問題解決とチーム学習の組織開発手法であるアクションラーニングを活用した、経営幹部養成や管理職研修プログラムを提供しています。

03-4400-9867
受付時間:平日9:30-17:30
NEWS

日本アクションラーニング協会情報

質問会議の実践:問題解決へのステップとチーム脳の活性化

この記事は、書籍:「質問会議」のつくり方をもとに記事を再構築した切り抜き記事です。

清宮 普美代 (著)

トヨタ自動車、NEC、富士ゼロックスなどで続々導入、意見を言ってはいけない不思議な会議。今この会議が驚きの成果をあげている。投げかけられた質問が、他人の思考のスイッチを入れ、連鎖し、スパークする。思考が共鳴し合い、「チーム脳」が働きだす。

前回の記事では、質問会議の大まかな流れをご紹介しましたが、セッションの流れの中でメンバーにどのようなことが起こっているのでしょうか。
今回はセッション例の一部をご紹介します。参加メンバーは以下6名です。

ALC=ALコーチ
赤木=問題提示者
青山
千葉
黒田
宮崎

問題を明確に

セッションの序盤のステップである「問題を明確にする質問」では何を聞いていくのでしょうか。
赤木さんの「チームの業績がなかなか上がらず予算を達成するうえでの問題になっている」という問題提示を例に見てみましょう。

黒田 部下はどのような構成ですか?
赤木 20代の男性と女性1名ずつです
宮崎 部下にどのようになってほしいですか?
赤木 指示を待つのではなく自分で考え行動するような
千葉 なぜ彼らは指示を待つのですか?
赤木 考えたことはなかったですね…。以前の上司が命令形だった影響かも?
青山 赤木さん自身は自分がどういった上司だと思いますか?
赤木 案外自分も指示・命令型で接していたかも…

最初は簡単な質問から始まり、自然に出てきた質問によって「なるほど」という感じでメンバーが感心する状況がうまれています。このような自然な「問い」がチームに共鳴し同じ意識、思考の土台をつくっていきます。
またメンバーの多様性によって “部下に関する質問”から“問題提示者に関する質問”など違った角度の質問が出てきています。

途中の振り返り

振り返りはALコーチからの質問で行います。質問会議の途中であってもALコーチは議論の内容に関与する立場ではないため、セッションの雰囲気や学びに繋がっているかを重点的に考えて質問します。

ALC チームの雰囲気はどうですか?
千葉 質問はできているがまだ深いところの質問ができていないかな…
青山 ちょっと堅いなという感じですね
ALC どうしたらいいでしょうか?
宮崎 思い切った質問をして問題の核心をついていけばいいかも

メンバーからセッションの進行上感じている点や本音を引き出し、さらにその改善案も別のメンバーから引き出しています。
それぞれが現状はどうなのか、それはどのように改善すべきかを考えチームで共有することで場のムードを変化させられます。

問題の再定義

ある程度問題を明確にするための質問が出たところで問題の再定義へうつります。

青山 部下を一人前として扱っていない
千葉 過保護になっている
黒田 マネージャーとしての役割が整理できていない
宮崎 部下の強みを活かすために必要なことができていない
赤木 部下を信頼し任せることができていなかった

多様な視点からの問題がでてきましたがどれが正しいというわけではありません。
セッション中は質問のみなので誰かに指摘されたわけではありませんが、問題提示者の赤木さん自身も新たな問題を発見できるのは質問会議の大きな特徴です。

この後、問題提示者が最終的に出した再定義に全員が同意出来れば目標・ゴール設定へと進みます。
しかし、同意しないパターンもよくあります。メンバーのなかに1人でも同意できない人がいる場合は“チームとして”同意できなかったとして全員が白紙の状態で質問を続けます。

宮崎 権限を委譲されて部下は喜びますか?
赤木 わかりません
黒田 部下は権限委譲されたとき、業務を進行できますか?
赤木 事業部としての役割など知らない部分もあるかもしれない
青山 役割とは?
赤木 営業数字だけでなくマーケティングリサーチの意味合いもあるんです
千葉 部下の方はそれを知っていますか?
赤木 一応部署ができたときには…

同意できない部分の違和感を問いかけることは、チームに新しい視点を与えられます。新たな情報はメンバーの質問を誘発し、結果として思考の連鎖が起こります。
つまり、彼らはあたかも1つの頭で考えるようになり始めており、チーム脳にスイッチが入っていると言えます。

ゴールと行動計画

問題の共有ができたら「どうしたら問題が解決するか」「ゴールに近づけるのか」を念頭に質問をしていきます。

青山 今の時点で権威委譲をするのに障害になっているものは?
赤木 部下を信頼出来ていない点です。自分は報・連・相ができていないと心配でたまらない。
千葉 では、報・連・相の漏れをなくすには?
赤木 今思ったのは、毎日10分話してみようかな。指示ではなく、彼らの思いや課題を聞くようにしたい。

ここでも「~をやってみれば」という提案は出ていませんが、質問を繰り返すことで自発的に行動計画を考えられるようになっています。

振り返り

問題解決に向けたステップが終われば最後の振り返りです。

ALC 赤木さんにとってセッションは助けになりました?
赤木 非常に有効でした。今まで「部下が悪い」と思っていたことが質問によって問題を多面的にみることができた。
ALC チームの皆さんはいかがでしたか?良かった質問などありますか?
黒田 途中で「赤木さん自身はどういう上司だと思うか?」という質問によって視点が大きく変化した
ALC ではチームワークは?
千葉 大変良かった、問題提示者が非常にオープンに話してくれたのが重要だった
赤木 それは雰囲気がよかったおかげです
宮崎 批判めいたことがなく安心感がありましたよね
ALC ほかに気づいたことは?
青山 質問を聞いている中で自分にない視点をみつけると面白かった
黒田 赤木さんが困っている点は共感もできたし~
宮崎 そうそう、同じマネージャーとして困ったことがあれば相談しやすい関係ができました
ALC この振り返りを次に活かすとしたら? 
黒田 次回もオープンに話すようにする
赤木 私は職場に戻ったとき、「まず相手」の話を聞く」ということを実践したい。そうするとオープンになれるので…

このような振り返りの時間があることで質問会議の中で得られた経験、教訓、意識などを次に活かすことが出来ます。
質問会議では、問題解決そのものだけでなく、メンバーの考える力、質問する力の向上、チームにコミットする大切さなどたくさんの学びが得られるのが特徴です。

メルマガ登録