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日本アクションラーニング協会情報

『世界最高の質問術』発刊記念特別アドバンス講座 開催報告

2025年9月13日、新潮社と日本アクションラーニング協会の連携企画として、『世界最高の質問術』(新潮社)発刊を記念した特別アドバンス講座をオンラインで開催いたしました。本講座は、同書のエッセンスを踏まえつつ、教育学や心理学の先行研究、そして実践的なワークを交えて「問いの力」を深く探究する内容で構成されました。
参加者は企業人事、経営層、大学教育関係者、コーチ、社会保険労務士など多様な業界から集まり、それぞれの立場から「問い」の可能性を共有する貴重な場となりました。


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4つの問いとの対話

冒頭で清宮代表より、「本講座は書籍の理解を超え、参加者自身の問いのパターンを可視化し、問いが組織やリーダーシップに与える影響を考えることを目的としています」との説明がありました。
具体的には、書籍内容で語られる、以下の4つの問いを出発点とし、対話と実践を通じて学びを深めました。

  • なぜ優れたリーダーは問い続けるのか
  • なぜ多くのリーダーは問いを避けてしまうのか
  • 問いはどうやって組織文化を変えるのか
  • よい問いと悪い問いの違いは何か

これらの問いは、マーコード博士のこの度の著書『(英タイトル)Leading with Questions』でも中心的に扱われており、アドバンス講座ではさらに最新の知見や実践ワークを加え、理解を立体的にすることを目指しました。

参加者全員での討議を通じて、参加者は各問いに自らの考えを重ねました。

  • 「なぜ優れたリーダーは問い続けるのか」
    リーダーは答えを出す人ではなく、ゴールや視点を設定する存在であり、問い続けることで自己省察を促し、他者の当事者意識を引き出します。
  • 「なぜ多くのリーダーは問いを避けてしまうのか」
    答えを持つべきという思い込みや、質問が権威を脅かすという心理的要因が障壁になります。参加者からは「時間に追われる管理職が深い問いを避けがち」という実務的な指摘もありました。
  • 「問いはどう組織文化を変えるのか」
    問いが共有されると責任も共有され、「あなた vs 私」ではなく「私たち」の文化が生まれます。これにより学習する組織が形成されます。
  • 「よい問いと悪い問いの違いは」
    よい問いは相手をエンパワーし、新たな視点を生みます。一方、悪い問いは非難や操作につながります。

こうした対話を通じて、問いはリーダーシップの本質であると同時に、組織文化そのものを変革する力を持つことが確認されました。

ブルームのタクソノミーによる質問分析

教育学で広く知られる「ブルームのタクソノミー」を用いて、参加者は自分の日常的な質問を「記憶・理解・応用・分析・評価・創造」という認知プロセスの段階に分類しました。「普段自分がどの階層の問いを多く発しているのか」に気づくことで、質問の幅を広げる契機となりました。教育学の基礎研究に立ち返り、「記憶」「理解」といった低次の質問に偏りがちな現場の実態が示されました。これにより、上位の「分析」「評価」「創造」レベルの問いを意識的に設計することの重要性が浮き彫りにされました。

ソクラテス問答と生成AIの活用

古典的な「ソクラテス問答法」と現代的な生成AIを組み合わせ、自己対話や内省のツールとして問いを活用する方法を紹介しました。
「ChatGPTとの壁打ちが、まさに現代のソクラテス問答である」との意見もあり、伝統とテクノロジーをつなぐ新しい実践可能性が示されました。

さらに、Mary Budd Roweによる「Wait Time研究」(1970年代)では、教師が質問後に3秒以上待つことで、生徒の回答が長くなり、推論や仮説が増え、上位思考が活性化することが実証されたことが紹介されました。沈黙の効用を認めることが学習を深める鍵となる点は、現代の組織マネジメントにも通じる示唆として受け止められました。

また、IRFパターン(Initiation-Response-Feedback)に関する研究では、熟練教師と初任教師で質問や応答処理の仕方に大きな差があることが示されました。熟練者は対話を「秩序維持の手段」にとどめず、「学習を深める契機」として活用しているという知見は、ALコーチの熟達化にも重ねて考えることができました。

心理学の分野からは、自己調整学習(Self-Regulated Learning)研究が紹介されました。Zimmermanらの調査によれば、「私は本当に理解したのか?」と自問するようなメタ認知的質問を活用する学生は、成績や課題達成率が20〜30%高いことが示されています。問いは自己モニタリングと動機づけを支える力を持つことが強調されました。

アクションリフレクションラーニングの応用

参加者でもある、小林理事からは、アクションラーニングの別の流派でもある「アクション・リフレクション・ラーニング」の実践紹介がありました。行動と省察を往還させるこの手法は、リーダーシップ教育においても強力な枠組みとなり、参加者に新たな示唆を与えました。批判的省察や変容学習の視点から「問い」をどう扱うかが議論されました。こうした学術的背景が、実務者が日常に活かせる実践知へと橋渡しされていたことが、本講座の特徴的な価値でした。

このように、講座では教育学、心理学、組織開発の先行研究や事例が織り交ぜられ、「問い」をめぐる実践と理論が一体的に扱われました。

参加者の声

  • 「あっという間でしたが、すごく充実した時間でした」
  • 「予定調和的でなく、参加者の発言で柔軟に進行していただき感謝します」
  • 「頭の中が整理され、感情に引っ張られず最善の行動をとる重要性を再認識しました」
  • 「ブルームのタクソノミーの解釈はすぐに職場で共有したい」
  • 「ソクラテス問答は、個人の内省やChat-GPTとの対話に活用できそうです」
  • 「問いのバリエーションが掴めました」
  • 「教育や組織文化を“思考する人を育む組織”へと変えたい。そのヒントが多くありました」

コメントからは、講座が単なる知識提供にとどまらず、各自の実務や組織課題に直結する学びとなったことが伝わってきます。

まとめ ― 問いが拓く未来

今回のアドバンス講座は、『世界最高の質問術』を起点としながら、教育学・心理学・組織開発の理論と実践を結び付ける試みとなりました。参加者は自身の問いを省察し、組織に問いを根づかせるヒントを得ることができました。
変化の激しい時代において、答えよりも問いを持ち続けることがリーダーに求められています。問いはリーダーを育て、組織文化を変革し、未来を拓く力を持っています。参加者の感想からは、今回の学びが、参加者の現場で新たな実践につながっていく契機となることがうかがわれました。

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