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日本アクションラーニング協会情報

Learning Base 2022 DX × AL ~DX人材育成にアクションラーニングが効く理由~

2022.3.22 Learning Base 2022
DX × AL
~DX人材育成にアクションラーニングが効く理由~
Guest: 廣瀬弥生氏
廣瀬弥生

東洋大学情報連携学部教授(経営学)
経営学博士(英国Henley Business School)、都市計画修士(米国MIT)、経済学修士(一橋大学)
専門分野:異分野間におけるナレッジトランスファー、ナレッジマネジメント、デジタルビジネス戦略(DX戦略、国際標準化戦略等)、ハイテク分野における社会実装
大手情報通信系シンクタンクを経て、東京大学にて産学連携分野における研究・プロジェクトを運営。
その後外資系リサーチファームにて、日本企業向けにDX戦略を提言、2019年より現職。
現在も、欧米のDX戦略について産業界に提言活動を実施。

アクションラーニングをはじめとした海外のナレッジを、きちんと機能する形で日本の組織に導入する方法や、日本と欧米など国と国との橋渡しだけではなく、テクノロジーのエンジニアの知見をマーケットに橋渡しするにはどうしたらいいかというテーマについても研究をしている、廣瀬弥生教授。
日本の組織にアクションラーニングがいかに有効かを説いた前回に続き、今回は、そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か、グローバルで競争できるDX人材を育成するためには、何が必要か、そしてなぜ、アクションラーニングが求められているかということについて語っていただいた。
※前回のLearning Baseはこちら»

マネージャー(意思決定者)の考え方を変革する必要がある

日本が躍進した高度経済成長期は、組織の目指すべき方向性が決まっていました。成功者が「これが正しい」と言ったことが正解であり、会社も経営者の示す方向に進めばよかった時代と言えます。しかし現代は、VUCA時代(先行き不透明で、将来の予測が困難な時代)とも呼ばれるように、絶対的な正解がなく、目指すべき方向性が定まっていないことがほとんどです。現在のマネジメントは、社内外を考慮しながら事業の方向性を示す働きや、新たなビジョンが必要です。
時代の変化に伴い、大学の役割も変わっています。かつては決められた答えを、多く知っていて、早く回答する人材が望まれていました。しかし現在は、答えのないことについて論理的に議論を展開し、解決策を見つけ出す人材が必要とされています。「あなたは何を知っているか?」よりも、「あなたは何をどう考えているか?」の方が、問われる時代になっているのです。

DXの本質は「顧客中心」

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、簡潔に説明すると、企業が先進的なデジタル技術を利用して、新たな製品やサービス、ビジネスモデルを生み出すことや、顧客を始めとしたステークホルダーとの関係を深めることにより新たな価値を創出し、競争上の優位性を確立することです。ここで押さえるべき大事なポイントは、①顧客中心のビジネス戦略であるという点と、②競争優位性を確立することが目的、という2点です。
例えば、コールセンターの応対におけるDX戦略を考えてみましょう。よくある事例として、AIによる応対の自動化が考えられますが、ここで重要な視点はコスト削減や人件費削減が目的ではないという点です。顧客中心で考えると、たらい回しにすることなく問い合わせ内容からAIが顧客の抱える問題を推察し、それに精通した担当者に最短時間で繋ぐことが、DXの本質的な意味合いです。応対にAIを導入することで顧客満足度を高め、他社との差別化により競争でも優位に立つことを考えます。
DX戦略を立てるときに、単に先端デジタル技術を導入することだけを考えると、骨抜きの施策となってしまいます。顧客がニーズを満たすことを最優先事項ととらえ、どんな強みを活かして競争優位性を高めていくか。この観点をベースに組織を再構成し、評価システムも再構築していく必要もあるでしょう。DXはこのように、デジタル技術を活用して顧客満足を高めるために必要なルールや仕組みの全てを変革することを意味します。

DX実現には、変革型のリーダーが必要とされている

DXを推進していくためには、先端デジタル技術を活用して、経営戦略に基づき、人との関係性を組織全体で変革する「変革型リーダー」が必要です。変革のために社内ルールや組織を再編し、インセンティブ導入や予算配分変更など、変化を好まない従業員に何を言われても変革を推進するような、強い姿勢が必要となります。ここには従業員の負け癖を直したり、トラブルメーカーと言われるような従業員を容認する姿勢も含まれるので、既存の価値観ではなく新たな価値観を作り上げ、推し進めることが重要です。
欧米企業の多くは、戦略思考で動きます。経営の全てが、中長期ビジョンと企業戦略を考えることから始まるため、ビジョンの達成に向けて、既存のやり方やオペレーションを変えることも許容できます。

しかし日本の特に大手企業の経営では、自社のオペレーションや慣習、ルールを厳しく管理することに注力される傾向があります。かつては明確なゴールを掲げなくても、従業員に進むべき方向が共有される時代でしたが、現代はゴールがどんどん変わってしまう時代です。中長期のビジョンを掲げず、やり方やオペレーションも変えようとしない。このようなマネジメントの在り方が、DXにおいて諸外国からどんどん遅れをとっている要因ではないでしょうか。DXを実施することを目的とせず、DXを自社のビジネスモデルにどのように発展させていくかを、常に考えることが必要であると考えます。

DX推進に必要なのは、アクションラーニングプロセス:解決策ではなく対話

またDX推進には、対話によって困難を乗り越えることも必要です。現業でもビジネスが成り立っているにもかかわらず、なぜDXを行っていくかを、社内外のステークホルダーと話し合う中で、必ず摩擦は起きます。しかし、それを乗り越えて変革を進めるコミュニケーション力が重要です。日本的な考え方だと、問題定義や解決ビジョンの明確化を飛ばして、いきなり技術的な解決策を実践しようとします。ですが、むやみに解決策を実践するより先に、まず問題を定義して、顧客と一緒に解決策ビジョンを策定したうえで、実践することが有効であり、これはアクションラーニングのセッションのプロセスそのものです。この意味では、アクションラーニングでの学習や、身につくコミュニケーションの力は有効でしょう。

近年アジア各国で進められているスマートシティ(地域におけるDXと考えられます)に関しても、同様のことが言えます。海外企業がアジア地域のスマートシティを進めるために最初に実施することは、その地域全体の問題を定義するところから始めます。しかし、多くの日本企業は技術的な解決策を提示して、その解決策が何の問題に必要で、最優先で実現すべき解決策であるかについて議論することなく、自分たちが得意な解決策を提案しているのではないでしょうか。これでは地域の視点に立っておらず、ビジネスの主導権がとれません。

競争優位性を高めるためのマネジメント力とルールを創り発信する力

現代でのプラットフォーム戦略は、かつてのようにITベンダーばかりがやるものではなく、各産業に特化したクラウドプラットフォームが中心となっています。つまりDXはプラットフォーム戦略を成功させるためのツールと捉えることができます。
また、もう一方は国際標準とむすびつける戦略におけるDXの活用方法があります。各グローバル企業は自社の産業分野でDXに基づくデジタルバリューチェーンを構築し、それが国際標準となることを目指しています。因みに欧州企業は、そのバリューチェーンを他国と差別化させるために、サーキュラーエコノミー(循環型経済)*を用いています。CEはEU発信で提唱されてきましたが、これは単に環境問題解決のためではなく、ヨーロッパが国際競争力を高めるための戦略と考えられます。国際標準化やCEに見られるように、欧米企業は自社の競争優位性を高めるために、ルールを提案しそれを発信することにも積極的です。

*詳細は、『サーキュラーエコノミー 循環経済がビジネスを変える』(勁草書房)をご参照下さい

必要とされる能力はアクションラーニングで鍛える

 このように海外企業や組織はDXを軸に、自社の強みを活かしたビジネスモデル構築に向けて動いています。日本も競争優位性を確立するために、強みを活かした戦略構築力を高め、それを運用する力を高めなければならないです。そのためには、問題を深く捉え定義をする力と、発信力や対話力も含めたマネジメント力、コミュニケーション力を向上させることが大切なのです。これらの力をつけるには、「問いかける」、なぜこのことを行うのか、どんな意味があるのか、などクリティカルに問い続ける力を育成することが重要だと思うのです。またロジカルに思考をくみたてながら、コンセプチュアルな思考力を養うことも重要です。アクションラーニングの研究論文を発表したご縁で、アフリカ諸国でもポストコロニアル(植民地独立後)時代の人材育成に、アクションラーニングを活用しようという議論があることが分かりました。自分の企業や国の方向性を自分で示さずに、どうして生き残れるのでしょう。アクションラーニング的なアプローチは、とても、これらの力の開発につながり、意味があることだと思っています。

清宮普美代代表 コメント

廣瀬弥生教授のDX論は、本当に切れ味鋭くものすごく腑に落ちるものでした。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)といわれるものの本質についての看破力もすごかった。(要は、DXをおこなって、ビジネスにリターンがなければ意味がない、ということ)どうしても、私たち日本人は、職人気質というか、大枠のコンセプトづくりというより、オペレーションから入るところがあります。そこが強味でもあるとは思いますが、変化の時代のなかで、オペレーションの実践の力も重要ですが、どこに向かって、何をなすのか、など、バラバラに散らばった事象をつなぎ合わせるストーリィづくりというか、まさに概念化力がないと、DX時代に生き残れない。そして、彼女は、日本には「DX経営人材」が不足していることが問題だと指摘していました。たんにアジャイルに学習し続けるという動きだけでなく、そもそもを考え、メタ認知から、バラバラのものを包摂し、統合してイメージを生み出すことができる人材こそが、DX時代に必要な人材です。ただ、本当に人材不足。たぶん、やっぱり元々のトレーニング、教育から変革する必要がある。

清宮 普美代(せいみや ふみよ)

日本アクションラーニング協会 代表理事
ODネットワークジャパン 理事
株式会社ラーニングデザインセンター 代表取締役
ジョージワシントン大学大学院人材開発学修士(MAinHRD)取得。
マスターアクションラーニングコーチ

東京女子大学文理学部心理学科卒業後、(株)毎日コミュニケーションズにて事業企画や人事調査等に携わる。数々の新規プロジェクトに従事後、渡米。米国の首都ワシントンDCに位置するジョージワシントン大学大学院マイケル・J・マーコード教授の指導の下、日本組織へのアクションラーニング(AL)導入についての調査や研究を重ねる。外資系金融機関の人事責任者を経て、(株)ラーニングデザインセンターを設立。2006年にNPO法人日本アクションラーニング協会を設立し、国内唯一となるALコーチ養成講座を開始。600名強(2019年1月現在)のALコーチを国内に輩出している。また、主に管理職研修、リーダーシップ開発研修として国内大手企業に導入を行い企業内人材育成を支援。アクションラーニングの理解促進、普及活動を展開中。