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日本アクションラーニング協会情報

【リフレクション~内省の技術~】熊平美香氏 2021 Learning Base

2021.5.27 Learning Base vol.1
リフレクション

~内省の技術~

Guest: 熊平 美香

【熊平美香 プロフィール】
ハーバード大学経営大学院でMBAを取得後、金融機関金庫設備の熊平製作所・取締役経営企画室長などを務めたのち、日本マクドナルド創業者・藤田田に弟子入りし、新規事業立ち上げや人材教育の事業に携わる。
2015年、株式会社ライフルと共働し21世紀学び研究所を設立し、企業と共にニッポンの「学ぶ力」を育てる取り組みを開始。2021年度文部科学省 中教審委員。
著書に「リフレクション~自分とチームの成長を加速させる内省の技術~」(2021)

 

アクションラーニングはリフレクションを誘発する装置でもあります。
そのリフレクションの仕組みを紐解き、なぜそれが、いまの時代に必要なのかを、財)21世紀学び研究所 熊平美香さんにご登壇いただき、弊協会の代表清宮普美代と対話した内容をご紹介いたします。

 

私は「世の中に、自立型人材を増やす」ことを自分のミッションとして、21世紀学び研究所を運営しています。
そして、自立型人材となって、自分と世界を幸せにするためには、<リフレクション>することが重要だと思っています。
行動することの重要性は、昨今特に言われていることですが、なぜ行動が重要なのか。
実は、一歩踏み出したその先には「リフレクション」こそが、必要なのです。
そうでなければ、私たちは「学ぶ」ことができないのですから。

私自身は、このことを企業での人材育成と子供たちへの教育の二軸で、行ったり来たりしながら考えています。
自立型人材を生み出す――ということを探求すると、「経済と教育は双子」ということにいき着きます。
この二つは、一つだけで動くものではありません。
社会のなかで、相互に共振する必要があります。
省庁でいうと、経産省と文科省は共振して動かなければならないのです。
本年度、私は文科省の中教審委員の一人ですが、過去 経産省が打ち出した「社会人基礎力」に「リフレクション」ということを使っていただくことに動いてもいました。
実際、リフレクションという言葉を経産省が使ったことで、徐々に概念が社会に浸透する手ごたえも感じています。

 

OECD<海外経済協力機構>の提示する学びの羅針盤 ラーニングコンパス2030

2003年に、OECDは、社会人基礎力のもとになった、キーコンピテンシーを発表しました。
新しい時代の人材を育成する世界共通の教育目標を打ち出しています。
教育というと通常、各国ごとの対応とも思えるのですが、いまの時代をいかに私たち自身がWell-Beingで過ごすのか、環境問題をはじめとする世界におこっている複雑で深刻な問題を解決するためにどんな力が私たちに必要なのか。
OECDでは、新しい時代 2030年を見据えた教育目標として、変革を起こす力(Transformative competency)のコンピテンシーとして3つを明示しています。

  • 新たな価値を創造する力
  • 対立や葛藤を調整する力
  • 責任ある行動をとる力

また、生徒たちこそが、よりよい社会を創造する主体であると明言しています。

社会、経済、環境など様々な分野において前例のない変化に直面する時代に若者が、どのようにして自らの人生や世界を歩んでいくのかを示す<学び>の羅針盤を提示しました。

このことを受けて、文科省管下の学校現場の施策が変わっていっています。

 

主体制のバージョンアップ

学びの羅針盤のなかで言っていることは

Anticipation仮説の設定、
Action行動
Reflectionリフレクション

のサイクルをまわすということです。
このことを考えると、いま、デザイン思考、プロトタイプ作成、ピポットというような言葉で表されているようなことを、子供時代からやらなければならないということです。
これらは、答えのない時代の問題解決の対応様式です。
まず、自分の行動がどのような事象につながるかという見通しをつけて、責任をもって行動を起こし、その行動を振り返り、次につなげる。これがこのAARモデルの核になるところです。
つまり、答えのあるときは、インプット=アウトプットですが、答えのない時代は、正解100点をとってはいけない時代なのです。
そのままアウトプットしてはだめで、逆に20点のほうがいい。
実際に自分の答えをだして、それに基づいて行動してみて、ともかくラーニングサイクルを回していくことが必要だということですね。

もう一つのキーワードとして「エージェンシー」があります。
この言葉の意味するところは主体 <担う人> オーナーシップをもって行動していく人ということです。
また、子供たちの主体性を育むと同時に、先生の在り方も変わっていく。
教師というより、ともに学びあう存在に変っていくことになります。

全体的に社会における主体性のバージョンアップが求められている時代です。
その鍵は学習力だと思います。
つまりは、リフレクション力です。
私は、いま企業の方が停止していて、教育現場のほうが変革を行おうという意思決定がされているようにも思います。
正直、日本の企業をみていると、流行って導入されずに終わってしまうコンセプト、その屍累々という感じです。
つまり、世界<グローバル>は、どんどんステージが変わっていくにも拘わらず、日本だけが止まっている。
これも、リフレクションを私達がきちんと扱えていないからなのです。

 

複雑な世界に立ち向かう能力アップ

世界が複雑になりすぎていると感じているのは、世界の複雑さと自分の能力の間にギャップがあるから―――そんな風に考えれば、複雑性に対応するには、どうすれば、人間の能力がアップしていくのか、どういう成長があればいいのかに対応するということになります。
ロバート・キーガン博士の言及されているように、知性の発達には段階があります。
「環境順応型知性」です。
順応主義で、指示待ちの段階です。
次の段階は、「自己主導型知性」課題を設定でき、導き方を学び、自分なりの価値観や視点で方向性を考えられ、自律的に行動できる。自分の価値観に基づいて自戒し、自分を管理します。
正直、いままでは、この二つの知性レベルの人材で世の中は、回っていたといえます。
ところが、現代は、3つめの段階である「自己変容型知性」に、知性レベルを上げていかなければならない時代です。
なぜならば、世の中が複雑になっているからです。
先ほどからお伝えしている、人と組織に関わる新しいコンセプトなどは、この複雑性に私達がどう対処しなければならないのかを考える過程のなかで生まれてきているのです。
そして、私達は、学ぶことが大前提で、この複雑な世界で生きていくためには、私達の知性レベルはあがっていかなければならないのです。

認知の4点セット

「認知の4点セット」を使うと、私達の知性レベルを発達させることができ、この自己変容型知性を育むことができます。
複雑な問題を解決するためには、そこにある矛盾を包含したり、複雑に絡み合う関係性、相互依存のなかで変化を生み出さなければならないのです。
例えば知識やスキルをいれこむことでは、問題は解決しません。
いま私達が問題を解決するためには、水をいれることだけでなく、コップである器そのものが大きくする必要があるのです。
認知の変容があって、はじめて、このような問題は解決されます。

認知の4点セットは、リフレクションを誘発するツールであり、これを活用することで自分の認知を向上することができます。

①意見
②経験(その意見をもつにいたった背景)
③感情(経験を体験する際の)
④価値観(②と③から①を生み出す背景にあるもの)

そして、いま必要とされている、学習機敏性ということにおいても、リフレクションが重要なのです。

このことは、学習棄却ということともつながっています。

 

デザイン思考とリフレクション

リフレクションができないと、実は、学習の棄却もできません。過去体験から学んだことにとらわれてしまうのです。
ポイントは自分がどんな価値観をもとに思考しているかをメタ認知できるかどうかです。
今の時代は瞬時に継続的に学び続けることが、とても大切になっています。
過去に機能していたことは、もう機能しません。
リフレクションは、また、この学習機敏性を生み出すときに必要なものなのです。
例えば、デザインスプリント(Googleが打ち出したフレームワーク)はデザイン思考やリーンスタートアップのためのフレームワークですが、その内容は、ビルド&ラーン、ビルド&ラーンの繰り返しです。
プロトタイプを作って、フィードバックをかけていくことを繰り返していく。
どんどん学習棄却をしていく。
このことは、いまや世界的には定番になっていると思います。
ただ、リフレクションすることなしに、つまり学習なく、次のよいアイディアに飛びついても、何も生まれません。
デザイン思考とリフレクションは親和性が高いし、ティール組織やアジャイル等の組織論が打ち出されているのは、この学習機敏性の話でもあります。

 

学習スピードをあげる組織とチームの在り方

学習を早くするために、「決断する人」と「実行する人」をわけるヒエラルキーの概念が終わったということです。
計画、承認、行動、報告、判断の<愚かな>プロセスから脱却する必要があります。
「あなたたちが決めていい」、「実際に動いているところで決めていい」。
いま、学習のスピードをあげていくための新しい組織やチームの在り方が問われています。
ひとりひとりに判断できる力があることは大前提です。
これからの組織では、戦略は経営者だけのマターではありません。
戦略は誰もが理解する必要があります。

 

変るリーダーシップ

なので、リーダーシップも変わってきています。
いま、リーダーのやるべきことは、先は見えないが先を見通すこと。
役割りは、もう「判断」、「決断」ではないのです。
正解がないなか、決めることが仕事なのではなく、リアルタイムで軌道修正をできる状況をつくること。
継続的たえまないコミュニケーションを組織に生み出すことがとても重要です。
聞きたくないメッセージを拾える組織である必要が高まっています。
その方が、適切な方向へ機敏に軌道修正することができるし、決定は変えていいわけです。
近年、組織における心理的安全性が必要な理由のひとつであると思います。
答えがない時に、立ち止まらずに機敏に学習する。
現代のリーダーシップとは、かつてないほど、アジャイルで起業家精神にあふれる文化のなかで人々をエンパワーすることです。
もっといえば、速く失敗し、早く学ぶことが、早く成功するポイントであり、その軌道修正できる力が組織の優位性を支える力となるのです。

 

清宮普美代代表 コメント

アクションラーニングは、学習する組織の実戦手法です。
熊平さんのリフレクションは、まさきアクションラーニングの基本的要素のひとつです。
お話をうかがって、まさに、「学習」がより求められる時代になっていることを深く思いました。
特に、リフレクションは、対話の技法でもあり、リフレクションできる(質と量)個人が増加することが、社会の発達や、組織の開発につながります。
いま、組織のなかでいわれている、デザイン思考やアジャイル、ピポット、もっといえばホラクラシー、ティール組織は、みなこの学習アジリティーにつながることなのだということが、あまり世の中にしらしめられていないことが残念です。