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日本アクションラーニング協会情報

学習の「質」とは?~学習にはどのような構造化が必要か~①

Learning Base 02 #01  U理論でひもとく、アクションラーニング

U理論×アクションラーニング

「学び」を深め、アクションラーニングとは何か?を問う、Learning Base 第二回目は、オーセンティックワークス株式会社代表取締役 中土井 僚さんと、NPO法人日本アクションラーニング協会 代表 清宮 普美代の対談を三回にわけて、ご紹介します。

コーチングとアクションラーニングの違い 

私のキャリアを振り返って、経営者向けのコーチをおこなうので、独立した直後に、アクションラーニングとU理論に出会っています。2005年6月に独立し、その年の9月か10月にU理論にであっていますが、たしかその前に、清宮さんと会って、アクションラーニングを学びはじめた記憶があります。

今でも覚えてるんですけど、アクションラーニングもコーチング同じように問い掛けをしますが、コーチングは内面の中でのその人の中での気づきが生まれていくのに対して、マーコード式アクションラーニングは、一つの問題を通して、いろんな問いかけをされていくことで、グループに共通認識が生まれていくっていうところに、非常に、可能性を感じましたね。個人が単純に何かに気づくとかで、モチベーションが高まるという話であれば、一対一の方が効果的かもしれない。しかし、アクションラーニングでは、組織課題について合意形成が進んでいき、一つの問題に対してみんなが関わり合っていくことになります。そこで、合意形成が生まれ、そこにコミットメントが生まれるのを見た時に、ああ これは個人のコーチングとは全く違う価値が生まれるなって思って、非常に興味を持ちました。

重要かつ緊急な問題を扱うステップ

その後何年かして、すごく理解したのは「重要かつ緊急な問題」を取り扱うという、アクションラーニングが非常に本質をついてるなと思い至りました。問題ってみんなにとってみると、厄介な事ものにみえるんだけど、実は問題って、ものすごく人を接着させる力がある、ひとのつながりを取り戻せる力がある。実は311の時にとても感じましたが、ひとは壊滅的な状況になったときに、絆だったり、貢献意欲が高まる―――というのは、問題によって、人としてのつながりをとりもどしたり、貢献意欲をたかめたりするのだと思いました。そして、その問題を適切に扱うステップが、アクションラーニングにうまくデザインされていると思っています。「ルールの確認」「問題の提示」「問題の明確化」「問題の再定義」「行動計画」「振り返り」というステップですが、私はこの枠組み自体をアクションラーニングのセッションだけではなくて組織開発のファシリテーターとしても活用しています。組織開発のファシリテーションするときにもこの順番で結構やってるんですよね。とくに、この再定義というプロセスがどういうものかをいかに体験できるから結構重要だなと思います。

■清宮コメント
再定義は、問題にメンバーが同意しなくてもいい。問題に同意することが目的ではないということが、なかなか理解できないポイントだったりします。その場で行われるのは、それぞれが問題をどういう風に見えてるのかを相互に理解しあうというプロセスです。問題そのものをみんなで見る中で、光が当たる方向によって見え方が違っていることをそれぞれが認識するという感じ。だから、ここが問題です。みんなが見えて重なっている、問題がどこか、ということを明確にしたいわけではありません。
この人こう見えている、この人この人もこう見えている。自分はどう思うっていうことを確認しているフェーズといえます。

アクションラーニングはダブルループ学習を誘発する

この再定義のプロセスが、AHA体験というか「ダブルループ学習」誘発していると思っているんです。人材開発、組織開発プログラムをおこなうなかで、私自身がすごく大事にしてるのは、ダブルループ学習の重要性っていうことを組織の中で常識化していくってことに、結構注力してるんです。企業の中で、変革が必要だとか、イノベーションが必要だとかって、環境変化への適応が必要だっていう風に言ってるんだけども、それは本質的にどういうことなのかということに対して、皆あまり考えてない。それがどういうことなのかっていうと、新しい常識を作り出すということだと思んです。その新しい常識が共通言語になっていくためには、共通体験、共通理解することを丁寧に行っていく必要がある。その時の共通言語をダブルループ学習に置いています。結果から行動を見つめ直すのがシングルループ学習に対して、ものごとに適切に取り組んでいるかっていう観点になるのが、ダブルループ学習であるといえます。行動→結果となっている、その行動の前提にある、メンタルモデル自体を見直すのがダブルループ学習です。ダブルループ学習は適切な物事に取り組んでいるかどういうことを振り返るんですね。そして、それがまさにアクションラーニングで振り返ることができる部分です。自分が見ていた視点っていうのは、本当に自分のメンタルモデルにものすごく縛られてたんだっていう風に気付かれるケースが多いなぁと思っています。アクションラーニングのセッション(=質問会議)を行った後で、「結局自分の思い込みだったんだなって気がつきました」とか、「このやり方をやってるからうまくいかなかったんだなっていうことがわかりました」、というようにおっしゃった時に、それがまさにダブルループ学習ですよ、とお伝えします。そして、それと同じような事が部下に起こるように支援するのがマネージャーの役割なんです、という話をします。みんな結局、今までの自分のマネージメントも、自分がしてもらったマネージメントも、指示命令を下して進捗管理するっていう風にしか行ってもらったことがないので、支援型だとかサーバントリーダーシップだとかいろんな概念が実はよくわかっていない。マネージメントの実際の違いが、全く分かってないわけです。指示命令をして進捗管理するという前提がずっと続いているわけです。

すごく大きな誤解があるなと思うのは、マネージャーであるその人は部下の通ってきた道を自分は通っているので、いつのまにか経験があるし、答えがあると思い込んでいるんです。なので、指示命令で進捗管理するっていう考え方がなりたつのですが、実はあなたは現場の問題を解く答えを持ち合わせていないんだということに気づいていないんです。

■清宮コメント
経験学習というように、学びのなかでは、経験のもつ力がとても強いゆえに、アンラーニング(学習棄却)というか、手放す力が、現代のマネージャーに必要とされていますよね。

自分が自身がダブルループ学習をするという体験がわからないと、それを部下のなかにそれを引き起こ出さない限り、本当に答えは生み出されないんだということに気づけない。

■清宮コメント
ダブルループ学習というのは、ある意味メタ認知ができるか、どうかを示しているということでもあります。その認知というか、認識ができると、問題解決そのものに対して、問題も解決しやすくなるし、もっと言うと認識力がレベルアップしていくことが、成人の発達だとも思えます。その力を向上させていけるのが、アクションラーニングの効果でもあります。

体験によって感想がうまれるのはいいのですが、そこに対して適切な意味付けがあるかどうかが非常に大きいですね。アクションラーニングでいっている、大人は体験からしか学ばないという学習の原則は、ほんとそうだなと思います。自分の問題解決につながらない概念は何の役にも立たないとみなされやすいです。そのため、私は日本でいろんな形でU理論をご紹介させて頂いてましたけども、企業の現場では、U理論をほぼしゃべったことがありませんね。問題解決に直結する部分だけ伝えられるように工夫をし続けました。U理論は、場の深まりとか、イノベーションに興味のある人は好きなんですが、今の目の前の問題解決をしようとしている、それこそ部下のモチベーションが下がってるだの、言った通りに動かないだの、報連相ができない、っていう風に言ってる人からすると、関係ないように見えちゃうっていうことなんです。

U理論でアクションラーニングのプロセスを紐解く

U理論に関してすごくシンプルに言うと、オットー・シャーマー博士が、人の意識の状態が四つあるといっています。(Feiled stracture of attention)要は、アテンション、意識の矛先がどこに注意がむいているかによって分けられます。
レベル1は、ダウンローディング(反応的処理) 過去の枠組みに注意が向いている。レベル2は、シーイング(観る) 目の前のことに集中してる。レベル3がセンシング(感じ取る)であり、それこそ枠組みが変わって見え方が変わるという感じです。最後に、レベル4 プレゼンシング(生成的)が、グルーヴみたいな一体感やインスピレーションが湧く状態だと言えます。

アクションラーニングのもっている枠組みが、Uプロセスを誘発し、話し合いの質をあげていく

多くの場合のほとんどのミーティングって声が大きい人だけがしゃべっているとか、いつも通りの帳尻あわせるだけの時間になっちゃうとか、進捗ミーティングで関係する人しか喋らないみたいなのって、ダウンローディングだったりするケースが多いわけです。それに対して、アクションラーニングのセッション(=質問会議)は、個人が抱えている重要かつ緊急な問題を扱うっていうことと、質問しかできないという縛りをすると、強力に目の前のことに集中する状態になりやすい。つまり、レベル2の状態をキープしやすくなるんです。提示される議題は、問題提示者が今、まさに直面している生々しい問題なので、他の人も雑に扱わないし、質問をしないといけないと思ってるので、内容をちゃんと理解しようと集中します。この2つの構造だけで、レベル1から2に入りやすいというのは、すごいなと思います。

また、問題の再定義が深くできて、見えるものが変わっていく状態は、それこそレベル3に入ってるんだろうなと思うんですよね。本当にたまにしか起きないんですけど、レベル4になる時ももちろんあります。その状態は問題提示者が、最初は他の人が質問を受けているって状態において、打ち返すように後ディフェンシブに答えただけの状態から、問題の再定義に入ってから、同意が得られないという状況に直面することになります。その状態になって初めて、自分に矢印がむくようになり、自分の弱さをさらけ出した瞬間、それこそ自分を明け渡すような状態になった時に、ぐっと場が小さくなる瞬間があるんです。それがレベル4ではないかと思います。アクションラーニングは構造的にUプロセスをくぐりやすくなっているということはあると思います。

 

Learning Base 全体プログラムはこちら https://peraichi.com/landing_pages/view/learningbase2020

スピーカープロフィール

中土井 僚

  • オーセンティックワークス株式会社代表取締役
  • 株式会社ミライバ 取締役
  • 社団法人プレゼンシング・インスティチュート・コミュニティジャパン理事
  • 特定非営利活動法人日本紛争予防センター理事

リーダーシッププロデューサー。「自分らしさとリーダーシップの統合と共創造(コ・クリエーション)の実現」をテーマに、マインドセット変革に主眼を置いたリーダーシップ開発及び組織開発支援を行う。
コーチング、グループファシリテーション、ワークショップリードなどの個人・チーム・組織の変容の手法を組み合わせ、経営者の意思決定支援、経営チームの一枚岩化、理念浸透、部門間対立の解消、新規事業の立上げなど人と組織にまつわる多種多様なテーマを手掛ける。
過去に携わったプロジェクトは、食品メーカーの理念再構築、業績低迷と風土悪化の悪循環が続いていた化粧品メーカーのV字回復、製造と販売が対立していた衣類メーカーの納期短縮など100社以上に及ぶ。
アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)とその他2社を経て独立。2005年よりマサチューセッツ工科大学上級講師であるオットー・シャーマー博士の提唱するU理論における啓蒙と実績に携わり、現在に至る。
著書に「U理論入門」、「マンガでやさしくわかるU理論」、「U理論の基本と実践がよ~くわかる本」、共訳書に「U理論」、「出現する未来から導く」、監訳に「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか」などがある。

 

清宮 普美代(せいみや ふみよ)

  • 日本アクションラーニング協会 代表
  • WIAL公認マスターALコーチ
  • 株式会社ラーニングデザインセンター代表
  • 株式会社YBT 代表
  • ODネットワークジャパン 理事

東京女子大学文理学部心理学科卒業後、株式会社毎日コミュニケーションズ入社(現:株式会社マイナビ)。Web就職情報などの新規事業の立ち上げや新雑誌創刊と社内システム構築など数々のプロジェクトに責任者として携わる。15年の勤務を経て、渡米。ジョージワシントン大学大学院にて、経営課題を共有化し解決しながら、リーダーと自律型チームを育成する開発手法「アクションラーニング」と出会い、研究を進め、人材開発修士号を取得。
2001年に帰国後、外資系金融機関にて人事責任者、社長室長を経て、2003 年4月に株式会社ラーニングデザインセンターを設立。2007年には国内唯一のアクションラーニング(AL) コーチ認定機関、NPO法人日本アクションラーニング協会を設立。代表を務める。2013 年1 月現在まで、約450 名のALコーチを輩出している。企業導入としては50社を超える導入実績がある。
現在は、AL コーチ、シニアAL コーチの育成や企業導入に対するコンサルティング、講師、講演など多数で活躍。2010年1月、全世界で9人しかいない、日本人としては初めての世界アクションラーニング機構(WIAL) 認定マスターアクションラーニングコーチに就任。翻訳著書に『実践アクションラーニング入門』(2004年 ダイヤモンド社) マイケルJ・マーコード著。著書に『質問会議』(2008年 PHP出版)『チーム脳のつくり方』(2009年 WAVE出版)『対話流』(2009年 三省堂)『20代で身につけたい質問力』(2011年 中経出版)などがある。