題であるという点が、マーコード博士の重要なメッセージとして共有されました。

Connection:問題を共有することで、人はつながる
アクションラーニングは、なぜ短時間で強いつながりを生むのか。その鍵として示されたのが、「切実で重要な問題を共有する」という行為です。
- 問題を差し出すことは、「信頼」のメッセージになる
- グループ全体に向けた問いが、立場や役職の壁を溶かす
- 4〜8人の小グループが、深い対話と関係性を生む
参加者同士のミニ対話では、「問題は共有されているのか、それとも投下されているだけなのか」「助けを求めることが、現場で許されているか」といった問いを通じて、自身の現場を見つめ直す時間が持たれました。
Healing:人を傷つけない文化は、どうつくられるのか
Connection によって人が「つながる」だけでは、プレッシャーの強い現場は変わりません。そのつながりが、人を消耗させない形で保たれ、回復につながっていくことが不可欠です。
中盤では、「Healing(回復)」の視点から、ALの文化的な力に焦点が当てられました。
マーコード博士の言葉
“When you listen carefully and ask a question based on what you are hearing, it is so close to being loved that one cannot tell the difference.”
(注意深く聴き、そこで受け取ったものに基づいて問いを立てることは、愛されている感覚と区別がつかないほど近い)

この言葉は、参加者の心に強く残ったようで、事後アンケートには、
- 「質問は癒し」
- 「問いは愛である」
- 「『愛されている感覚』に最も近い、という表現が深く刺さった」
といったコメントが複数寄せられました。
講座では、このメッセージを感動的なフレーズとして受け取るのではなく、なぜアクションラーニングの場では、人が傷つきにくくなるのかを、実践の文脈で丁寧に解きほぐしていきました。
鍵として示されたのが、評価や助言を控え、「問い」を中心に関わるという ALのグラウンド規範です。
そしてまた、組織のリアルとして、人を支援しようとする関わりそのものが、無意識に人を消耗させている可能性に言及しました。
一方で、問いを中心にした関わりは、
- 相手を評価せず、まず理解しようとする姿勢をつくる
- 「教える側/教えられる側」という関係から自由になる
- 誰もが安心して思考を続けられる空気を生む
という点で、結果として Healing(回復)を生み出す文化を育てていくことが説明されました。
事後アンケートでも、
- 「アクションラーニングの場は人を傷つけない、という言葉が腑に落ちた」
- 「自分の関わりが、知らず知らず探求を止めていたかもしれないと気づいた」
- 「問いが人を回復させる、という感覚を初めて言語化できた」
といった声が見られ、Healing を「理解した概念」ではなく、自分自身の関わり方として引き寄せて捉え直す時間となったことがうかがえました。
Healing から Purpose へ:回復が「意味」につながるとき
講座ではさらに、Healing はそれ自体がゴールではなく、Purpose(意味・目的)へとつながっていくプロセスの一部であることが示されました。
人が傷つかず、安心して問いを持ち続けられる場があって初めて、
- 重要な問題に関わっているという実感
- 自分の仕事が、誰かや組織の未来につながっている感覚
- プレッシャーを「意味のある挑戦」として捉え直す視点
が立ち上がってくるからです。
この流れを踏まえ、後半では Purpose の視点から、プレッシャーの構造とアクションラーニングの関係が整理されていきました。
Purpose:プレッシャーを「意味」に変える
後半では、Purpose(目的・意味)を理念ではなく「関わっている感覚」として捉え直しました。
- 重要な問題を託されること自体が Purpose になる
- 良い問いを立てた瞬間、人はリーダーになる
- 学びと成長が、プレッシャーを「意味ある挑戦」に変える
アクションラーニングが、問題、チーム、質問、行動、学習、そしてALコーチの6つの構成要素を通じて、どのように Purpose を取り戻させるのかが、具体的に示されました。

実際の講座で起きていたこと:答えではなく「揺らぎ」を持ち帰る場
本講座では、マーコード博士のメッセージを手がかりに、参加者一人ひとりが、自分の現場やAL実践を問い直す時間が大切にされました。
本講座は「すぐに使えるノウハウ」を提供する場ではなく、実践を揺さぶり、問いを持ち帰るための場として機能していたことを示しています。
繰り返されるフレーズ、「アクションラーニングは、手法ではなく文化である」という言葉どおり、本講座はその文化を思い出し、再確認し、次につなげるための2時間となりました。
プレッシャーの強い現場は、なくすことはできません。しかし、問いと対話と場づくりのデザインによって、それを「人をすり減らす場」にするのか、「しなやかに成長できる場」にするのかは、確かに変えていくことができます。


