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日本アクションラーニング協会情報

夢と感動を創造する、人を惹きつける話し方


Learning Base 2023「大人の教養シリーズ」がスタート!
第4弾は元劇団四季主演の人材育成トレーナー、佐藤政樹さんをお迎えし、最新著書『人を「惹きつける」話し方』の内容を中心に、夢と感動を創造する人を惹きつける話し方についてたっぷりとお話しいただきました。

ゲスト
佐藤政樹

1975年、静岡県浜松生まれ。明治大学理工学部卒業後、フリーターを経て、2002年国家資格である気象予報士に合格。また同年、劇団四季に入団し、その後、俳優として「ライオンキング」「ジーザスクライストスーパースター」等に出演する。その後「人間になりたがった猫」では主役のライオネルを務めるなど、年間200〜250回の舞台をこなし、10年間で約2,000回以上の舞台を経験する。
劇団四季を退団後は、講演家として独立し、「夢を仕事に!」をテーマに全国の教育機関や学校での講演を行う。また、企業向けには多くの人の前でのパフォーンス経験を通して体得した「感動を創造する言葉の伝え方」や「プロのための話し方」「相手に伝わる深いコミュニケーション」と言ったテーマで講演・研修を行っている。人前で話すことの多い経営者やプロの講演家からの定評が高く、講演満足度は98%を超える。

《講演実績》
産経新聞、東邦銀行、RIZAP、小糸製作所、フコク生命、JA共済、日本テレビ放送網、教育庁、東京理科大、明治大学など

《著書》
人を「惹きつける」話し方―口下手でも人見知りでもあがり症でも人生が変わる
(2023年3月、プレジデント出版)

 

佐藤さんが劇団四季に入り、主役を務めるまで

講演は佐藤さんの半生の紹介からスタート。就職超氷河期で就職活動で人生につまずき、「とにかく甘くて自分に起こる問題は何でも人や社会のせいにしていた」と語るフリーター時代。劇団四季の舞台を見て感動し、自信のない自分から変わることを決意し、クラシックバレエの初心者クラスに通うことから始め、そこから佐藤さんはコツコツ成長を重ねて5年、ついに劇団四季に合格し、10年間の劇団四季での役者生活を送ることとなる軌跡に、どんどん引き込まれていきました。

「入団8年目のとき、『人間になりたがった猫』という劇団四季がとても大事にしているオリジナルミュージカルで主役のライオネル役を務めました。主役を務めたのは1ヶ月でしたが、これは10年分に相当するような、ものすごく貴重な経験でした。

劇団四季創設者の浅利慶太さんによるマンツーマン指導の中で、「なぜお客さまが感動するのか」といった、プロの心構えや本質の部分を徹底的に学んだそうです。そして劇団四季が長年「感動を届け続ける」のは絶対的な理由があると語ります。

今回の講演では、その絶対的な理由について「発声は発想」「頭・胸・肚」「第ゼロ幕」というキーワードとともに紹介してくださいました。

劇団四季で習った「発声は発想」と「頭・胸・肚の言葉」

「発声は発想」とは「声を発するからには、その奥には想いが発している」ということです。

覚えたセリフを頭の中で唱えて発しただけの「頭の言葉」では、棒読みのようになってしまいます。やはり頭の言葉は、相手に響く可能性が低く、劇団四季では暗記したセリフを唱えると「今の言葉は唱えているよ」と、即フィードバックが入ります。

次に美味しいということを伝えたい気持ちばかりが先走って、意識が上擦っているときに発される「胸の言葉」。私たちは感情や気持ちを込めれば伝わると思っていますが、相手はそうは受け止めていないことの方が多いです。だから劇団四季には、「言葉に感情を込めるな」という鉄の掟がありました。

最後に「肚(はら)の言葉」。伝わる言葉の答えは「肚の言葉」です。日本人は「腹をくくる」「腹を割って話す」のように、気持ちの深い部分を表すときに「はら」を大事にしてきた文化があり、劇団四季に入っても最初に身につけるのは、お客さまが1,000人いようが2,000人いようが、全くぶれない呼吸法です。

佐藤さんはその意味を「このお茶、本当に美味しいです」というセリフで実演。頭で唱えた棒読みの「おいしー」や、胸に神経が高ぶって演じすぎた「おいしい!!」では伝わらず、心からの実感を伴って肚から出てきた「このお茶、本当においしいです…」こそが伝わるということを、参加者も実感し目から鱗でした。

 

言葉の劣化を防ぐ「実感して語る」という指針

演劇の世界は、例えば「おいしい」という言葉が劇中にセリフとして出てきたら、1,000回中1,000回とも「おいしい」という言葉を観客全員に伝わるクオリティで再現しなきゃいけない世界です。私たちは言葉を繰り返しますが、気付かないうちに言葉は劣化していくと、佐藤さんは言います。

自分では肚から言えているつもりでも、言葉が上ずっていくので、(上画像の)青い線から下をしっかりとキープするのがプロの仕事です。そして青線から下をキープするために、劇団四季では「実感して語る」ことを全員の指針にしています。『実感して語る』コツは「いかに嘘を消せるかだよ」と劇団四季で習いました。上手くやろうとかよく見せようとか、嘘を消して素の姿を見たとき、人は感動するんですよ。

 

「ゼロ幕」で「なぜその場にいるのか?」を問う

例えば20年もロングランをしている『ライオンキング』では、年間200ステージから250ステージもありますが、毎回感動を届けられます。その背景には、劇団四季ではお客さまの前に一歩踏み出す前に「私は何のためにここにいて、なぜ一歩踏み出すのか」を自分に問いかけてから一歩踏み出すという文化があると言います。

劇団四季の『ライオンキング』の感動ポイントを聞くと、主役の人の歌がうまかったとか、舞台装置がすごかったとか色々ありますが、実は草とか木とかサボテンとか、誰も見ちゃいないような端っこ役の人が一切手を抜いていない役を生きて輝いていたというのが、一番多いんですね。劇団四季には、草だろうが木だろうがサボテンだろうが、「私はなぜここにいて、なぜ一歩を踏み出すのか」を必ず自分に問いかけて、マインドセット、意義づけ・意味づけをしてから一歩を踏み出すというカルチャーがあるからなんです。

私たちが会議やセッションに入る前に、「何のために自分はここにいて、なぜ一歩踏み出すのか」というマインドセットや意義づけができているかどうかで、発言や集中力も変わってきます。仕事では「間違えたらどうしよう」「失敗したらどうしよう」という内向き思考になっちゃうこともありますが、「人の役に立つ」「問題を解決する」「希望とか勇気を引き出す」とか、外向き思考に持っていくことができるのが、「ゼロ幕」だと、佐藤さんは力説されました。

 

アクションラーニングで起こる「肚」への掘り下げ

佐藤さんは認定アクションラーニングコーチでもあります。アクションラーニングなどで質問することは、その人の意識を頭からから肚に掘り下げることだと語ります。

 

「質問する」「傾聴する」とは、胸から肚に掘り下げることです。胸と肚の間が水道管のようになっているのをイメージすると、多くの人の水道管の中は、本心を言えないことで土や砂が詰まっているような状態になっていると思います。

これをアクションラーニングでは、みんなで質問して問題を掘り下げ、胸と肚の水道管を掘っているなと思います。そして掘っていくと、胸と肚の間がパーンって割れるんですね。すると胸と肚が直結して、本人の中にある答えや本当の思い、本当の問題、気づいてなかった問題が、「確かに!」と納得感とともに溢れ出てきます。

アクションラーニングで目指す問題解決は、「問題の本質」を発見することから始まります。アクション(問題解決)とラーニング(学習)を往復するので、問題の発見はとても大切です。表面的な情報を問うだけでは満足度の低いセッションになることが多いですが、感情や価値観を含んだ問題提示者の「肚」からの言葉が場に出されると、チームのコミットメントが高まります。佐藤さんのお話は、アクションラーニング経験のある参加者の方々に、納得感を持って受け止められました。

逆に「肚」の部分を掘り下げることは、見たくないことにも目を向けたり、言葉にし難い価値観などにも言葉を与えるプロセスでもあります。実感できているかどうかを問い直すことは、ときに痛みも伴います。なのでアクションラーニングコーチとしては、メンバーが「肚を場に出しても大丈夫」という心理的に安全なチームをどう作るかが肝要になってきます。

アクションラーニングコーチは、問題解決、個人の能力開発、組織開発を同時に支援する役割ですが、その場の背景やチームに適応しながらコーチしていく必要があります。「私はコーチとしてチームにどう関わるか?なぜ私がこのチームをコーチするのか?」を常に問うて、ゼロ幕での準備をする重要性を感じるお話でした。

 

参加者のご感想

劇のセリフや実演を交えたど迫力のお話は、元劇団四季主演の佐藤さんならでは。まさに佐藤さんの「肚」から出てくる言葉に、参加者の皆さんもグイグイ引き込まれていました。

 

  • 自分の実感を語るためには、自分の体験の鮮度をいつも保っておく必要があるなと思いました。会社の中でも、研修をやったりクラスをやったりするんですが、繰り返すうちにちょっと劣化して鮮度が落ちる感覚は確かにあるなと思って。それをいつも新鮮に語り自分の本音であり続けるために、体験を常に新しくしていきたいなと思ってました。
  • 「実感して語る」「ゼロ幕」という言葉はとても響きました。ゼロ幕を全く準備せずに人と会ったときに、自分も相手も何も収穫なく終わったこともあります。それを振り返ると実感して語ることができていなかったんだなと思いました。
  • コロナ禍もあって、自分はなんで生きているんだろう?など考えることも多かったですが、それも自分に向き合った経験だったと思いました。今日のお話をこれからの人生に活かせるといいと思う時間になりました。
  • 就活生ですが、自己PRなどで「まず伝えないといけない」と必死で「なぜ伝えたいのか」を考えたことがなかったなと感じました。セリフを実演いただいたとき、なぜ伝えるのかや状況を考えた方がより心に響き、言葉が生きてるように感じました。本日のお話を聞いて、言葉の意味を改めて考えて、人に伝わる話し方をしたいなと感じました。

 

清宮普美代 代表 コメント

佐藤さんの言葉はオモイ。<想い>が詰まっていたり、文字どおり、意味が<重>かったり。今回は、その背景にあることをお伝えいただきました。
それは、1人の人間から多数に伝える力の本質のような気がします。佐藤さんがALコーチ養成講座に参加された際、この方は「1対多」の伝える力はすでにスーパークラスのものをお持ちだからこそ、小集団(チーム)で相互干渉しながらの<伝達>を手に入れたいのだなと腑に落ちました。ひとに伝える力というのは、他者の学習を促進すると言い換えることもできるのではないかしら?ふと、そんなことを考えます。実際お話しを聞いて感動した方も多く、それこそ自分の明日からの行動をかえるものであったように思えます。そこには「学習」がありました。
「ゼロ幕の問い」私も問い続けて、自分の道を歩んでいこうと思います。佐藤さん、ありがとうございました!

清宮 普美代(せいみや ふみよ)

日本アクションラーニング協会 代表理事
株式会社ラーニングデザインセンター 代表取締役
ジョージワシントン大学大学院人材開発学修士(MAinHRD)取得。
マスターアクションラーニングコーチ

東京女子大学文理学部心理学科卒業後、(株)毎日コミュニケーションズにて事業企画や人事調査等に携わる。数々の新規プロジェクトに従事後、渡米。米国の首都ワシントンDCに位置するジョージワシントン大学大学院マイケル・J・マーコード教授の指導の下、日本組織へのアクションラーニング(AL)導入についての調査や研究を重ねる。外資系金融機関の人事責任者を経て、(株)ラーニングデザインセンターを設立。2006年にNPO法人日本アクションラーニング協会を設立し、国内唯一となるALコーチ養成講座を開始。600名強(2019年1月現在)のALコーチを国内に輩出している。また、主に管理職研修、リーダーシップ開発研修として国内大手企業に導入を行い企業内人材育成を支援。アクションラーニングの理解促進、普及活動を展開中。

 

佐藤政樹さんの最新著書人を「惹きつける」話し方―口下手でも人見知りでもあがり症でも人生が変わる
(2023年3月、プレジデント出版)には、今回の講演のもっと深い解説やエピソードが盛りだくさんです!ぜひご覧ください。

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