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日本アクションラーニング協会情報

創造基礎力の鍛え方 海渡千佳氏《前編》

Learning Base 2023「大人の教養シリーズ」がスタート!

第二弾のゲストスピーカーは、「未来を作る人を増やす」というミッションを掲げる株式会社フロークリエイション代表の海渡千佳さんです。

ゲストプロフィール

海渡 千佳

株式会社フロークリエイション 代表取締役
MIRAI TOKYO Founder(Co-Learning Space & 多国籍シェアハウス)
ライフワーク倶楽部主宰
イノベーション & ラーニング ディレクター
2019年国連・国際女性デー会議 日本代表
監修著書:『ナガサキの郵便配達』

皆さんはどんな課題を持っているでしょうか?

「あなた自身」がまず率先垂範して、課題を解き明かし、解決策を考えなくてはいけないと強い責任感を感じていませんか?今回は、環境の大きな変化に対応できる人と組織のあり方のヒントを、ご紹介していきます。

イノベーションを生む望ましい土壌とは

世界的なアニメ制作スタジオ、ピクサーの元CEOで、エド・キャトムルという方がいます。ピクサーは元々あまり大きなスタジオではなかったのですが、世界的なヒット作を何本も作り上げたのは、彼の功績が大きいと言われています。

エド・キャットムルの仕事ぶりからは、先の見えない状況、経験したことのない創造的な新しい課題に取り組む際に、チームやリーダーシップがどうあるべきかを学ぶことができます。

ハーバードビジネススクールのリンダ・ヒル教授は、イノベーションとは一人の天才によってだけでなく、私たちのようないわゆる一般的な人であっても、集合した知(天才)によって起こすことができると語っています。

ヒル教授によると、ピクサーのメンバーは、あらゆる選択肢を比較するため、非常に白熱した、しかし建設的な議論を戦わせる術を知っているそうです。イノベーティブな組織には、①問いかけ合うこと、②積極的に聴くこと、そして③自分の考えを提示し主張することを学び、実行する個人が集まっています。

また多様性には摩擦がつきものですが、イノベーションにはどちらも不可欠です。摩擦は一見好ましくないものに思えますが、摩擦がなく予定調和で終わる組織には、イノベーションは生まれません。

(詳しくはリンダ・A・ヒル著『ハーバード流逆転のリーダーシップ』に書かれています)

ピクサー流人間関係の基本4原則というものがあります。

私はものづくりの人でもクリエイターでもないです。しかしどんな業界、職種であっても、新しい課題に取り組むときに必要な考え方があることに気づきました。

また私は天才ではありません。色んな取り組みをともにしてきた仲間から得たコメント、本から学んだ知識などを受けて、私なりに組み立てたお話をします。

日本企業ではなぜイノベーションが起きにくいのか?

皆さんもご経験がある通り、上の人に従うことや、前例があることに慣らされています。また優秀な人であればあるほど、1つの答えに早く到達するテクニックを、小さな頃からトレーニングしてきています。なので答えをたくさん出すことは求められたことはなく、苦手なことが多いです。また専門外の知識を得ることが無駄だと捉え、怠っているケースも多くあります。これらが日本でイノベーションが起きにくい要因なのではないかと、私は考えています。

ここから問いたいのは、「個」(自分)の中に知識、経験、スキルのバラエティがあるか?ということです。深い知識でなくとも、色んな分野に首を突っ込んでみたり、色んな人の話を聴くのが好きかどうかです。また、「個」(自分)には新しいものを発見したり、推論する能力は育っているか?これも大事な問いです。

イノベーションのプロセス

イノベーションの研究成果から、イノベーションというものがどう起こるかを探ってみたいと思います。

1つは『科学が教える、子育て成功への道』(扶桑社)を紹介します。この原題が『Becoming Brilliant』、つまりBrilliantになるにはどうしたらいいかということが書かれている本です。ここで紹介されている「6Cs」が、イノベーションを作り出すプロセスと言われています。

この中でもCollaborationとCommunicationが、一番大事なのですが、日本人はとても苦手だと言われています。何かを始める際、私たちは「何をやろうか?」という部分から始まりますが、それ以前に、日常の中で「何になるかわからないけど面白そうで不思議な雑、種を集められるか?自分の中に蓄えられるか?」が重要です。このストックを組み合わせることで、アイデアが生まれてきます。逆に言えばこれがなければ、アイデアは陳腐になってしまいがちです。

では「雑」や「種」はどう集めるのでしょうか?。

実は学びの方法は、実は「人」「本」「旅」の3つしかないと言われています。

本と人から学ぶ(探検読書と知図)

私は2000年の4月から毎月、本を読んで集まる「探検読書」という会を主催しています。毎月テーマを設定し、自分がピンときた本を1冊選んで参加するものです。

まず自分がその1冊を選んだ理由を発表し(My Discovery)、参加者の発表も聴き(Your Discovery)、そしてそれぞれの本からテーマについて考え、話し合います(Our Discovery)。探検読書では、同じテーマなのに人によって選ぶ本が全く違ったり、自分が初めに考えていた「テーマ」の捉え方が広がり、深まり、新しくなったりします。最終的には持ち寄る本は違うのに共通点が見つかったりもします。

最後にテーマやキーワード、みんなの発表を書いた「知図」に残すことで、考えや発見が何度も反芻され、定着することが期待されます(画像は例)。

実は私は、本を読むのはとても遅く、読める冊数は少ないのですが、みんなが読んだ本を体験することによって、本からの学びがとても凝縮されていて、私にとってはとてもありがたかったです。

本旅と人から学ぶ(歩いて集める)

次に「旅」から学ぶ実践「歩いて集める」という実践もとても大切です。

私は20年くらい同じところに住んでいるのですが、コロナ禍で巣篭もりする中で、家の窓からある日突然、気になるものが見えたのです。急にあれは何だか知りたくなって、時間がある時に歩いてそこまで行ってみました。

近づいてみると「霊岸島検潮所・量水標跡」という、歴史的な建造物であることがわかりました。実はその昔、東京湾の入口で潮位を測定し、つい最近まで日本の平均潮位の基準となるすごい場所だったのです。ここは江戸時代から昭和まで、伊豆方面への東京汽船(渋沢栄一創業)の発着所であったり、江戸時代は罪人の島流しの船も出ていたそうです。さらに帰り道、近くには小さな小さな祠(ほこら)があり、説明文にはこの辺りに越前松平家のお屋敷があったと書かれています。今ではビルばかりでは想像もできません。

そこから派生し、そういえばこの辺りに「越前堀」と名前のつく場所が(例えば薬局や公園など)よくあることに気付きました。この越前堀という名前は、越前松平家のお屋敷があったからなのだと、20年くらい住んでいて初めて気付いたのです。

またさらに帰り道、「ジュピターショップチャンネル」の本社がある「国冠ビル」の名前が、フォントも含めて日本酒みたいな名前だと思いました。そのまま道を歩いていたら、次々と日本酒の看板が多いことに気付き、あるけどあるけど「酒」の文字が目に入り始めます。

最後に「新川大神宮」という神社に行き当たりました。看板の説明を読んでみると、実はこの一帯は江戸時代、日本中のお酒が船で運ばれ、受け取る酒問屋が集まっていた場所だったとのことでした。周囲を堀で囲まれているので、荷を下ろしやすかったのです。

その名残で現在も、酒造メーカーの東京支店などが数多く残っているのだと、謎が解けました。

このような活動を仲間と「Feel°Walk(フィールドウォーク)」と呼んでいます。

これは、いつもと違う道を歩いてみたり、道で偶然発見するものを愛でて、自分で歩いてどこに何があったかを手書きの知図に書くという活動です。

後編では「Feel°Walk」が学びを生む仕掛けと、「創造基礎力」の源泉について解説していきます。

後編はこちらから »

清宮普美代代表 コメント

イノベーションは、多様性の揺らぎ(心地悪さ)が安全性の担保のなかで出るところから始まると思います。私達が対話をファシリテーションする際も、この揺らぎをいかに場にだせるのかを念頭におきながら実施していることと今回のお話しは呼応していると思います。海渡さんの取組みは、本当に興味深く、かつ本質的だと思うことが多く、今回紹介していただいたように、自分のなかにどれだけの「雑」と「種」を持てるか、そして、そのことが、AI時代のヒトの創造性(AIを活用した創造性)につながることだと強く感じています。

清宮 普美代(せいみや ふみよ)

日本アクションラーニング協会 代表理事
ODネットワークジャパン 理事
株式会社ラーニングデザインセンター 代表取締役
ジョージワシントン大学大学院人材開発学修士(MAinHRD)取得。
マスターアクションラーニングコーチ

東京女子大学文理学部心理学科卒業後、(株)毎日コミュニケーションズにて事業企画や人事調査等に携わる。数々の新規プロジェクトに従事後、渡米。米国の首都ワシントンDCに位置するジョージワシントン大学大学院マイケル・J・マーコード教授の指導の下、日本組織へのアクションラーニング(AL)導入についての調査や研究を重ねる。外資系金融機関の人事責任者を経て、(株)ラーニングデザインセンターを設立。2006年にNPO法人日本アクションラーニング協会を設立し、国内唯一となるALコーチ養成講座を開始。600名強(2019年1月現在)のALコーチを国内に輩出している。また、主に管理職研修、リーダーシップ開発研修として国内大手企業に導入を行い企業内人材育成を支援。アクションラーニングの理解促進、普及活動を展開中。

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