【前編】中学生起業家が見据える、子どもたちの未来を拓くプラットフォーム「ひきだしkids」 Learning Base Vol.23
若い子どもたちが起業することは、社会的にもとても意義深いことです。今回のLearning Baseでは、そんな最前線の中学生の起業家たちにお話を伺います。
彼らが持つ創造性やアイデア、新しい視点が社会にとって貴重であることはもちろん、彼ら自身が起業を通じて自己実現や自立心を育み、未来のリーダーであることを学ぶことには、なにものにもかえがたい財産です。
今回紹介するジンベイザメ株式会社は、中学生たちによって立ち上げられたプラットフォーム「ひきだしkids」を運営しています。子どもたちが「好き」を見つけ、学び、仕事に繋げることができるこのプラットフォームは、メタバースを活用して、子ども同士のコミュニケーションや学びの機会を増やし、企業と子どもたちをつなげることができます。
目次
プロフィール
13歳
COO
孫正義育英財団第3期生
Canadian International School
WRO2017オープンカテゴリー小学生部門世界7位
WRO2018オープンカテゴリー小学生部門世界8位
2017 算数オリンピックキッズBEEファイナリスト銅メダル
2019 スタートアップjr.アワード ソーシャルイノベーション部門、初代大賞
2020 ベンチャー起業家のピッチイベント[HACHIKO PITCH] へ小学生初の登壇
6歳の時からロボットやプログラミングに興味を持ち、社会課題を解決するロボットを作ってきました。ロボット作成を通して、同世代の人にも社会問題を自分ごととして捉えてもらうためにプレゼン大会に出るなどして発信してきました。今はシンガポールに留学し、たくさんの刺激を受けながら多様性、異文化、最新のテクノロジーを学んでいます。今後は世界中を旅してみたいです。そしてこれからも社会課題解決に関して自ら発信し世の中をより良くするために起業もしていきたいです。
15歳
сто
孫正義育英財団第5期生
東京学芸大学附属国際中等教育学校 パソコン歴 小1~
World Robot Olympiad2017 世界7位
World Robot Olympiad2018 世界8位
World Robot Olympiad2020 全国1位
僕は、幼いころからロボットが大好きです。小学2年生でロボットの大会に出て世界を知り、そこから数年間かけて何十倍にも愛が膨らみました。そしてその中で、ある一つの信念にたどり着きました。それが、『人間の感情に働きかけるロボットを作る』ということです。元は労働者などの意味合いで作られた「ロボット」ですが、今では少し違うのではないかと思います。僕が考える感情に働きかけるロボットとは、人間の感情(喜び、怒り、悲しみ、楽しさ、感動など)に作用するロボットの仕組みのことです。まだ具体的ではないですが、これから財団で学んで行ってより具体的にしていきます。
「ひきだしkids」とは?
まずはじめに、私たちジンベエザメ株式会社が作っている、「ひきだしkids」について紹介します。これは子ども達が「好き」を見つけ、学び、仕事に繋げることができるプラットフォームです。僕たちはメタバースを作成し、メタバース上ではアバターを通じたコミュニケーションを実現します。それによって、子ども達同士でのコミュニティへの参加や、学びの機会を増やしていきます。
アバターは現実世界の自分のスキルとリンクしています。現実世界の現実世界の自分が成長したら、アバターもレベルアップするため、子ども達はゲーム感覚で学びを楽しむことができます。子ども達のアバターはマーケットプレイス上に掲載されるため、企業は世界中のスキルを持った子ども達にアプローチできます。これからは、トークンシステムも導入していく予定です。
「ひきだしkids」のマーケットとターゲット
現在のマーケットについて、「ひきだしkids」プロジェクトは、小中学生にフォーカスを当てたコンテンツを提供しています。その背景として、スマートフォンの持ちはじめはピークが12歳であることが挙げられます。自分専用のスマートフォンを使用している小学生は40.1%です。
ターゲットは3つあり、①海外に出ている日本の優秀な子ども達、②スマホ・タブレットを持ち始めた子ども達、③スマホ・タブレットを子どもに持たせた親達です。海外に在住している日本の子ども達は78,000人います。シンガポール、アメリカ、カナダは弊社のメンバーが留学などしているので、人数がわかるのですが、ヨーロッパは今調査中です。
メンバーが世界中にいるため、時差を活かして24時間メタバース空間を稼働することができます。これによってスキルを持った世界中の子ども達が、いつでも仕事をし学ぶことができます。
「ひきだしkids」が好きを具現化させる仕組み
「ひきだしkids」では、スキルの伝達が3段階に分かれています。最初は優秀な子ども達がスキルをプロから学びながら、一緒に仕事を行います。次にプロがTA(Teacher Accistant)に周り、プロから学んだ優秀な子ども達が講師になります。そしてその講師がTAとなり、講師(子ども)からスキルを学んだ優秀な子ども達が講師になり、プロは監修となります。これによってスキルが伝達され、拡大するサイクルが回り始めます。
子供は好奇心から「好き」を見つけ、「得意」が明確になり、仕事に繋げ成功体験を積み重ねることができます。これは遊びながら「好き」を見つけスキルを伸ばし、身につけられるからです。
また親は子どもに多くのことを経験させ、興味を見つけて欲しいと思っています。どうやって見つけさせればいいか分からないという課題を持った親は数多くいます。その分野のトップランナーに指導してもらいながら、実践的な教育を受けさせることができ、子供の将来に適した能力が明確になり、かつ新しい可能性を見つける機会として活用できるのではないでしょうか。
「ひきだしkids」の独自性
「ひきだしkids」のユニークネス(独自性)は以下が挙げられます。
多種多様な運動や技術
ワンプラットフォームで多種多様な認知と体験を提供することができます。学校では国語や算数のような教科や単元に限らず、ゲームやプログラミング、英語など多様な運動や技術を体験ができるのです。
本物指導
各分野で結果を出してきた「本物」による指導がなされます。本物は憧れであり、会いたくなる存在です。
デジタル
デジタルプラットフォームなので、いつでも「好き」や興味を可視化し、記録することができます。
エンタメ
子ども達はアプリ内ではゲームをします。これによって、楽しく続けたくなる、やりたくなる仕掛けを作っています。
リアル
デジタルだけではなく、リアルでのイベントを企画することによって、憧れの人に会い、直接教わることもできます。
「好き」をつなぐ
学んだ「好き」や興味を、次のステージに繋げることができます。
ジンベイザメはメンバー全員が子どもですが、それぞれが固有のスキルを持っています。CEOの檜垣さんはプログラミング言語に詳しく、COOの小助川さんやCTO片岡さんはロボット大会に出場したことがあるなど、それぞれのスキルと得意分野を持っています。これによってジンベイザメは事業を受注できます。
またみんな大人にやらされて参加しているのではなく、自分がやりたいという気持ちを持って参加しています。その想いの部分は、他には負けないのではないかと思っています。
「ひきだしkids」で「好き」を仕事にすることで、経済格差に関係なく子どもが夢に近づくことができます。技術的な面では、現代はスマートフォンがあれば仕事ができる時代です。パンデミックを境に、メタバースによる交流も進み、今後さらに発展していきます。
また教育ビジネスという面に焦点を当てると、学校では教わることのできない実践的な教育が必要と言われています。教育ビジネスは景気の影響が比較的少ないのが特徴であり、また子ども達をサポートする「地域貢献性」が、企業の評価につながるというメリットもあります。ウェブサイト制作やシステム開発を発注できるだけでなく、子供達の意見を参考にしたい、あるいは子どものマーケティングデータを活用したいというニーズにも、応えることができます。
現在は有料会員、無料会員向けにサービスを展開しており、資金調達も目標額を達成しました。
「ひきだしkids」で日本の子ども達が海外の文化や生活、テクノロジーと触れ合い、日本に貢献することができます。子ども達が海外へ進出することで、企業は世界中の子ども達にリーチすることができます。そして複数の分野について、一つのプラットフォームで学ぶことができます。
清宮普美代代表 コメント
中学生の起業?彼らの活動をきいていると、まさに
「仕事をすること」=「学ぶこと」=「楽しい」
の構図がはっきりとわかります。ジンベイザメ株式会社のメンバー全員が子どもでありながら、それぞれが固有のスキルや得意分野を持っていて、自分がやりたいという気持ちを持って参加しています。社会と教育。新しい教育の需要が高まる中で、じつはやはり実務の中で学ぶ、フォーマット(すなわち、アクションラーニング)がとても強いことが伺われます。そして、その活動の中で、子どもたちが夢に近づくいている姿は、ほんとうに嬉しいですね。
日本アクションラーニング協会 代表理事
ODネットワークジャパン 理事
株式会社ラーニングデザインセンター 代表取締役
ジョージワシントン大学大学院人材開発学修士(MAinHRD)取得。
マスターアクションラーニングコーチ
東京女子大学文理学部心理学科卒業後、(株)毎日コミュニケーションズにて事業企画や人事調査等に携わる。数々の新規プロジェクトに従事後、渡米。米国の首都ワシントンDCに位置するジョージワシントン大学大学院マイケル・J・マーコード教授の指導の下、日本組織へのアクションラーニング(AL)導入についての調査や研究を重ねる。外資系金融機関の人事責任者を経て、(株)ラーニングデザインセンターを設立。2006年にNPO法人日本アクションラーニング協会を設立し、国内唯一となるALコーチ養成講座を開始。600名強(2019年1月現在)のALコーチを国内に輩出している。また、主に管理職研修、リーダーシップ開発研修として国内大手企業に導入を行い企業内人材育成を支援。アクションラーニングの理解促進、普及活動を展開中。