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日本アクションラーニング協会情報

コミュニケーションの質を高める「質問会議」【書籍『対話流』切り抜き】

この記事は、書籍:対話流をもとに記事を再構築した切り抜き記事です。

清宮 普美代 (著), 北川 達夫 (著)

“正解”のない変革の時代。対話的思考で学び合う力こそ、ビジネスと教育の現場を貫く「生きる力」。
対話的発想を根幹に据えて、ビジネスと教育の現場を結ぶ「学習・コミュニケーション環境」を創出する。

コミュニケーションはどう変わったか?

日々新しいものが生まれ、猛烈なスピードで変わり続ける世界。そんな現代で働く私たちに求められるコミュニケーションの形とは、一体何でしょう?

以前の日本企業では、いわゆる「飲みニケーション」や、社員旅行、運動会といったコミュニケーションの場が設定されていました。
それはただ親睦を深める機会であるだけではなく、非公式だけれど重要な情報のやりとりや、社員同士が意識共有をする機会でもありました。
しかし、そのような機会は多くの職場で無くなってしまいました。

さらにはここ数年のコロナ禍が追い打ちをかけるかのように、以前は「当たり前」とされていたオフィスワークさえも、その機会を失いつつあります。
テレワークに切り替わり、メールやチャットなどのやりとりで個々人が閉鎖的に仕事を進めている状況では、ほかの人の仕事の内容が自然と聞こえてきて、あの人がどんな仕事をやっているのかなんとなく分かる、といった状況は生まれにくくなっています。

つまり、現代の働き方におけるコミュニケーションは、社員同士の情報共有や共感がよりしづらい形へと変化しているのです。

「答えがない状況」におけるコミュニケーション

さらに、今の世の中は五年、一年、一ヶ月単位で物事が変化する時代。上司が持っている過去の成功経験は、役に立たなくなってきているのです。

例えば、ビール会社が酒屋にビールを売っていた時代と、コンビニで商品を売るのと、amazonなどのWeb通販サイトで販売するのとでは、方法も買い手の価値観も異なります。

そんな状況で必要になるのは、誰か一人が「答え」を提示するのではなく「問いによって問題を共有化し、みんなで考えて解をつくっていく」というコミュニケーションの場なのです。

「問える力」は「変化する力」

さて、ここで「問い」という言葉がいきなり登場したことに首を捻った方もいるかもしれません。(この記事を読んでいる皆さんは、「いやいや、質問が大事なのは当然だろう!」と思っている方が大半かもしれませんね)

なぜ「問い」が重要なのか。
それは、問う力がまさに「変化する力」に繋がるからです。

今の成功が継続するとは限らないビジネスの現状で、ビジネスパーソンに求められるのは世の中の変化に合わせて、思考や価値観を柔軟に変えていく力です。
そのような「変化する力」とは、すなわち「過去の成功パターン」「これまでの常識」といったフレームワーク、思考の枠組みそのものを問える力に他ならないのです。

価値観を吊り下げる

しかし、このようなフレームワークを問う思考は、一見簡単そうに見えて、実はなかなか難しいのです。
誰だって、自分の意見を言おうとすれば、無意識のうちに自分の経験や価値観を前提としてしまうはずです。

そこで必要となるのか、価値観を吊り下げる姿勢です。
この「吊り下げる」という表現は、自分の価値観を自分の体から切り離して、自分の横の空間に「吊り下げる」というイメージです。
すなわちこれは、内心と言葉と行動とをいったん切り離し、自分の意見と自分自身とを同一視しない、という姿勢を意味します。

先ほど「変化する力」という言葉が出ましたが、みんなが自分の意見と自分自身とを切り離して考えているからこそ、変われるチャンスが生まれます。
全員が自分の価値観を絶対視したり、自分の意見に固執していては、変われるチャンスはありませんよね。

自分自身の本質的な部分を変えることなく、相手の意見を聞いて、自分とは異なる価値観に触れて、なるほどと思うことがあれば積極的に自分の意見を変えていく姿勢が、変化のために求められるのです。

I thinkからWe thinkへ

「いやいや、そんなことは可能なのか?」と思われた方はいるでしょうか。もしくは、「自分一人なら可能だが、チーム全員にこのような姿勢を取ってもらうのは難しい」と感じた方もいるでしょう。
このような価値観を吊り下げる姿勢をトレーニングし、メンバー全員の「問う力」を引き出すコミュニケーションの場を作るために生まれたのが「質問会議」です。

質問会議とは、意見や報告を封印し、質問のみで行う会議です。
その特徴は、設定された問いに対して誰かが意見を述べるのではなく、みんなで問いを共有化して、自分の問題として一緒に考えることです。
みんなで共通の問いを持つ状態は、一人一人がバラバラの「答え」を持つ状態から解放します。そして、質問は他の人の思考のスイッチを入れ、あらかじめ決められた答えがない状況へと思考のベクトルを動かします。
そのことによって、メンバー全員の脳がつながりを持って動き出し、発想がパッと広がります。まさに、問題解決のコミュニケーションが「I thinkからWe think」へと変化するのです。

では、「質問会議」とは具体的にどのような会議なのでしょうか。
次回の記事で、詳しく見ていきましょう。

質問のコツを学べる「質問会議」を実践してみましょう

清宮 普美代(せいみや ふみよ)
日本アクションラーニング協会 代表理事

大学卒業後、毎日コミュニケーションズ(現:マイナビ)にて事業企画や人事調査等に携わる。数々の新規プロジェクトに従事後、渡米。米国の首都ワシントンDCに位置するジョージワシントン大学大学院マイケル・J・マーコード教授の指導の下、日本組織へのアクションラーニング(AL)導入についての調査や研究を重ねる。外資系金融機関の人事責任者を経て、(株)ラーニングデザインセンターを設立。2006年にNPO法人日本アクションラーニング協会を設立し、国内唯一となるALコーチ養成講座を開始。600名強(2019年1月現在)のALコーチを国内に輩出している。また、主に管理職研修、リーダーシップ開発研修として国内大手企業に導入を行い企業内人材育成を支援。アクションラーニングの理解促進、普及活動を展開中
株式会社ラーニングデザインセンター
東京女子大学文理学部心理学科卒
ジョージワシントン大学大学院人材開発学修士(MAinHRD)取得。
マスターアクションラーニングコーチ(MALC)

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