問題解決とチーム学習の組織開発手法であるアクションラーニングを活用した、経営幹部養成や管理職研修プログラムを提供しています。

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日本アクションラーニング協会情報

未来の学び~パワースキルとチームコーチング(アクションラーニング)

本原稿は、一般社団法人日本フューチャーズラーナーズ協会 設立3周年記念『未来の学びサミット』
2022年11月2日 20:00~20:45(30)清宮 普美代 講演をもとに記載されています。

これからの<学び>の方向性

いま私達が直面している、学びのベクトルの変化は、5つあります。

継続 双方向/参加者間へ

従来の教室型の学びから、双方向で、仲間同士・相互での学びあいに。

コミュニティラーニングへ

個人が気づく・理解するだけでなく、コミュニティとしての学び ①とも連携しますが、学びの場をつくる重要性が増しているといえます。

ブレンディド・ラーニングへ

学びの場は、同期(同じ時間、同じ場所)対面の学びから、オンライン環境を組み込んだ動画や非同期コミュニケーション、オンライン交流なども入れ込んだプログラム設計になっています。ブレンデッド(混合)ラーニングというコンセプトが潮流になっています。

能力育成 内発的動機付けへ

能力開発の方向性も、なにか一つのことが「できない」から「できるようになる」というようなもの(後述のハードスキル)から、学習力そのものや、その人の内発的な動機(志)を育成するような能力開発にシフトしています。

組織パフォーマンス向上

個人の能力開発だけでなくて、組織そのものの能力開発、組織パフォーマンスの向上ということに焦点があたっています。例えば、個人としてのリーダーシップ開発をして個人脳力がアップしても、それが、組織のパフォーマンスに紐づかないと意味がないということです。

実は、この5つの変化のベクトルは2021年度に、既に提示したものです。2002年はこの方向性はより強まり、そして定着化しています。①②③などは研修の実施方法法などに転嫁され、ハイブリッド研修として定番化しています。いま、大きな潮流となっているのは、④特定のスキル開発から、その人そのものの能力をあげるという方向性です。それは、実は今注目があつまっているパワースキル開発ということとつながっていきます。また、⑤の個人の能力開発だけではなくて、組織としての能力開発に力点が置かれていくこととあわせて学びのトレンドは新しい方向にむかっています。

非定型業務がリスキリング、アップスキリングを要求する

パンデミックがどのように私達の学びを変えているのかという視点でみると、生活をしているとあまり意識しないですが、私たちは激変している(既にした)環境の中にいます。そこでは、新しい仕事がうまれ、従業員の再教育(リスキリング)と新しい能力獲得(アップスキリング)が必要になっています。

全米経済研究所が提示した調査資料では「非定型型業務の成長率は定型業務の25倍になっている」と言及しています(※1)。自動化によって45%以上の仕事が「消滅」するという予測(※2)はありましたが、現実には同時に仕事も増えるということがおこっています。つまり、定型型の業務は減少し、非定型型の業務は爆発的に増えているのです。これらの非定形型業務は、分析思考や創造性、柔軟性といったスキルの需要を拡大しています。それが、リスキリングとアップスキリングの背景です。テクノロジーによる職場の大きな地殻変動は、パンデミックによって加速しました。例えば、店舗を自動化することでキャッシャーなどの定型の仕事は減りますが、実際に自動化し店舗以外にも展開したら、逆に購買データが増え、そのデータ解析する仕事が増えたり、あたらしいマーケティングを考えることが必要になったりといったことです。これに準じることが、あなたの職場のまわりでもおこっているのではないでしょうか。

「パワースキル調査2022:アジア太平洋地域」(※3)によると、コロナ以前に 「組織の長期的成長にとって、スキルアップは極めて重要」としていたのは34%でした。ところが、現在は66%、今後5年間について考えると80%が極めて重要としています。また、ソフトスキル開発に従来より多くの時間を費やすことになった組織も49%になっています。このことからも、コロナ禍が、スキルアップニーズを加速させている側面が垣間見えます。

ハードスキル(技術系スキル)とソフトスキル(ひと系スキル)

では、私達に必要なスキルとは何でしょうか?

従来型の、実務に必要な力(ハードスキル)ではなく、もっと本質的な人間力(ソフトスキル)の重要性が増しています。非定形型業務が求める分析思考や創造性、柔軟性といったスキルは、単に知識を習得すれば、よかったり、できないことをできるようにすればいいといったものではありません。

ハードスキル

仕事における技術的能力。知っていること できること(実践的)
(実はソフト)常に変化し、陳腐化し、習得が比較的容易

ソフトスキル

人および管理的能力。知識やスキルを効果的につかうために必要な力
(実はハード)構築するのが難しく、重要であり、獲得するのに努力と時間が必要

従来、組織は仕事における技術的能力の開発に投資してきました。伝統的ハードスキル開発は、できないことができるようになる、といった効果を確認することも容易です。しかし、時代はもっと根源的な能力の開発を必要としています。それは、<人間としての成長>そのものに近い能力開発で、短時間で効果が見えづらいものです。
Josh Bersinは、これらの今、我々が必要とされている基礎となる力をソフトスキルとくくるのではなく、パワースキルと呼ぼうと提案しています。(※4)

パワースキル

これからの時代の仕事をおこなう基礎力

※従来ソフトスキルといっていたものを、ハード、ソフトという並列であつかうのではなく、より本質的に必要な基礎力として認識する

パワースキルは、特定の技術的な力でなく、人としての根源的なところに紐づく、マインドセットや物事のとらえ方、態度を服務ものです。
Lepayaは、世界経済フォーラム、HBR、マッキンゼー調査から、パワースキルとして以下の8つのスキルを抽出しています(※5)。

  • 問題解決、分析力(批判的思考力)
  • 当事者意識
  • エンパワーメント・リーダーシップ(巻き込む力)
  • ストーリーテリング(言語化、具象化、抽象化能力)
  • 多様性&包摂
  • 協働、影響力
  • 回復力(レジリエンス)
  • 意図的な学び(成長マインドセット、リフレクティブ、生涯学習)

パワースキルは固定化された要素定義はされていません。大きく、①思考力そのもの ②自己認識と他者への働きかけ ③学びマインド&態度 の方向性が認められますが、その本質は、生産的に物事をどうとらえ、ポジティブに他にどうかかわるか、行動するか、なのではないかと思えます。

今回のコロナ禍の影響で組織のなかでは、5つのパワースキルの必要性が増大しています。(パワースキル調査2022:アジア太平洋地域)それは、①リーダーシップと他者管理 ②協働 ③適応と継続的学習 ④デジタル基礎力 ⑤批判的思考力&意思決定 です。コロナによって生じたリモートワーク環境は、他者への働きかけの力がより重要になり、変化に対応できる学習力などの重要性が高まっているといえます。

どうやってパワースキルを向上させるのか?

パワースキルの開発は、以下のようなプロセスが重要で、座学がほとんど意味をなさないことは、経験的に皆がわかっていることです。

本人にとってその能力・スキル開発が重要な意味をもつ
実践する
他者からフィードバックをうける
自分で内省(リフレクション)する

このような環境をどう作っていくか。日常のなかに埋め込まれた体験のなかで、ひとの成長はおこりますが、パワースキルを習得するための効果的な環境設計は可能です。

調査(※3)によると、パワースキルの育成において、効果的な形式として考えられているのは、ハイブリッド型で双方向の機会提供をし、コーチングや仲間(ピア)フィードバックがあり、実際の解決をおこなうという要素がはいったものです。

これらから考えると、パワースキル育成には チームコーチアプローチが適切です。実務課題をチームで実施し、チームに対するコーチングをおこなうことが、効果的だといえます。またその際、体験と実践から学び、相互のフィードバック交流をもつことで、パワースキルが開発されていきます。

アクションラーニングがパワースキルを開発する

パワースキル開発において、重要な要素 「実践する」「体験から気づきともに学ぶ」「課題解決型フォーマット」「チームコーチング(ALコーチによる)」「チーム交流/相互フィードバック」「認知の変化」は、そのままアクションラーニングの6つの構成要素につながります。また、これらのプロセスのなかで、成長マインドセットや認知構造の進化がおこっていきます。

  • 問題 ⇒ 課題解決型フォーマット
  • チーム ⇒ チーム交流/相互フィードバック
  • 質問とリフレクション ⇒ 認知の変化
  • 行動 ⇒ 実践する
  • 学習 ⇒ 体験から気づきとともに学ぶ
  • ALコーチ ⇒ チームコーチング

そしてまた、アクションラーニングのサイクルの繰り返しは、行動、リフレクション、新たな思考、プラン、試行、新たな行動を生み出します。

経験的で、具体的なアプローチ=実際の重要な課題に対処すること
同僚との協調による集団的な学習=チーム学習
個人間だけでなく、集団としての関係性も発展する
認識力および感情にまつわる学習=メタ認知

これらの複合的なアプローチによって、生み出される私達の力こそが、パワースキルにほかなりません。私たちがパワースキル開発をするうえで、もっとも効果的、効率的な実践手法のひとつがアクションラーニングアプローチであるといえます。
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※1We Are Becoming A Power Skills Economy (Josh Bersin :2022/10/3)
※2 The Future of Job Report(World Economic Fourm,2020)
※3 2022 Power Skill Research :Asia Pacific(Pearson,2022)
※4Let’s Stop Talking About Soft Skills: They’re Power Skills (Josh Bersin :2019/10/31)
※5How to Make Power Skills Accelerate Your Business growth?(Lepaya,2022)

本原稿は、一般社団法人日本フューチャーズラーナーズ協会 設立3周年記念『未来の学びサミット』2022年11月2日 20:00~20:45(30)清宮 普美代 講演をもとに記載されています。

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